133話
山田さんがお店を閉めておすすめのラーメン屋まで3人で歩いていた
「2人はラーメンとか食べに行くの?」
「最近は言っていないですね。愛も基本的に俺の家でご飯とか食べているので」
「愛ちゃんは基本的に瑞樹の家でご飯を食べているの?」
「あっ...」
すごく自然に話してしまったが、愛が隣のアパートに住んでいてご飯は毎日食べに来ていて最近はお風呂も入っていくとうのは松岡家では当たり前だけど世の中では当たり前ではない
山田さんも何かを察してくれたのか
「今度ゆっくり聞かせてね」
「はい....」
これだけ聞いたら経緯を聞きたくなるなか、この場で深くは聞かないのところが大人の配慮なのかもしれない。
それから5分ぐらい歩いていると
「あっ!!!」
山田さんが急に何かを思い出したようなリアクションをとる
「どうしたんですか?」
「今日嫁の前髪を切る約束していたんだった。ハサミ店に忘れてきたから取ってくるわ」
そういって山田さんはすぐにラーメン屋の地図を俺の携帯に送ってくれた
「先に行ってて!!」
「わかりました」
山田さんは小走りでお店に戻っていった。
俺と愛は地図を見ながらラーメン屋を目指した。
「多分この辺だと思うんだけど」
「でもここら辺にラーメン屋は見当たらないね」
端的に言うと俺たちはラーメン屋を見つけることができずにいた
どこかの道で間違ったのかな。
この辺の道は少し入り組んでおりマップもみにくかった。
もしかすると隠れ家的なラーメン屋さんなのかもしれない
俺と愛がラーメン屋を探していると
前の方からカップル?みたいな二人が歩いてきた
よくよくみてみると俺が数年前まで通っていて今真紀が通っている中学と同じ制服だった。
その制服をみると頭の中ではまた公園でずぶ濡れになっている真紀の姿がよみがえって拳を強く握りしめる。
「でもあれはやりすぎじゃないの?」
「やりすぎなんて全然だよ。むしろ天王寺くんを傷つけたのだからもっと罰を受けてもいいと私は思っているよ」
「まぁ確かにあのくらい罰を受けてもいいのかもね」
「それに私が天王寺くんに仕返ししようと持ち掛けたときに漫画の知識っていって仕返しの内容を考えてくれたのは天王寺くんでしょ」
「そうそう。最近読んだ漫画で同じようなシチュエーションがあったから過激すぎないやつを選んだつもりだったけど」
「私からしたら生易しいぐらいだよ」
「まぁ松岡が俺の告白あんな無下にするとは思わなかったな」
「私は前々から松岡のことは気に入らなかったからちょうどよかったよ。最後にトイレで上からホースで水をかけたときに出てきたときの泣き顔は忘れないよね」
「柳沢さんそんなことまでしたの?」
「だってあいつ昼休みになると毎回トイレに行ってひきこもっていたから私の善意で外に出してあげたんだよ」
「ははは。流石柳沢さん!!最高かよ」
その2人との距離が近くなるころには頭の中が真っ白になっていた。
今いる場所は周りのビルの関係で音が響いてきて今の2人の会話が全部聞こえていた。
偶然なのか、神様が与えてくれた必然なのかはわからない。
今俺の目の前にいる2人は真紀をいじめていた当事者だ。
真紀の話を聞く限りだと同級生の女子が首謀者といっていたが、今の会話を聞く限り、振った男も共謀者だったようだ。
結局は2人の八つ当たりに真紀が巻き込まれただけなのだ。
俺は愛の手を強く握った。
愛は今にでも殴りかかろうとしていた。
愛の握り返してくる力がどれだけの怒りを覚えているのかが伝わる。
こんな理不尽な暴力に真紀は殴られたんだ
でもこんな状況になっても俺は空気を読もうとしてしまっている。
俺たちがここで殴ることで解決するならそれでいい。
ただ、俺たちの行動で真紀に影響がでるのはよくない
一瞬の時間の中で頭の中のフル回転させたが、足が動かない
「でも今週に入ってあいつ学校に来ていないんだよ。つまんないよね」
「柳沢さんがやりすぎたから不登校になったんじゃない?」
「それはあいつの自業自得だからいいんじゃないかな」
「それもそうか。確か松岡の父親って俺の父さんの病院と繋がっている的な話をしていたような気がするから父さんに話してみようかな」
「いいんじゃない。家族ともども不幸になればいいさ」
そして俺たちの目の前を過ぎ去ろうとしたときに
女子中学生が呟いた
「いっそあいつ〇ねばいいのに」
「ははは。確かに」
ブチッ
自分の中の何かがキレた音がした
「いたっ」
横で愛が声を出した
〇ねばいい?
誰のせいで真紀はあんなボロボロになった?
誰のせいで真紀はあんな負わなくていい傷を負った?
誰のせいで真紀は涙を流した
俺の頭の中ではたった一人の妹の泣いている姿でいっぱいになっていた
そして俺は男の方の腕を掴んだ
「待て」
「えっ?」
俺は次の瞬間その男の顔面を殴った