129話
正直こんなことが起きてしまうんだと思って聞いていた。
同級生に告白されて断ったことでいじめを受ける?
しかも相手はその男を好きだった女子生徒。
こんなのただの八つ当たりだ。その八つ当たりで真紀がこんなに傷つくのが許されていいわけがない。
しかも担任の教師は何をしている?
確かにうちの担任も適当なところはあるけど、生徒のことをちゃんと考えている
「お前も大事にしたくはないだろう?俺も担当しているクラスにいじめがあるってなったらいろいろと大変だし、お前も家族に迷惑をかけたくはないだろう」
ふざけるなと叫んでやりたい。
大変なことは既に起きているんだ。
今すぐ担任の教師のところに行って直接文句をいってやりたい
「瑞樹、今の学校でのいじめはこんな感じなのかい?」
父さんの言葉は震えており怒りを感じる。
母さんは泣きながらその怒りの矛先をどこにむけていいのかわからない感じだ。
愛は...そのまま主犯を〇しに行きそう
「正直いろいろなパターンがあるけど今回のパターンは珍しいような気がする。まず担任の教師がクズすぎるのが過激度に拍車をかけたのかもしれない」
「そうだよね。僕もいじめの話は聞くけど実際に自分の娘が被害者になったときにどう動くべきかわからずにいる」
「そんなのその主犯と担任を学校に罰してもらうしかないでしょ」
母さんの声は怒りに満ちていた
「真奈ちゃんの言葉はわかっている。僕もそれが一番いいと思う。でも...」
「それ以外に何があるの?!」
「確かに学校に報告することでこのいじめに関してはなくなるかもしれないけど、学校が動くとなると確実に大事になる。騒ぎが大きくなることによって真紀が学校にいけなくなる可能性もあるんではないかと思っているんだ。前にテレビでみたときに100人に6人が不登校になっていると聞く。昔に比べて不登校に対する風当たりは柔らかくなっているけど、被害者の真紀が学校にいけなくなるのは納得がいかない」
父さんの言っていることは本当にその通りだと思った。
真紀は被害者だ。それなのに学校側が騒ぎを大きくすることで真紀が学校にいけなくなるのはよくない
「みっちゃん、柳沢って女の子潰せばよくない?」
「うん。愛の気持ちはすごく嬉しいけどちょっと冷静になろうか」
「今すぐ潰しに行きたいよ」
自分がちょっとだけ冷静でいれるのはよくにいる俺の彼女がこの中の誰よりも怒りが爆発しているからだ。
例えるなら火山が噴火前ではなく噴火している状態です
「じゃぁどうするの?」
「それを今から考えようと思う。ただタイムリミットはあると思う」
「タイムリミット?」
「これは僕の考えだけど真紀には明日から学校を休ませようと思う。流石に今の状態で学校に行かせるのはよくない」
「それは私も賛成」
「でも学校を休む期間が長引けば学校にいけなくなる可能性も高くなると思っている」
「確かに...」
「だから、長くて2週間以内にこの問題をどうにかしないと真紀が学校に戻るのは難しくなるかもしれない」
2週間...
これは人それぞれかもしれないが1週間休んで学校に来れなくなる人もいるかもしれない
一応母さんを安心させるための2週間かもしれないけど、実際は早いに越したことがない。
「瑞樹、愛ちゃん」
俺と愛が返事をする
すると父さんが頭を下げる
「今回の件、僕と真奈ちゃんだけでは解決するのは難しい。だから力を貸してほしい」
父さんに面と向かって頭を下げられたのははじめてだ。
こんなの断るわけがない
「父さん、真紀は俺のたった一人の妹だよ。その妹があんなボロボロになっているのを見て傍観者でいれるわけがない。だから大丈夫。俺たちも動くから」
「俊哉さん、正直私は松岡家のみなさんに返しきれないぐらいの恩があります。それに真紀ちゃんは私の妹みたいな存在ですし、将来の妹でもあります。私に任せてください。その主犯の柳沢は私が潰します」
「愛ちゃんほどほどにね」
「はい」
さらっと将来の妹=将来俺と結婚みたいなのことを親に告白していることに興奮して気づいていない愛は一旦置いといて。
愛が暴走しないようにとめるのも今回の俺の役割かもしれないと思った。
父さんが言ったように学校に報告することで何かが変わるかもしれない。
まず担任の教師は罰せられるのは確実だと思う。
でも真紀がここまで耐えたのは大事にして俺たちに負担をかけたくないと思ったから。
大事になることでいじめ自体は解決に向かったとしても真紀にかかるストレスは増えてしまうかもしれない。
それに....
父さんには「動く」とは言ったけど、実際俺が動くことによって真紀にマイナスに働いてしまうんではないかと思う。
自分にとって正しいと思って動いたことであっても他の人にとっては違うかもしれないことを中学生の時に思い知っている。
自分にとってのトラウマを思い出す。
あの時自分のせいでお祖母ちゃんとの最期を立ち会えなかった同級生の目を最後まで見ることはできなかった。
周りの人は「お前のせいじゃない」と言ってくれるけど、他の人のことを考えることができなかった自分のせいでしかないのはわかっている。
今回も同じだ。真紀のために何かしてやりたい。でも何かってなんだ。
俺は一人で考え込んでいた
「みっちゃん」
「...」
「みっちゃん!!」
「えっ?」
愛の言葉で自分が考え込んでいたことに気づく
「大丈夫?」
愛は心配そうに俺の顔を見ている
「大丈夫。自分に何ができるか考えていたところ」
「そっか。私も一緒に考えるから。最終的にはその女子を潰すから任せて」
「愛は本当に潰しそうだから俺が見張っておくね」
「みっちゃんに見張られるなら喜んで」
いつもの愛に戻っていて、その姿をみるだけで少しだけ気持ちが楽になった