135話
どうしてあの二人はお店にいないのだろうか...
忘れ物を取りに帰り急いでお店に向かった俺はお店の中に入ると二人の姿はなかった
一瞬俺とラーメン食べに行くのが嫌だったののかなとか思ったかけど、あの二人そんなことをするタイプではないと思う。
ならまだ道に迷っているのかなと思いお店の周辺を探してみた。
確かにこのお店の場所は入り組んでいるところにあるから道には迷いやすい。
そにしてもだ。場所を携帯で共有しているから迷うのもおかしな話だと思い少し頭の中によぎったのは
「トラブルに巻き込まれた?」
愛ちゃんは可愛い。
正直俺が今まで担当してきたお客さんの中でもトップクラスで可愛いと思う。そんな女の子が歩いているとナンパされるなんて日常茶飯事になってもおかしくない。
瑞樹は正直よくわからん。自分を陰キャみたいに扱うが実際は陽キャの分類に入るタイプだろうから愛ちゃんが変なやつに絡まれたときに瑞樹がどんな反応をするのか予想がつかない。
まぁそんなことは置いといて二人を探そうと思ったところに
「あんたたち絶対にこの報いを受けてもらうからね。いこう天王寺くん」
女の子のテンプレみたいな大声が聞こえてきた
俺は興味本位でそっちの方に歩き出すと
「そうだね。天王寺家の子供にこんなことをして許されるとは思うなよ」
天王寺家?ってこの辺で有名な病院の院長の名字と一緒のような
そしてこれまたテンプレみたいなセリフを吐いていると思い
俺の興味は高まりまくっていた
「ねぇみっちゃん。やっぱりこいつら〇していいかな」
うん???
なんか聞き覚えのある声、そして「みっちゃん」って聞こえたような気がした
俺は先ほどまでの高まっていた興味が一気に冷え込んでいくのがわかった
そして声の主の元に走った
そこには顔を腫らした男女。
ちょっと後ろから彼女を止めようとしている彼氏
そして顔を腫らした男女に向かって今にも飛び掛かりそうになっている美人
.....
「お前ら何しているの?」
彼女をと止めようとしている彼氏がこっちをみて
「ナイスタイミング」
いはほんとうに
「えっどこが?」
俺が来たタイミングで顔を腫らした男女は逃げるように立ち去っていった
瑞樹は一生懸命愛ちゃんをなだめていた
「愛、ありがとう。でもこれ以上はもういいよ」
「だって!!あいつらのせいで...」
「わかっている。これで終わりにはならないと思うから」
瑞樹はなんて大人なんだろうと思った
陰キャでも陽キャでもなく、こいつは主人公なのかもしれないと思った
少し時間が経つと愛ちゃんも落ち着いた
「飯どうする?」
俺は一応尋ねてみた
「行きます」
「山田さんの奢りなんで」
そこはちゃんと覚えているところが少し笑えた
俺たちはラーメン屋にやっと座った
「それで何があったの?」
「実は...」
瑞樹は事の顛末を話してくれた
たまたま迷い込んだ路地でさっきの二人が通りかかって
通りかかる際に妹ちゃんのことを話しているのを聞いて
瑞樹が最初に男子に手を出したらしい。
それで主犯の女子が妹のことをさらに悪く言ったことで瑞樹が女子にも殴りかかろうとしたところで愛ちゃんが瑞樹を止めて愛ちゃんが殴ったという流れらしい。
人に手を出すという行為を正当化されるべきではない。
でも俺がもし瑞樹たちの立場だったらって考えたら俺は二人のことを褒めてあげたくなった。
世の中いじめられる側だけが傷ついて、いじめる側は傷を負わないことなんて本当はあってはならない。いじめられる側が傷つけられたなら罪を負う必要があってもいいが現実問題として義務教育の中学生はそこまで厳しい罰をあたえられることはない。
「まぁ瑞樹がその女子に手を出さなかったのはよかったのかもしれないな」
「確かにあのまま殴っていたら妹に迷惑かけていたかもしれないですね。ただ愛が代わりに4発ぐらい殴っていましたが...」
「愛ちゃん4発もいったの?」
「本当はもう何発かいってもよかったんですが」
あれ俺の思ったいた愛ちゃんのイメージがどんどん崩れていく
「そういえばさっきの男「天王寺」って言っていなかったか?」
「確かにそんな名前だったかもしれないです」
「多分天王寺はそこの病院の院長している人と同じ苗字なんだよな。もし本当に院長の息子とかだったらこの後めんどうくさいことになるかもな。まぁ息子って決まったわけではないけど」
「最初に殴っていた時に俺は天王寺家の子供だぞ...って言っていたような気がするようなしないような。あの時は俺も頭に血が上っていたから鮮明には覚えていなくて」
「うん。もしかするともしかするかもな」
「その時はその時にどうにかなるよ。ラーメン食べよ」
俺と瑞樹の不安を完全に無視して愛ちゃんはメニューに視線を落とす
「瑞樹...」
「なんですか...」
「お前の彼女本当にすごい女の子だな」
「俺もそう思います」
「ラーメン何食べる?」
「俺はとんこつで」
「俺も同じやつお願い」
「わかりました。頼んじゃいますね」
愛ちゃんは店員さんを呼んで俺たちの分のラーメンも注文してくれた
本当にしっかりしているし彼氏想いのいい子なんだよな
「瑞樹」
「なんですか」
「何かあったらいつでも連絡してこいよ」
「ありがとうございます」
本当に天王寺家の子供だった場合、今まで以上に権力とかがでてきそうで瑞樹の家族は不利になるかもしれない。
かといってただの美容師が病院の院長に勝っているところなんてない。
俺ができることはきっと見守ることなんだろう。
なら俺は全てがある程度片付いたらまたラーメンを奢ってやろう
そのあとも愛ちゃんのマイペースに翻弄されながらお店を後にしたのだった