127話
真紀が落ち着くのを待ち、俺たちは家に帰宅した。
家に帰るまでの道3人とも無言で俺は今の状況を頑張って整理しようとしていた
隣にいる愛は今まで見た中で一番怒りが顔に出ており、今すぐ原因を潰しに行きそうな気迫を感じる。
それは俺も同じ気落ちであり、真紀をこんな目に合わせているやつを今すぐ見つけ出してボコボコにしてやりたいと思っている。
考えているうちに家が見えてきた。
まず、この状況を母さんと父さんがみたらどうなるだろう。
愛が真紀と繋いでいる手の逆の手を握って頷いた
それをみて俺も頷き返した
「ただいま」
「おかえり。遅かったわね。真紀も一緒だったのね。あなた学校から電話...」
母さんは話の途中で言葉を失った。
真紀の今の状態をみたら誰だってそうなる。
薄暗くてはっきりしていなかったが、家の玄関に入り明るくなるとその状態は思っていた以上にひどかった。
髪の毛も制服もびしょ濡れになっており上履きは土で汚れていた
俺が最初に感じた予想は外れていないことがわかる。
真紀はいじめを受けているのが確定したような気がした
母さんは動揺を隠せずにその場に座り込んでしまった。
母さんのこんな表情をみるのは初めてで、俺でも動揺しそうになる。
真紀が握っている手の力が強くなっている気がした。
「おかえり」
「ただいま」
中々家の中に入ってこないのを心配して父さんもでてくる。
真紀と母さんの状況を少し見て父さんは俺の目をみた
「とりあえず家に入ってから」
「わかった」
父さんは今の状況を少し把握したのか冷静に対応してくれた
まず座り込んでいる母さんのに手を貸してリビングのソファーに腰を下ろした
俺はこのままというわけにはいかないと思い、急いで風呂の準備をして真紀に入ってもらった。
今の真紀を1人にするのは心配だと思っている
「私が一緒に入るよ」
愛がそう言ってくれて真紀と愛が一緒に風呂に入りに行った
俺がリビングに戻ると動揺を隠しきれない母さんと何かを考えている父さんがいた
「瑞樹、どのくらい状況を把握している?」
父さんは冷静に俺に話しかける。
誰もが取り乱してもおかしくない状況で父さんが冷静でいてくれているから俺も冷静でいれる
「正直わからないというのが答えかな。俺と愛が公園にいた真紀をたまたま見つけて話しかけたら今の状況になっていたから」
「そうか...」
「でも、わからないけど真紀がいじめを受けている可能性が高いのはわかる」
「僕もそう思う。あの状態は普通ではない」
「どうして私は...」
「母さん?」
「どうして私はこんな状態になるまで気づいてあげれなかったの?私は何をしていたの?母親失格」
「真奈ちゃん。それは今言ってもどうしようもないよ。真奈ちゃんが母親失格なら僕はそれ以上に父親失格だよ。父親として真紀のことを全然守ることができていない」
父さんの握っている拳がプルプルしているのがわかった。
冷静に見えるが本当は震えるぐらい怒りを感じていてそれを一生懸命押し殺しているのかもしれない。
「瑞樹、あの子は大丈夫かな?」
母さんは動揺しながら俺の尋ねる
その声は震えていた
「さっき父さんも言ったように、真紀の今日の状況は普通じゃないと思う。俺も今までいじめはみたこともきいたこともあるけど、髪の毛と制服が濡らされている状態なんて聞いたことがない」
「でも今ままで真紀がいじめられているなんて連絡は学校からなかったのよ」
確かに俺もそう思う。
あんな状態になっているのに学校側が全く気付いていないことなんてあり得るのか?
今はまだわからないことばかりで真紀に状況を聞かないことには全部が憶測の域を超えてこない
俺たち3人は無言になってそれぞれが何かを考えていた
「みっちゃん」
呼ばれて振り返ると愛と真紀が立っていた
「真奈ちゃん温かい飲み物入れれる?」
「わかった。真紀と愛ちゃんは何がいい?」
「私はホットミルクティ」
「ブラックコーヒーでお願いします」
「わかった」
母さんは飲み物を淹れに台所に入っていった
真紀は公園で泣いた後から何も言葉を発していなかった
愛に聞いたが、お風呂でもほとんど何も話さかったそうだ。
父さんが真紀の向かいに座ると頭を下げた
「えっ?」
真紀は急な父さんの行動に驚きの表情をした
「真紀がこんなになるまで気づいてやれなくてごめん」
すかさず真紀が返事をする
「お父さんもお母さんも何も悪くないの。私が上手にやれなかっただけだから」
母さんが飲み物を持ってテーブルに座る
「私たちは真紀が器用で何事も上手にこなすことができる子だって知っている。その部分に私たちも助けれれているから。でも今回は違うよ。」
「違うくないよ」
「辛いことは上手にやり過ごしたらダメなの。そのモヤモヤはなくならいから」
「...」
「真紀に何があってそうゆう状態になっているのかは私たちにはわからない。でも私たちには迷惑をかけていいの。子供の迷惑すら背負えない親だと思われているなら別だけど」
「そんなことはない...」
真紀の声はいつもよりも弱弱しい
もし俺が同じ状況だったとしてどうするだろうと考えると
きっと真紀と同じように両親には言わないんだと思う。
母さんの言っていることは正しいけど子供としては親に心配をかけたくないと思ってしまう部分もあるのかもしれない。
「真紀、僕たちはいつだって味方だから」
「うん。ありがとう」
それでも真紀は話そうとしない
「真紀ちゃん」
「愛ちゃん?」
「みんなの顔をみてみて」
「真紀が俺たち3人の顔を見る」
その顔をみて真紀の目から涙が零れる
一生懸命普通を保とうと頑張っている母さんと父さん。
俺はどんな顔をしているのかはわからない。
でも愛がみんなといっていたから俺も同じような顔をしているのだろう
「私もみんなと同じ気持ち。真紀ちゃんのことが一番大事だからこそ一緒に考えよう」
「愛ちゃん...」
「何があったのか話してくれる?」
真紀は一度深呼吸をしてから
少し目をつぶって考える
そしてすぐに目を開ける
「わかった」