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110話

「失礼しました」


15分ぐらいすると母さんと愛が教室からでてきた


「お疲れ。どうだった?」


「いつも以上に緊張した」


「あらそうなの?私としては楽しかったわよ」


「母さんは楽しかったというよりは楽しんでいたでしょ」


「確かに」


「バレた」


この人のオンとオフはすごい。

気さくに接するときは本当にゆるくなるけど聞かないといけないこと、やっておかないといけないことをするときはしっかりオンになる。

仕事をしているときの母さんをほとんど知らないが父さんいわくすごく優秀で会社の人たちにも慕われているらしい。その気持ちはわかる。

つい頼りたくなるような存在だ。


「まぁ二人の話もちゃんと聞けたし、私としてはすごく満足な三者面談だったかな。私はこのまま家に帰ってご飯の支度をしようと思うけど、愛ちゃん食べにくるでしょ?」


「はい。お邪魔します」


「何か食べたいものある?」


「真奈さんのご飯ならなんでも好きです」


「嬉しいけど悩むなぁ。じゃぁハンバーグにしようか」


「ハンバーグ!!??」


愛はハンバーグが大好きらしい。

昔頑張ったご褒美にお祖母ちゃんがハンバーグを作ってくれていたらしく、そこから好きな食べ物はハンバーグになっているらしい。



「息子の意見は?」


「ハンバーグに文句があるの?」


2人の視線が刺さる


「いえ何もありません」


「「よろしい」」


最近はこの展開が増えている。母さん、真紀、愛の女性陣で団結して俺の立場は圧倒的に弱くなっている。父さんがフォローしてくれてはいるが、松岡家+愛の女性陣の戦闘力が脅威である


「それじゃ気を付けて帰っておいでね」


「うん」


母さんがその場を立ち去ると後ろから声をかけられる


「松岡くん、嶋野さん」


振り返ると桐生さんと桐生さんのお母さんが立っていた


「そっか。俺たちの後が桐生さんだったね」


「そうゆうこと」


「天音ちゃんこの人たちは?」


桐生さんのお母さんが桐生さんに話しかける

第一印象としてはお堅い感じだ

先日桐生さんが「私の親は私が音楽をしていることは知らないし、親の頭の中での私は大学進学一択で将来は公務員なんだよ」と言っていたが確かにそんなことを言い出しそうだと思ってしまった。


