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クラスで一番人気の彼女が裏ではちょっとポンコツで可愛い  作者: Yuu
私が見ている空とあなたが見ている空
123/152

123話

ライブは無事に成功したと思う。

桐生さんのご両親のライブ後の表情をみていれば大丈夫な気がしていた。


「やっぱり桐生さんの歌良かったね」


「そうだね。みんな泣いていたしね」


「みっちゃんも泣いていたもんね」


「愛もうるってきていたでしょ」


「ばれたか」


「わかるさ」


ライブの余韻に浸りながらいつもの帰り道を二人で歩く。

愛がこっちに住み始めてからはこの景色もこの光景も見慣れたものだった。

付き合った当初、こうやって家が隣になるなんて想像もしていなかったし、愛とこんな風に笑いあえるなんて今でも夢のように感じる。


「みっちゃん?」


そんなことを考えていると愛が俺の顔を横から覗き込んでくる。

その時に長い髪がさらさらとゆれていてドキッとしてしまう。


「なんでもないよ。なんかいろいろあるけど幸せだなと思って」


愛と出会ってから俺の毎日は目まぐるしく変わっている。

これは愛がどうとかの問題ではなくて、愛と付き合い始めてから人と関わる機会が増えたからだ。

元々が全く人と関わってきていなかったからか。改めて考えたら何もない毎日だったんだと思う。


「私もみっちゃんと一緒にいれて幸せだよ」


「ありがとう」


「こちらこそありがとう」


「手繋ごうか」


俺は愛に手を差し出す


「みっちゃんから手を繋いでくれるの珍しい」


そういって愛が俺の手をとる

人と関わることが増えたことによってなにもなかった毎日に色がついたような気がする。

なにもないことは楽だけど充実していたかと言われたらたぶん違うんだと思う。

だって今の日常を知ってしまったら前の日常は充実していたとは程遠いことだけはわかる。

それだけ今の日常に幸せを感じているんだと思う。

俺に出来ることは少ないかもしれない。

今でも愛の隣にいるのがふさわしいかと言われたらわからないけど

少しでも見劣りしない男になれたらとは思う。

愛に「居続ける」と約束した。

きっと愛は俺と居続けてくれると思う。でもそれは俺が何も努力をしなくていいというわけではない。

だから頑張ろう。


「今日はそのまま帰る?」


「うん。みんなもう帰ってきていると思うから愛もご飯食べていったら?」


「甘えさせてもらおうかな」


「真紀たちも喜ぶと思うよ」


「へへへ。松岡家大好き」


こうやっていい意味で遠慮が薄れてきているのは本当にいい傾向だと思う。

変に気をつかわれてしまうと、こっちも気を使ってしまう。

もちろんお互い気をつかう部分はあるけどいい塩梅をみつけるのも大事なことだと思っている

そんなことを考えていると家の近所の公園が近づいてきた。

住宅地の公園としては珍しく遊具が充実しており、小さい頃は真紀とよく遊びにきていた

真紀はよく転んで泣いていておんぶして帰っていたな。

今の真紀からは想像もつかないけど。


「ねぇみっちゃん?」


「なに?」


「あれって...」


愛が指さした先には見覚えのある顔がブランコに座っていた

空は暗くなり始めており、普段なら家にいる時間なのにどうしてと思った。


「真紀?」


「やっぱりそうだよね」


「一人で公園にいるって珍しいな」


何かあったのかな?思いながら近づいた

少し近づいたところで名前を呼んだ


「真紀!!」


「お兄ちゃん...」


小さくそう聞こえたような気がした


「こんな時間に何しているんだ」


「...」


返事はない。

なにかあったのかなと思いながら近づいた。

そして遠目でみえずらかった真紀がはっきりみえたときに

俺は言葉を失っていた。

日が沈むのがはやくなって肌寒くなっている時期に真紀の制服は濡れており靴は学校で履く上履きのままだった


「お兄ちゃん,,,」


「...」


俺は今自分がみている状況を整理できずにいた。

でも現実を受け入れることができない状態の頭の中でもこれだけははっきりしていた

「真紀がいじめられている」

この答えにたどり着くまでに時間はかからなかったと思う。

頭の中は全然整理できていなかったけど気づけば俺は真紀を抱きしめていた


「お兄ちゃん........」


「大丈夫だから。もう兄ちゃんがいるから」


真紀は俺の胸で大声で泣いた。

それを俺は頭をなでながら「大丈夫だから」と言い続けることしかできなかった

隣にいる愛も真紀の状況を理解しており、その表情は今までみたことがないほど怒りに満ちていて。

今すぐにでも真紀をこんな状態にしたやつらを殴りにいきそうな勢いだった

それは俺も同じ気持ちだった。


俺の胸にしがみつく真紀の体温とは裏腹に

濡れた制服と肌寒い空気が俺の頭の中を冷やしてくれた

真紀が数分泣いて少し落ち着いたところで


「帰ろう」


「うん,,,」


俺は真紀の手を握り帰宅した。



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