108話
気づけば三者面談の日当日になっていた。
愛のお母さんの代わりはうちの母さんがくることは担任に伝えてある。
「まぁ嶋野がそれでいいならいいんじゃないか」
担任は何事もなく了承していた
このちょっと適当なところがこちら側からしたらやりやすい部分でもある。
賛否はわかれるとは思うが...
そして当日の三者面談は俺が先で愛がそのあとになった。
「ではよろしくお願いします」
俺たちの三者面談が始まった
「先生、愛ちゃんのことも含めていろいろとありがとうございました。愛ちゃんのお母さんの代わりとしてお礼を申し上げます」
母さんは、始まると同時に先生にお礼を言った。
こうゆうところは本当に見習わないといけないと思う。
父さんも母さんをみていると自分はやっぱり子供だなと実感させられる
「いえいえ。こちらこそ嶋野のことを松岡さんたちが支えてくれているから彼女は平穏な日常を送れているんだと思います。高校2年生は年齢も17歳ですが、身体ばかり大人になっています。しかし中身はまだまだ子供だと自分は思っています。だからあのようなことが起きたときに嶋野の傍に松岡さんたちがいてくれてよかったなと思っています」
「私たちはできることしかできません。本当に頑張っているのは愛ちゃんです。彼女は育ての親であるお祖母ちゃんが直接自分のことを覚えていない現実を目の当たりにしながらも最後は自分の足で立ち上がりました。そんな愛ちゃんだからこそ主人も私も愛ちゃんを支えたいと思うんです。それに....」
母さんが俺の方を見る
「なに?」
真剣な話の中急にこっちに話を振るのはやめてほしい
「未来の娘になるかもしれなからね」
「おい。急に何を言い出すんだ」
「ははは。まぁ松岡!!大事な人のために涙を流せるのはいいことだぞ」
「は、泣いていないですけど」
「なに瑞樹。先生の前で泣いちゃったの?」
「はい。あの時は...」
「おい担任。三者面談をしよう。俺の進路について話そうじゃないか」
「瑞樹、先生に対して言葉が悪いわよ」
「いいんだよ。生徒の言ってほしくないことを親に暴露するような担任にはこれぐらいで」
「ははは。冗談だよ。お母さんいいんですよ。自分は生徒から基本的に扱いが雑なので」
「それは先生のキャラでなんとなくわかりますが」
「会って数分でそう思われる俺ってどうなんだろう」
ちょっと尊敬しないといけないなと思ったけどやめた
やっぱりこの人は適当な人だ。
「それで松岡。進路はどう考えているんだ」
急に進路のことを話し出す
「まだ具体的に何をしたいというのは決まっていないんですが、就職するようなイメージもわかないのでもう少し考えようと思っています」
「お母さんはどう考えていますか?」
「私たちは瑞樹が進みたい道を応援しようと思っています。あまりにも突拍子もないこと言い出したらとめますが。まぁ瑞樹の性格上、そんな突拍子なことをやる勇気もないと思うので任せています」
なんかチキンって言われているような気がしたが
母さんがいっていることはその通りだと思うから何も言い返せない
「そうだな。高校2年生だからまだ具体的な進路を決める必要はないと思うぞ。ただ、もし松岡が目標を見つけた時に〇〇大学に進学しないとダメとなったときに成績が足りなかったら話にならないから勉強だけはしていたほうがいいかもな。例えば学校の先生になる場合は大学の教育学部に進んでおくほうがいいし、医者になるためには医学部に進学しないとけない。夢をみつけることは大事だがそのための手段が決まっている場合は、そこに辿り着けないとなると目標はただの夢になってしまう。専門学校だと成績がそこまでよくなくても入れたりするが大学は勉強は絶対になるからそこだけは意識しておけ」
「はい」
この先生は急に真面目なことを言い出したと思ったら、しっかり的を得たことをいってくる
「まぁ今も成績は悪くはないから、今よりももう少し成績をあげておけば選べる選択肢は増えると思うから勉強しておくことに越したことはないってぐらいかな」
「わかりました」
「お母さんからは何かないですか?」
「はい。先生が急に真面目なことを話し出してちょっとびっくりしました」
「一応教師としての仕事はしないと税金泥棒ってSNSに書かれたくないんで」
「先生面白い!!じゃぁ一つだけ。瑞樹は学校でどうですか?」
母さんは少し真面目なトーンで先生に質問した
「そうですね。よくも悪くも目立たないですね」
うん?地味って言われたのかな
「少しわかります」
「もう少し前に出る力はあるのに少し下がった場所から周りをみているところがありますね。個人的にはもう少し自分から前に出るような力をもっているような気はしています。その辺は春乃あたりを見習ってほしいですね。松岡の周りにいる生徒は能力があるのに表ではその能力は見せずに温存しているような感じなのでもう少し目立ってもいいのかなと」
母さんは先生のその言葉をきいて深く頷いた。
「ありがとうございます。先生になら安心して子供たちを任せれれます」
「それならよかったです」
先生の俺に対する評価が的確過ぎて正直驚いた。
それに先生の俺の能力に対する評価が少し高めなことも嬉しかった。
もっと前にでろか...確かに俺は2.3歩後ろから周りをみてしまって、自分が一番前にでることを得意とはしていない。
中学の時の部活での出来事が俺が前にでようとすることを拒んでいる。
でもここ最近を振り返ってももっと自分が前にでることで上手くことが進んだこともあるかもしれないと思うところがある。
こうやって面と向かって言われることで改めて考えさせられる
こうやって俺の三者面談は終わった
廊下にでると愛が待っていた
愛は少し緊張しているように見えた
「なんか緊張していない?」
「だっていつもは三者面談って私と先生だけの二者面談が多くてたまにお婆ちゃんがきてくれていたぐらいだったのに。今日は真奈さんがきてくれているからなんか緊張して」
「なんか意外だね。大丈夫だよ。俺が雰囲気温めているからすぐに終わるさ。緊張している愛が久しぶりでいじりたくなるけど」
「ぶーーーー。みっちゃんのいじわる」
「ははは。ほらいっておいで」
「うん」
そして愛は教室に入っていった