144話
何が起きたのか全くわからなかった。
突然入ってきた女性、そしてその後ろから部屋に入ってきた愛
にしてもこの女性めちゃくちゃ美人だな。
ここにいる誰もがこの状況を理解できずにいた...
「突然なんですか!!」
校長が女性と愛に向かって叫ぶ。
確かに松岡家以外からしたら愛が一緒にいなかったら校長と同じリアクションになっていただろう
ただ一人の男を除いて
ガタンっと音がなり、音のなるほうに目をやると天王寺の父親が慌てて立ち上がった時に倒れた椅子の音だった
「父さん?」
天王寺が自分の父親の慌て方に動揺していた。
それは俺たちも含めて同じ気持ちだった。
今までこの空間で一番偉そうにしていた男の顔色が変わったのだから
「どうしてあなたがここにいるんですか嶋野さん」
嶋野さん?
後ろのにいる愛をみると俺たちに向かって大きくうなずいた
もしかすると今俺たちの目の前にいるのは愛のお母さんなのかもしれない
母さんも父さんも全く知らなかったのか言葉を失っている
「天王寺、あんたも偉くなったもんね」
愛のお母さん?らしき人の声はとても透き通っていて電話の時の印象とはまた違った
俺の中のイメージがどうしても夏祭りの後の電話のときの印象が強くて、正直いい印象は持っていなかった。
「だからどうしてここにあなたがいるんですか?」
それにしても天王寺の父親のあの慌て方はなんなんだろう
「父さん、なんなのこの人」
「天王寺さん、何を慌てているんですか。部外者は早く退出しなさい」
天王寺と亀井が慌てている天王寺の父親に向かって声をかける
「黙っていろ。この人はそんな扱いをしていい人ではないんだ。もう一度聞きます。どうして嶋野さんがどうしてここにいるんですか?」
「どうして?それはあんたの息子がいじめた女の子は私の将来の義理の娘になるかもしれない子だからよ。それに.....初めて娘に頼られたから...」
最後の方はちょっと聞き取れなかったけど。
なんか思っていたイメージと違っていた
「義理の娘?何をいっているんですか?」
「ここまで言ってもわからないなんて頭悪くなったの?要するにあんたの息子がいじめた子の兄のみっちゃんは私の娘の彼氏で将来の婚約者ってことよ。理解した?」
どうしよう。
とうとうお母さんも公認の婚約者になってしまった
まず、この人は愛のお母さんで決定だな。性格がそっくりだった。
単純に愛に対する態度も嫌いとかではなく人付き合いが下手とかそうゆうやつなのかな...
「天王寺さん、さっきからわけわからないことを言っている人はなんですか?」
柳沢の母親も話に参加する
「私が病院の院長をしているのはここにいるみなさんもご存じだと思うんですが、ここにいる嶋野さんはWHO(世界保健機関)の上層部に所属している日本にも数人しかいない人なんです。正直私なんかよりも発言力を持っているし、もし嶋野さんが本気で動いたとしたら日本の医師会の上層部や下手したら政治家すら動かせる可能性があります。」
俺たちは全員言葉を失っていた。
それは愛も同じだったのか自分の母親をみながら口をパクパクしている。
きっと愛も自分の母親がどんな仕事をしていたのか知らなかった様子だ。
WHO(世界保健機関)って流石の俺でも知っている単語だ。
天王寺が県の大学の院長で、愛のお母さんが世界の組織に所属しているとなるとスケールの大きさが違いすぎるかもしれないが、どちらがすごさが上なのかは誰もが理解できるだろう
「私の説明をありがとう。そしてあんなは私の後輩だったわけだけど、こんな権力を振りまいている男になっているとは予想外だったけどね。自分の娘の口から天王寺って名前を聞いたときの私の驚きとショックは大きかったわよ」
「それは今はいいとして、どちらにしてもこの件に関しては嶋野さんが出てきたところで状況は変わりませんよ。第一息子も柳沢さんもいじめはやっていないといっているんですから、いくらあなたでもやっていないことをやったというのは許されないでしょ」
「確かにやっていないことをやったというつもりは全くないわ。真紀ちゃん、あなたの口からきかせてくれる?」
愛のお母さんは真紀に話を振った。
予想外だったのか真紀は驚きながらも愛のお母さんの方をみた
微笑みながら頷いた
その顔は愛にそっくりだなと思った
真紀を顔をあげたはっきりと言葉を紡ぐ
「天王寺くんの告白を断ってから柳沢さんたちから嫌がらせを受けました。そしてお兄ちゃんに聞いた話で天王寺くんもそれに加担していることを知りました」
「これが答えでしょ。被害者の真紀ちゃんがいじめを受けたといったのにそれを認めれないの?」
亀井が横から口を挟む
「あなたは今来たばかりだから知らないでしょうが、松岡は虚言癖か妄想癖があるんです。だからこれも本当かわからないんです」
「黙れクズ」
その声は今までで一番冷たいトーンだった
「何を....」
流石の迫力に亀井も勢いを失っている
「お前は後だ。それで天王寺、この状況でもお前も含めてそちらの陣営は認めないということでいいんだな」
「私は自分の息子がやっていないというならそれを信じるだけです」
「うちの娘がそんなことやるわけないですから」
天王寺の父親と柳沢の母親が負けずに言い返す
「お前たちもそれでいいんだな」
次は天王寺と柳沢に質問する
「僕たちは何もやっていません」
「ふん。さっきから偉そうに。証拠もないくせに何をいっているんですか」
「わかった。愛!!」
「はい」
今まで黙っていた愛が前にでてポケットから携帯を取り出す