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114話

私はいつものように帰宅していた。

今歩いているところは前に天音ちゃんが路上ライブしていたところだなと考えていると、前の方に天音ちゃんが歩いているに気づいた。

私は嬉しくなって天音ちゃんに近づき肩をトントンとした。

こうゆうときに「おーい天音ちゃん」って呼ぶことができればどれだけ楽かなと思う。

そして天音ちゃんは突然のことに驚きながらも振り返った

私は振り返ったことに喜びかけた時に「あれ?」と思ってしまった。

天音ちゃんの表情は明らかに私が今までみてきたものとは違っていた。

「絶望」という言葉が似合うような悲しい表情だった。

私は人とコミュニケーションをとるときにどうしても表情をみてしまう。

だから他の人に比べても表情の変化には敏感になっているかもしれない。


【天音ちゃん何しているの?】


私は自分の動揺が天音ちゃんに伝わらないように急いで携帯を取り出して文字を打った


【ちょっと気分転換に散歩だよ】


そんな表情で散歩していたってことはなにかあったんだなと察した


【そっか。天音ちゃん何かあった?】


【どうしてそう思うの?】


多分天音ちゃんは何もなかったと押し切るのだろう


【なにか辛そうだから】


【大丈夫だよ】


大丈夫だよと文字を打った天音ちゃんの表情は全然大丈夫そうではなくて今にも崩れ落ちそうな表情だった。


【それじゃまたね】


天音ちゃんはそのまま立ち去ろうとする

これが他人だったらそのまま分かれていいのだろう。

でも私はもう天音ちゃんを友達だと思っている。

このまま帰すわけがない

急いで天音ちゃんの洋服を引っ張った。

天音ちゃんは驚きながらも振り返る


【そんな状態の天音ちゃんほっとくわけないでしょ】


私は少し怒っていた。

なんで頼ってくれないのかって


【いや本当に何もないんだよ】


それでも弱音を見せようとしないところに

天音ちゃんの弱点をみつけたような気がした


【はいはい。天音ちゃんは人に弱い部分を見せるのが苦手なのね】


そして私は天音ちゃんの手を握った


【少し座ろう】


私と天音ちゃんは少し歩いたところにある河川敷に腰を下ろした


【何があったの?】


私は座るとすぐにメッセージをおくった


【どう話せばいいのかな】


天音ちゃんは相変わらず伝え方に悩んでいる


【ゆっくりでいいから教えて】


【ちょっと待って。簡単に文章にするから】


【いつまでも待てるよ】


天音ちゃんは何度も打ち直しながら文章として何があったのか送ってくれた


【今日三者面談があったんだけど、先生から「私のなりたい将来」の話になって。私が考えていた進路は私が考えたものではなくて両親が考えたものだろうと。それで家に帰宅して両親とその話になって。私は音楽がやりたいと二人に伝えたら、お父さんが怒って、お母さんは泣き出してしまって。それでも私は音楽が続けたいといったけど、お父さんが私のギターを捨てに行ってしまって私は心が折れたような気持になって散歩していた感じです】


私はその文章を読んでからしばらく考えて


【天音ちゃん頑張ったね】


それが心からの本音だった。

ファミレスで話していた時から思っていたが天音ちゃんのやりたいことは自分自身のやりたいことには思えなかった。だから「本当にそれでいいの?」と言ってしまった。


【私は頑張っていないよ】


頑張っていないわけがない。

今まで親の言ってきたことをがむしゃらに頑張ってきた子が頑張っていないなんてありえない。

むしろ自分のやりたいことでもないことも頑張り続けた天音ちゃんは本当にすごい子なんだ。


【それでどうるすの?】


【諦めるよ】


その言葉を聞いて悲しくなってしまった。

なんでそこで諦めるのって。だって天音ちゃんは一歩踏み出したんだから立ち止まらくていいんだよ。思っていることはたくさんあるのに言葉にできない私は考えていることを全部伝えることはできない。

だから一文


【諦めるの?】


【私が音楽でご飯を食べていくなんて夢物語だったんだよ。両親すら説得することができなくて心が折れているようじぁ音楽を続けていくなんて無理なんだと思う】


じゃぁなんでそんな表情しているの?


【本当にそれでいいの?】


【うん】


【嘘だよ】


【何を根拠に】


【天音ちゃんの今の顔を見れば納得できていないのなんてわかるよ】


天音ちゃんの表情が少し変わったような気がした


【乙羽さんに私の気持ちはわからない】


【わからないよ。でも納得できていないんでしょ】


私も少しムキになってしまう


「じゃぁどうすればいいの?どれだけ私が続けたい、頑張りたいと思っても私はまだ子供なんだよ。ここまで私のことを育ててくれたのは誰?お母さんとお父さんなんだよ。だから2人が望んでいないことを私が望んではいけないんだよ。このことに関して私が出せる結論は「諦める」しかないんだよ。だからもういいんだよ。私はこれからも趣味で続けていけばいい。それで幸せなんだよ」


天音ちゃんは文字を打たずに叫んだ

全部は読み取れなかったけど半分ぐらいは読み取れた

全部を言い終わると口で叫んでいたことに気づいて携帯に視線を落とす


【ごめんなさい】


【大丈夫だよ。全部はわからなかったけどところどころは読み取れたから】


【本当にごめんなさい】


.......

