130話
真紀のいじめが発覚してから3日が経過していた。
特に進展があったわけでもなくただただ時間だけが過ぎていった。
父さんの言った通り真紀は学校を休んでいる。
俺たちの前では元気なふりをしているが、ふと一人になったときには目が遠くに行っている気がする。
ただ、愛が毎日話し相手になってくれており真紀も気が紛れているのかもしれない
父さんと母さんはすぐに学校に言うのはやめた。
解決策がない状態で学校に任せるのは心配だという判断らしい。
特に真紀の担任の話を聞くと、学校に任せておいていいとは思えないだろう。
俺も自分なりにネットなどでいじめについて調べてみたがこれといった情報はない。
もしいじめの解決方法があるのならとっくに世の中からいじめはなくなっているのかもしれない
簡単に解決できないからこそ父さんと母さんは慎重に動くしかないのかもしれない。
俺も真紀の力になりたいとは思うが何もできない情けなさと無力さを痛感した3日間だった。
今日も愛は学校が終わるとすぐに先に帰ってくれた。
愛も真紀のことが心配なんだと思う。
「瑞樹?」
この3日間こんな感じで一人で考えながら歩いている時間が増えている気がする
考えたところで同じ考えをぐるぐるしているだけなんだけど
「瑞樹!!」
「えっ?」
ふと自分の名前が呼ばれたような気がして振り返った
「やっぱり瑞樹じゃん。何回か呼んだけど無視するから人違いかとおもったよ」
「山田さん...」
そこには俺と敬都が職場体験の時にお世話になった美容室B&Cの山田さんが立っていた
「何幽霊見たみたいな顔になっているの?」
「いや、突然出てきたので」
「出てきたって...いよいよ幽霊扱いじゃないか」
「冗談です。ちょっと考え事していたのでびっくりしただけです」
「知ってる。高校生とは思えないぐらい難しい顔で歩いているやついるなと思ったら瑞樹だったから」
高校生とは思えないぐらいの顔ってどんな顔?って思ったが
確かに難しい顔はしていたかもしれない。
「まぁ悩むことは高校生の特権だ!!存分に悩みたまえ」
相変わらずこの人のこのテンションはありがたい
今まで負のスパイラルに陥っていた考えを明るい道に戻してくれる
「それよりお前髪伸びているな!!切ってやろうか?」
そう言われて目の前のお店の窓に映る自分の顔をみると
3ヶ月以上髪を切っていない陰キャの男が立っていて
セットしていないから陰キャ感が溢れかえっていると思った
「確かに伸びていますね」
「じゃぁ切りにこいよ」
「それってただ単にお店が暇だから客寄せしています?」
「バレた?」
「バレバレです。まずこの時間にここにいるのでお店にお客さんがいないのはわかります」
「まぁな。でも一人美容室はずっと忙しいわけじゃないのもいいんだよ。ずっとお客さんいたら疲れるだろ。たまには息抜きも大事大事」
「そういって暇になっていていつかは...」
「おい!!縁起でもないこと言うな」
「そのときは俺が毎月通います」
「お前が月一で来てくれたぐらいじゃ潰れるお店は潰れるだろ」
「冗談です」
「お前の冗談は冗談に聞こえないから怖い」
「ははははは」
なんか久しぶりに笑ったような気がした
「それじぁお願いします」
「よしきた!!いこうか」
そういって俺と山田さんは美容室B&Cに足を運んだ
歩いている間に愛に連絡をする
【帰り道山田さんとばったり会って髪切ってくれるようになったから行ってくるね】
すぐに愛から返事が返ってくる
【みっちゃん髪切るの?楽しみ】
ワクワクしたスタンプが送られてくる
【真紀はどう?】
【大丈夫だよ。今は寝ているし真奈さんも帰ってくるみたいだから私も一旦家に帰ろうかなって思っていたところ】
【そっか。いつもありがとうね】
【このくらい全然だよ。みっちゃんの髪切り見に来ていい?】
「山田さん、彼女が美容室にみにきたいって言っているんですが大丈夫ですか?」
俺は愛のメッセージをみてすぐに山田さんに確認する
「あの時の可愛い彼女か!!相変わらずラブラブで何よりだ。もちろんいいぞ」
「ありがとうございます」
すぐに愛にメッセージを送る
【山田さんがきていいって!!】
【わかった。着替えたらダッシュで行くね】
【気を付けてね】
本当に全力で来そうだなと思ってしまった
「着替えたらダッシュでくるそうです」
「愛されているな。お前のどこがいいんだろうな」
「それは俺も思います」
「嘘嘘。多分俺が女でもお前は彼氏にしたいランキングで上位にいると思うぞ」
「山田さん,,,,」
「どうした?」
「本当に1ミリも嬉しくないです」
「よし、お前の髪の毛は坊主な」
「それは彼女から山田さんが〇されるかもしれませんよ」
「うん...やめておこう」
「そうしてください」
山田さんと話していると美容室B&Cの前まで来ていた
数か月ぶりの美容室は少し懐かしさを感じた
たった2日間だけの体験だったけど俺の人生においてかなり大きい体験だったと思う。
実際自分の将来の夢の一つとして美容師があるのはこの体験があったからだ。
まだ2年生だからどうなるのかわからないけど。
ちょっと余韻に浸りながらお店の中に足を運んだ。