139話
「みっちゃんいってらっしゃい」
松岡家が真紀の学校に向かおうと玄関をあけると、そこに愛が立っていた。
「ありがとう。いってくる」
「大丈夫だよ。どうにかなる」
なぜだかわかなかったが、愛のその言葉で本当にどうにかなるような気がした
学校につくとすぐに会議室に案内された
そこには先日俺と愛が手を出した天王寺と父親と主犯の女、柳沢と母親がいた。
反対側には中学の校長と教頭がいて真紀のクズ担任の亀井が座っていた
初めて亀井の顔をみたが眼鏡をかけて頭だけが良さそうなやつだった。
俺たちが椅子に座ろうとしたタイミングで
「すいません。遅くなりました」
俺の担任の泉剛志が入ってきた
少し走ってきたのか珍しく息切れしていた
「泉先生、今日は忙しいなかありがとうございます」
校長が担任に挨拶をする
「いえいえ、事情はどうあれうちの生徒が関わっているなら僕が足を運ぶのは当然かと思います」
そこにはいつものんびりしている担任ではなく、ちゃんとした大人の先生が立っていた
「挨拶はそれぐらいにして早速本題に入ろうか。私も暇じゃないからね」
「そうよ。うちの娘が頬を腫らしてきたんですよ。どうしてくれるんですか?」
子供がゴミなら親もゴミだなと思った。
真紀にしたことを把握しているのかも定かではないが、完全に向こうが被害者になっている。
天王寺は少し下を向き、柳沢がにやけているような気がした
そして校長が話し出す
「今回、松岡さんところの息子さんが天王寺くんと柳沢さんに手を出したということでこの場を設けたわけなんですが、松岡くんからは何か言いたいことはありますか?」
早速話は手を出した俺に振られた
「はい。確かに僕と彼女が二人に手を出したのは事実です。それに関してはもっと違う方法もあったんではないかと思っていますが、やったことに関しては全く後悔はありません」
「君、自分がいっていることがわかっているのか?うちの息子に手を出して反省すらしないと?」
天王寺の父親は俺に対して強気な態度で圧をかけてくる
「反省しているといえば、手を出したことよりももっとうまくできたんではないかということです」
「泉先生だったかな?君のところの生徒は頭が悪そうだね。どんな罰をあたえてくれるのかな?」
「もちろん退学でしょう。さっきこの子がいっていた彼女とやらも一緒に」
柳沢の母親も参加してくる
「まぁまぁ。そんな結論を急がなくても。確かにうちの生徒が手を出したのかもしれませんが、お宅の子供さんたちには全く非がないんでしょうか?」
「ほう。うちの息子が何かしたと?」
「なにをいっているのかしら。こんな可愛いうちの娘に非があるわけないでしょう」
「そうですよね。君たちは全くこれっぽっちも心当たりがないってことでいい?」
泉先生は反対側に二人の生徒に尋ねる
「僕は心当たりはありません...」
「私も何も知らない」
しらばっくれる2人。
その全く反省すら感じない態度に改めて怒りがこみ上げる
「亀井先生、うちの子供たちはこんな仕打ちをうけるようなことを何かしているのかな?」
少しニヤニヤした表情で亀井に話しかける
「いえいえ。天王寺さんと柳沢さんのお子さんは教室でも問題なく過ごしている優秀な生徒ですよ。逆に松岡さんの方が妄想癖というか虚言壁みたいなところがありそうですが」
亀井の言葉の矛先は教室に入って怯えている真紀に向いていた。
真紀は教室に入ってからずっと俺の洋服の裾をぎゅっとつかんでいる。
その指先から、この場にいることが相当負担になっていることが分かっていた
「だそうだよ。担任の亀井先生がこういっているということは、やはり松岡さんの息子さんが悪いってことで退学という落としどころでいいんじゃないでしょうか?」
やっぱりこいつらはダメな大人だ。
話を聞かない。自分たちが絶対的な正義だと思っている。
亀井も金をもらっているんじゃないかと思うぐらい天王寺、柳沢側にいる
「何を言っているんですかあなたたち?」
今まで無言を貫いていた父さんが口を開いた
「松岡さん何か?」
「いやぁ。さっきから聞いていれば面白いこと言っているなと思って聞いていました」
「面白い?」
天王寺の顔色に怒りが見える
「はい。お宅の子供さんたちうちの娘いじめてましたよね?しかもそれをたまたま通りかかったうちの息子の前でべらべら話して」
「うちの子供が娘さんをいじめ?何を言っているんだ?」
「何を言っているの?」
2人の親は状況を把握していないのがわかる
それから父さんは事の顛末を話した
「亀井先生、松岡さんがおっしゃっていることは本当かね?君のクラスからいじめがあるという報告はあがっていないが」
「校長先生、先ほども申した通り松岡さんは妄想癖と虚言癖があると思います。それで勝手に被害者面してご両親に話したんでしょ」
「...」
俺たちも泉先生も亀井の言葉に言葉を失っていた
真紀は俯いて何も言えずにいた
その表情をみたら身体は勝手に動いていた
「ふざけるな!!お前が見て見ぬふりをしたから真紀がこんなに傷ついたんだろ。教師なら生徒の支えになれよ」
「君は何をいっているのかな?教師なら生徒の支えになれ?なっているじゃないか天王寺くんと柳沢さんの」
「じゃぁ真紀はその生徒には含まれないのか?」
俺は今すぐ亀井の顔面を殴りたかった
「さっきも言ったじゃないか、妄想癖や虚言癖を持っている生徒と真っ当な生徒のどちらを擁護するかなんて頭の悪い君でもわかることじゃないか」
「亀井先生でしたか?先ほどから松岡の妹さんが妄想癖とか虚言癖と連呼していますが、その証拠はどこにあるんですか?どちらも常習的に行われていのならご両親が知っていてもおかしくはないと思うんですが、お二人とも心当たりがないような顔をしているんですが」
「うちの娘に虚言癖や妄想癖があるなんて一度も思ったことはないし、どちらかというと正直で現実的な子です」
「こういっているんですが、どうなんでしょうか?」
感情で話してしまったところに泉先生は冷静に亀井に問いかける
「それはご自宅でのことでしょう。学校での娘さんの印象は先ほど言った通りですよ。なぁ天王寺と柳沢はどう思う?」
「先生の言う通りだと思います」
「妄想癖と虚言癖だけじゃなくてもっとひどいぐらいです」
「ほら。うちの生徒たちがこういっているってことはご両親の認識が甘いってことじゃないでしょうか?」
こいつらには何をいってもだめかもしれないと思っていた
「もういいでしょ。結局はそちらに非があるということは明白。早く答えを出しましょう」