静寂が流れる。

何を言えば正解なのか私にはわからない。

でも私ができることは私の思っていることを伝えるだけだと思った


【天音ちゃん。諦めるのは簡単だよ】


簡単なわけがないのはわかっている。

でも私にとっては諦めるは天音ちゃんの諦めるとは違う


「諦めるのは簡単じゃない!!諦めるしか道がないの...」


天音ちゃんは一言叫ぶと涙を流した。

違うんだよ!!諦めるしか道がないわけがない。

私は下を向いている天音ちゃんの顔を上に向ける

そしてバッグからスケッチブックを取り出して文字を大きく書く


【諦めるは】


一枚めくってまた文字を書く


【目指すことができる人しかできない】


そして次のページをめくる


【私は目指すことすらできない】


自分の口を指さす

そして次のページをめくる


【天音ちゃんには歌がある】


天音ちゃんの口を指さす

そして次のページをめくる


【人を幸せにできる歌があるなら目指せばいい】


全力で叫びたかった。

「大丈夫」って。

でも私には伝える力がない。

私はまた携帯に文字を打つ


【大丈夫。天音ちゃんの歌は人を笑顔にしたり幸せにする力があると私はこの目で見たから。天音ちゃんがご両親に認めてもらえなくて辛いのは今の天音ちゃんをみていればよくわかる。じゃぁどんな方法ないいのか道を探そうよ。私も手伝うから】


勢いもあったけど私にしては人生で一番大胆なことをしたかもしれない


【私なんかにできるのかな】


天音ちゃんは気づいていない。


【天音ちゃんは一人だったら無理かもしれないけど、私もいるし天音ちゃんにはお友達がいるでしょ】


天音ちゃんは多分頭の中で友達の顔を思い浮かべている


【今頭に浮かべた人たちは天音ちゃんの味方でしょ。だからみんなで考えようよ。どうすればいいのかを】


それでも不安そうにしている表情は晴れていなかった

あぁじれったい!!ポテンシャル明らかに高いのに自信がないのは天音ちゃんの悪いところ

でもそんなところが私は好き。

私ができることは背中を押してあげること


【ほら今みんなにメッセージ送ってみよう】


【今?】


【今しないと天音ちゃんは先送りにしそうでしょ】


少し考えて納得したのか


【今から送ります】



【突然のメッセージすいません。みんなに相談したいことがあって相談に乗ってもらえないでしょうか】


隣から文字を打つところをみているととてもとても堅い文章を打っていた。

でもそれが天音ちゃんなのかなと可愛いと感じた

【業務?(笑)】


【ダメかな?】


【天音ちゃんらしくていいと思う】


みんながどんな反応してくれるか楽しみにだなと考えると

自然に顔がにやけていた

すると本当にすぐに既読がついて返事が届いた


春乃さくら

【急にびっくりしたよ。文章がお堅い感じで間違いかと思ったら天音ちゃんだったのね。もちろん相談に乗るよ】


嶋野愛

【いつにする?】


松岡瑞樹

【俺はいつでもいいよ。明日とか?】


鏡朱里

【明日空いています】


苑田冬樹

【僕も大丈夫】


春乃さくら

【敬都はどうせ暇なので参加で】


松岡瑞樹

【敬都は暇だよ】


桐生天音

【一応中村くんの都合も...】


中村敬都

【空いてます...瑞樹今度覚えてろよ】


松岡瑞樹

【俺だけ?さくらさんは】


中村敬都

【さくらさんは怖いからいいの】


春乃さくら

【敬都明日覚えておきなさいよ。ピザにタバスコたんまりつけて食べさせてあげる】


中村敬都

【ほら怖いでしょ】


嶋野愛

【それで明日でいいの?】


天音ちゃんは驚いていたが、正直私も驚いていた。

天音ちゃんの友達いい人たちすぎるでしょ。

松岡くんと嶋野さんをみていい人たちだなとは思ったけど、他の人たちもすごくいい人

私も会ってみたいな。


【大丈夫だったでしょ?】


さっきより表情が明るくなった天音ちゃんにメッセージを送る


【うん】


【私も行っていい?】


【逆にいいの?】


【もちろん】


【じゃぁお願いします。乙羽さんのことはみんなに私から伝えておくね】


【ありがとう】


その時にちょうど日が射して天音ちゃんを照らした。

私は天音ちゃんの心のモヤが少しでも晴れればいいと思った。



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