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クラスで一番人気の彼女が裏ではちょっとポンコツで可愛い  作者: Yuu
私が見ている空とあなたが見ている空
131/152

131話

お店に入ると早速セット面に案内してもらって椅子に座った


「どんな感じに切りたいとかイメージはある?」


美容室にいくと美容師さんに毎回聞かれるが正直イメージを伝えるのは難しいと思うのは俺だけだろうか。

まず携帯で画像を検索したりしてもアイロンで巻いてワックスつけている写真しかないし、ヘアカタログに掲載されている人たちはだいたいイケメンだから自分に似合うのかわからない。

みんな自分のなりたいイメージをどう伝えているんだろうと思う。


「特にないですね。短すぎず長すぎずって感じでいつも言っています。アイロンで巻いたりはするので短すぎたら難しいんですよね」


「短すぎず長すぎずね。まぁ瑞樹らしいかな」


なんか普通って言われている気がしたが、その通りだから仕方がない


「山田さんにお任せします」


「よしきた」


そういって山田さんがカットの準備をしているとお店の扉が開いた

山田さんは急に扉が開いたから慌てて振り返って営業モードになって「いらっしゃいませ」といった。

俺も鏡越しでみているとそこにはお客さんではなくて愛が立っていた。


「早くない?」


電話してからそんな時間は経っていないと思うけど、そこにはバッチリ私服に着替えている愛が立っていた


「みっちゃんの髪切られるところみたくてめちゃくちゃ急いできた」


「そんなに?」


「もちろん」


横で山田さんが「先に切らなくてよかった」と呟いたのがちょっと面白かった

それから山田さんはカットを始めた

鏡越しに愛が俺が切られているところをしっかりみているのが、昔母さんと一緒に髪切りにいったときのことを思い出した。


「それで瑞樹は何に悩んでいたんだ?」


山田さんは少し切り進むと質問してきた


「...」


俺はその質問に対して上手く返事ができなかった


「みっちゃん。話していいんじゃない?」


後ろから愛がフォローしてくれる。

確かに全然話していいのだが、急にこんな重い話をされても山田さんを困らせるのではないかと思って躊躇った


「まぁ話したくないなら無理しなくていいさ」


「山田さんになら話しいいんですが、内容が重いから困らせるかなと思って」


「馬鹿だな。子供が大人に変に気を遣うんじゃない。美容師はな話せる他人だと思っているんだ。美容師をしていると家庭環境だったり子育ての悩み、学校生活の悩み、恋愛の悩みとかたくさん聞くんだぞ。しかも俺はお客さんの中では悩み相談しやすい美容師として高評価を得ているんだ」


最期の高評価はちょっと盛っていない?と思ったが、俺は山田さんに真紀のことを話した

話し出すと止まらなくなり公園での出来事から真紀の今までの経緯まで全部話していた


「すいません。勢いで全部話してしまいました」


「全然いい。それにしても...」


山田さんは手を止めて少し考えこ


「それにしても?」


愛も不思議そうに山田さんのことをみている


「俺が今まで聞いてきた中でも稀なタイプのいじめかもな」


「稀なタイプですか?」


「妹さんに向けてあからさまに悪意をもってやっているところが稀だなと思う。本来これだけ主犯がはっきりしておけば、ここまで事が大きくならなくてもよかったんじゃないかなと思うが、同級生の悪意と担任の怠慢が合わさって状況を悪化させてしまった形かな」


山田さんの言葉に妙にしっくりきた。


「今回のことで妹は悪くないと思うんです。告白を断ることか受け入れるかは人それぞれで、その同級生の女の子の八つ当たりに巻き込まれた感じだと思うんです。だからどうしたら解決させれるのかがわからないんです。学校に言うことで状況が動くかもしれませんが、今の担任はゴミですし、事が大きくなることは妹としても望むところではないんです」


真紀は俺たち家族に迷惑をかけないためにここまで我慢したんだ。

だから俺たちが大事にしてしまったら真紀の頑張りを無駄にしてしまう可能性すらある


山田さんは俺の言葉を聞いてまた少し考え込む

そして話だす


「まず、解決することは難しいと思う」


山田さんの口から出た言葉は予想とは違っていた


「難しいですか...」


「別に諦めろといっているわけじゃないんだ。でも例えばネットで「いじめ 解決方法」って検索したとしても多分いい答えは出てこない。たくさんの評論家みたいな人たちが議論を繰り返しても最適解はでてきていないからいじめはなくならないんだ。それに俺はいじめは「空気の伝染」だと思っている」


「空気の伝染?」


正直何をいっているのかわからなかった


「いじめってどんな状況だと思う?」


「...」


考えたが一瞬で答えはでてこない


「ひとりなんだ」


「ひとり...」


その言葉に制服を濡らして公園のブランコに座っている真紀の姿が頭に浮かんだ


「俺も美容師をして10年以上たつし瑞樹よりは長く生きているからいじめというのを耳にしたり見かけたりする数は多いと思う。見聞きして思うのがみんないじめられている人は「ひとり(孤独)」なんだ。嫌がらせをされていても周りにと誰かがいてくれたりしたらまだましなんだ。でもいじめを受けているひとはひとりの確率が高い。これの原因が俺は空気の伝染だと思っている」


山田さんは言葉を続ける


「いじめは最初のきっかけがある。今回の妹さんの場合だったら告白を断った出来事がきっかけになっているね。でもこれでいじめが始まったとしても妹さんと同級生の女の子だけの問題になるわけだけど、クラスでいじめが起きれば他の生徒が考えることはきっと「自分はいじめられたくない」だと思う。もしここでいじめられている子の傍にいったり助けたりしたら、次は自分の番かもしれないという恐怖がいじめられている子をひとりにしていく。この恐怖の空気がクラス中に伝染していくことでいじめられている子の周りから誰もいなくなるのがいじめの行先だと俺は分析している」


山田さんが言っていることは的を得ていると思った。

確かにもしいじめられている子を助けたら次は自分が目を付けられるかもしれないと思ったら普通の人は動けない。それぐらい恐怖の空気の力は強い。


「それに、今の日本では中学生まで義務教育だからこそ基本的に停学や退学みたいな処罰がないからいじめられている人が転校していじめている人がそのまま学校に居座るみたいな例の方が多い。これもおかしいよな。俺の担当している中学生の子もいじめられて親の実家に引っ越したよ。確かに義務教育は子供の成長にとって大事なことだと思う。でもいじめられている人が守られないのなら義務教育なんて必要ないんじゃないかと思う」


「ってごめんな。急に熱く語りだしてしまって。でも妹さんみたいに理不尽な悪意で傷つくのは俺も許せないし、どうにか力になりたいとは思うけど」


山田さんは最期の語尾が弱くなった


「最初にも言ったが、いい解決方法がないいのも事実なんだよな」


「そうなんですよね」

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