「私の友人の嶋野さんと松岡くん」


「あらそう。天音ちゃんがお友達を紹介してくれるのは初めてね。天音ちゃんの母です」


「松岡瑞樹です」


「嶋野愛です」


自己紹介はしたものの、これからの会話は思いつかない

何か話さないとと考えていると


「桐生さんどうぞ」


担任が教室から顔を出して話しかけてきた

その時にちょっとこっちをみてニヤニヤしていた

多分タイミングを見計らっていたのだろう


「みっちゃんいこう」


「うん」




「あの子たちお付き合いしているの?」


「そうだね」


松岡くんと嶋野さんが立ち去るとお母さんが質問してきた


「天音ちゃんは彼氏とかいるの?」


「いないよ」


「そうよね。天音ちゃんは勉強第一の優等生だもんね。もし隠れてお付き合いしている人がいたらお父さんがなんていうかわからないゎ」


「大丈夫だよ」


そう、これが桐生家の両親から見えている桐生天音だ。

勉強第一で異性に興味がなくて真面目な優等生。

しかし実際は勉強よりも音楽が好きで、裏では覆面バンドのボーカルまでやっているのが桐生天音

【天音ちゃんはそれでいいの?】


乙羽さんに言われた言葉が頭の中でずっとぐるぐる回っている

【仕方がない】と自分の中で割り切っているが、本当にこれでいいのか私にはわからなかった


教室に入って面談が始まった


「先生、天音ちゃんは学校ではどのように過ごしているのでしょうか?」


「桐生さんはとてもまじめで成績も悪くないですし担任としては何か言うことはないかなという印象です」


「それはよかったです。流石私たちの自慢の天音ちゃん」


お母さんは先生の言葉にそう言われて当たり前のような態度でニコニコしている

娘としては他人の前で自分の自慢なんていうのは恥ずかしいからやめてほしい。私はもう17歳なんだから


「桐生は進路とかは考えているのか?」


私が答えようとすると


「天音ちゃんは私たちが選んだA大学で公務員になるのよね」


お母さんは私の方に期待いっぱいの視線を送ってくる


「はい」


私はそれに反発できるわけもなくただただ頷く


【天音ちゃんはそれでいいの?】


また乙羽さんの言葉が頭をよぎる


「そうですか。お母さんから他に聞いておきたいことはありますか?」


「天音ちゃんは学校でどのようなお友達と過ごしているんでしょうか?」


「桐生さんの周りには個性的で優秀な子たちが揃っていると思っています。私としては人間関係は大丈夫かなな思ってみています」


個性的で優秀な子....多分松岡くんたちのことだろう。

確かにみんな個性的で優秀である。

この先生意外によくみているなと内心驚いていた


「そうですか。天音ちゃんが変なお友達と仲良くなって道を外れないかだけが心配なので、これからもよろしくお願いします」


「他にはないでしょうか?」


「大丈夫です」


「桐生は大丈夫か?」


「はい」


「わかりました」


「ではこれで失礼しましょうか?」


面談が終わりお母さんが立ち上がろうとすると


「すいません、もう一つ聞いておきたいことがありました」


先生が急に思い出しかのように話し出す。

なんだろうと思っていると


「進路どうする?」


「えっ」


「はっ?」


私とお母さんが同じようなリアクションをする。

だってさっき進路の話はしたばかりで、また「進路どうする?」って会話の流れ的にもおかしい

これにはお母さんも頭の上に???を浮かべている


「先生何をおっしゃっているんでしょうか?先ほど天音ちゃんの進路についてはお話ししましたよ」


「そうですね。確かに進路については話しましたが、それはお母さんの考えている進路ですよね?それは本当に娘さんの進みたい道なんでしょうか?」


「先ほどから何をおっしゃっているんですか?」


「私は先ほど「桐生は進路とか考えているのか?」と聞きましたが答えたのはお母さんです」


珍しくお母さんもイライラし始める


「だから先ほど私たちが決めたA大学に進学して公務員になると」


「それが本当に娘さんが進みたい道なら私は全力で応援させてもらいます。しかし先ほどから娘さんの顔は納得しているようには見えないので」


「そんなわけないじゃない。ねぁ天音ちゃん!!」


お母さんは声を荒げる


「....」


「天音ちゃん?」


「桐生大丈夫だから。進路は今決めなくていい。ちゃんと自分の納得する答えをあと1年で見つければいいんだ」


「さっきから何を」


「私たち大人の役割は子供に選択肢を与えることだと私は考えています。確かに選択肢を絞ることで悩むことなくその道に進める子供もいます。しかし可能性を消しているとも言えます。もし他に子供にやりたいことややってみたいことがあるのならその選択肢も用意するのが親であり教師ではないでしょうか?今のお母さんが言われていることは娘さんの進路を確実に狭めていると私は思います。だからもう少し家族で考えてもらえませんか?」


私は先生の言葉に驚いて声がでなかった。

今まで親のレールの上しか歩いてこなかった私ができなかった反発を先生が代行してくれたんだ

先生は私が音楽をしていることを知っている。私がみんなと仲良くしている姿を知っている。そんな私がA大学を目指したいと心から思っていないことを先生は察しているのかもしれない

しかしお母さんは全く状況が呑み込めずにいた


「先生何を...」


「もう少しでいいので娘さんと話してください」


「先生ありがとうございます」


私は先生にお礼をいう


「天音ちゃん?」


「今日は帰ろう」


そういって私は先生にお辞儀をして教室を後にした

家に帰るまでの道私たちは一言も言葉を交わさなかった

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