122話
天音ちゃんからの提案に私は驚きを隠すことができなかった。
【乙羽さん。私の歌の歌詞を書いてくれないかな?】
私が歌詞を書く?
昔から音楽の良さを理解することはできなかったけど、歌の歌詞を読むのは好きだった。
この歌詞に音が乗ることでどれだけ素敵な曲になっているのだろうと何度も考えた。
正直自分でも歌詞を書いたこともある。
でも書いた後恥ずかしくなって机の引き出しにしまったと思う。
【乙羽さんの言葉と想いを私が歌にして届けるよ。だから私の歌の歌詞を専属で書いてほしい。無理にとは言わないけど】
私の言葉が誰かに届く?
それは本当に素敵なことだった。
素敵だなと思うと同時に私なんかの歌詞を天音ちゃんが歌って悪い方向に行くんではないかと思った。
だって私は歌詞を本格的に書いた経験もない素人だから。
天音ちゃんの歌は今日のライブでも再確認できたけど、聴いてくれている人を幸せにできるものなんだと思う。
それを私が壊したらどうしようと不安になったけど、天音ちゃんの顔をみたらそんな不安は吹き飛んだ。
天音ちゃんの今の目はあの時みたいに暗闇に迷い込んだような目ではなくて、未来をみている暖かい目だった。私はその目をみると自然に指が動いていた
【やりたいです】
送信ボタンを押した私は顔をあげて天音ちゃんの顔をみる
返事を見た天音ちゃんも私をみる
その時の笑顔はここ数日で一番素敵な笑顔だった。
後にfreedomの歌詞担当の「羽」は密かに有名になることは誰も知らなかった