134話
「うっ!!!!!」
俺は気づけば天王寺の顔を殴っていた。
人の顔面を殴ったのは人生で初だった。
そのぐらい今の自分は冷静ではなかった
天王寺は突然顔面を殴られた衝撃と目の前に立っている俺が誰なのかわからず困惑の顔を強めていた
「いきなり何するんだよ。そしてお前誰だよ」
少し状況を把握したのか、殴られた怒りで立ち上がって俺の胸倉をつかんだ
「お前らが今話していた松岡真紀の兄だよ」
「はっ...松岡さんの兄?」
「そうだよ。真紀の話を聞く限り主犯はそこのクズ女と思っていたけど、振られた腹いせに加担しているとは予想外だったよ」
「それは...あいつが俺のことを簡単に振るからだよ。だからああなっても仕方ないんだ。俺は天王寺家の子供なんだ...」
天王寺の言葉を最後まで聞くことはなかった。
俺はもう一発天王寺の顔面を殴った
「うっ...」
2発目は流石に効いたのかすぐに立てずにいた
俺は倒れている天王寺の胸倉を掴んだ
「お前たちの軽はずみな行動で真紀は当たり前の日常を当たり前に遅れないんだぞ。その重みがわかっているのか」
「俺だって悲しくて悔しかったんだ」
「だから傷つけていいのか?ふざけるな。傷つけられた痛みがわかるならどうして同じ痛みを与えようする」
「....」
天王寺は黙りこむ
「傷は治っても痛みを覚えた記憶は消えないんだ。それがお前らにわかっているのか?」
俺の言葉に完全に何も言い返せなくなった
その姿をみていると怒りも少し落ち着いた
しかし...
「何言っているのあんた?痛み?傷?そんなのあいつの自業自得じゃない。天王寺くんの気持ちを無下にした挙句、私に対しても生意気な態度をとってきたんだから当然でしょ」
当然?
こいつは何をいっているのだろう?
明らかに言っていることはこいつがおかしい。でもこいつは自分の考えの方が絶対に正しいみたいな言い方をしてくる。
この空気と真紀はずっと一人で戦ってきたことを考えると握っている拳の力が強まる
「お前何を言っているんだ?自分の不甲斐なさの腹いせに八つ当たりしたクソガキが」
その言葉に女の顔は真っ赤になった
「誰が不甲斐ないよ」
「お前だよ。どうせこの男に告る勇気もなかった臆病者が」
「やっぱりあいつの兄妹ね。私がこんな気持ちになったのはあいつとあの時話した時以来だわ」
「なら真紀の意見は正しかったってことだな」
「ふふふ。言いたいことはそれだけ?それであんたに何ができるの?ここで私を殴るの?あいつの兄は女に暴力を振るクズ野郎って私が学校に言いふらしてやるよ。そしてらあんたの妹はもう完全に学校にこれなくなるでしょうね。私があいつの居場所を完全に潰してあげる」
俺は怒りを通り越して頭は冷静になっていた
そして静かに女に近づいていった
「何よ!!!本当に私に手を出していいの?男が女に手を出すなんて許させるわけないでしょ」
「だから何だ?真紀が耐えて頑張ったんだ。なら兄の俺がなんのリスクも負わないなんてありえないだろう。男が女に手を出したらダメ?そんなのわかっているよ。じゃぁどうやったらお前みたいなクズは制裁を受けるんだ?」
俺は女の目の前に止まり拳を握った
「みっちゃん」
愛の聞こえるが俺はその言葉を無視する
「みっちゃん」
今度は愛が俺の腕を掴む
「愛離して」
「ダメだよ」
「どうして???」
俺は初めて愛に怒りの目を向けた
ただそこにいた愛は俺以上に怒りの目をしていた
「その子が言った通り、男が女に手を出すのはダメだと思うし。私はみっちゃんに女に手を出したという過去を背負ってほしくない」
「じゃぁどうすれば」
愛の言葉に下を向いた瞬間
「バチン」
すごい音が鳴り響いた
座り込んでいた天王寺も俺もその音の先に視線を送った
「えっ?」
女は何が起きたかわからずその場で呆然としていた
そしては愛は続けてもう一発女の頬を叩く
「痛い!!何するのよ」
「男が手を出しちゃだめなら私がすればいいだけのこと。黙って聞いていたら気持ち悪いことをぺらぺら話して吐き気がする。真紀ちゃんはあんたみたいなブスが傷つけていい子じゃない。あんな優しい子をあんたみたいなクズが傷つけていいわけがない」
「ブス?クズ?所詮彼女風情が調子に乗らないでよね」
パチン
そして愛はもう一発ビンタをする
俺はその光景を固唾の飲んで見守っていた
「だから痛いって言ってるでしょ。いい加減にしなさいよ」
女も負けじと愛に食って掛かる
それを愛はいとも簡単に躱して言葉を続ける
「真紀ちゃんはそれより痛い思いをしたの。誰にも相談できずに制服がずぶ濡れになっている状態で公園で一人でいる辛さがわかる?みんなに迷惑かけないように逃げずにあんたたちの悪意を正面から受けた怖さがわかる?あんたたちの「これぐらい大丈夫」がどれだけあの子を傷つけたのかわからないでしょう」
あの言葉からは怒りと悲しさが両方あるような気がした
「それにさっき所詮彼女風情っていったけど。真紀ちゃんは私の将来の義妹になる子よ。みっちゃんが真紀ちゃんのために怒るのと同じように姉が妹のために怒るのは至極普通のことよ」
そして最後にもう一発ビンタをした
計4発...
流石に女も戦意を失ったのか座り込んでしまった
それをもう一度立ち上がらせようと愛が手を伸ばそうとしたところで
俺が愛の手を止めた。
「もういいよ」
「でも...」
「これ以上俺たちがこの二人に何かしても真紀の状況がよくなるわけじゃない」
愛も俺の言葉に納得してくれて伸ばしていた手を下ろした
「あんたたち絶対にこの報いを受けてもらうからね。いこう天王寺くん」
「そうだね。天王寺家の子供にこんなことをして許されるとは思うなよ」
「ねぇみっちゃん。やっぱりこいつら〇していいかな」
そういって愛がまた食って掛かろうとした
俺は愛の姿をみて完全に冷静さを取り戻しており、流石にこれ以上はまず加茂なと思ってしまっていた。
でも愛の怒りは一行に収まる気配がなくて困惑していると
「お前らなにしているの?」
俺はその声を聞いたときに少し安心した
振り返ると、そこには走って俺たちを探し回っていたのか
髪の毛が乱れ息も少し切れている山田さんが立っていた
「ナイスタイミング!!」
「えっどこが?」
山田さんはこの状況に一番困惑していた