105話
今俺の目の前には学校で一番可愛いといわれている「嶋野愛」とクールで美人で嶋野愛に続くぐらいの勢いで人気上昇中の「桐生天音」が歩いている。
その後ろに見た目陰キャの男が歩いている画はまさに「ストーカー」かもしれない。
なんでそう感じるかって?それは周りからの視線が痛いからだ。
心の声で「なんであんなやつが後ろ歩いているんだ」って言っているのがわかる
愛と付き合い始めてこの視線にも慣れてはきたが、愛と桐生さんの二人となるといつも以上に視線を感じてしまう。
ただ、当の2人はまったく周りの視線を気にせずに普通に会話している
「どこの楽器屋さんにいきたいの?」
「すぐそこのだよ。付き合わせてごめん」
「いいよいいよ。私も楽器屋さん入ってみたかったから」
「それならよかった」
「うん」
すごく平常運転だ。
元々マイペースな二人だからこの周りからの視線なんて全く気にならないかもしれないが、普通の人だったら視線の方が気になる。これが常に視線を浴びている人たちの当たり前なのだろう
「松岡くんも付き合わせてごめん」
「大丈夫」
「みっちゃんどうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「そっか。なら手繋ごう」
「ここで?桐生さんもいるのに」
「ダメ?」
桐生さんのほうをチラッとみると
「何をいまさら遠慮しているんだい?嶋野さんが松岡くんのことを好きすぎるのはわかっていることだし、手を繋いだぐらいでは驚かないよ」
「そうですか・・・」
「ダメ?」
愛が少し上目遣いで言ってくる
ダメなわけがない
「いいよ」
「やったぁ」
愛が俺の手を繋ぐ
「君たちはそうしておくほうが私も落ち着くよ」
「ふふふ。桐生さんも繋ぐ?」
「恥ずかしくないかいそれ?」
うん。そうだよね。桐生さんの感性は間違っていないよ
愛が少しずれているんだと思う。
「ダメ?」
俺にさっきしたような上目遣いのおねだりをする
それは誰かに教わったのかな
「そんな可愛い顔されたら断れないじゃないか」
「やったぁ」
そしてもう片方の手で桐生さんの手を繋ぐ
左から桐生さん、愛、俺で左右の2人は愛と手を繋いでいる
多分おかしいんだろうけど、愛は嬉しそうだからいいとしよう。
さっきよりも感じている視線に鋭さが増してきていて胃が痛くなってきた
反対側を見ると桐生さんもすごく恥ずかしそうな顔をしていた。
あんな顔が真っ赤な桐生さん初めて見たかもしれない
このままだと俺と桐生さんのメンタルがもたないかもしれないと思っていると
「そこの楽器屋さんだよ」
桐生さんが顔を真っ赤にしながら指さした先に楽器屋さんがあった
すると自然に繋いでいた手は離れて何事もなく愛は楽器屋さんに入っていった
「桐生さんごめんね」
「うん。手を繋ぐって恥ずかしいんだね。初めて知ったよ」
「いや、高校生が3人で手を繋いで外を歩くことがそもそもないような」
「確かに」
「愛はちょっとずれているからね」
「そうみたいだね」
「2人とも入ってこないの?」
愛が入り口から顔を出していた
「今行くよ」
そういって楽器屋さんに入ると
昔からある老舗感が漂っている店内の雰囲気の中、ちょっと年配のおじさんがカウンターには座っていた
店内にはアコギ?もエレキギターもたくさん置いてあって、普段からギターを弾いているわけでもないから楽器屋さんに入ることもない。だからこの並んでいるギターをみるだけで楽しいと思ってしまう。愛も同じような感覚らしく、興味深そうにギターを見ている
「お嬢ちゃん弾いてみるかい?」
愛がギターをみているとカウンターに座っているおじさんが声をかけてきた
「いいんですか?」
「いいよ」
「どれを触ってみたい?」
「じゃぁこれで」
「お嬢ちゃんお目が高いね。それはギブソンっていう昔からあるギター業界でのハイブランドみたいメーカーで。そのお嬢ちゃんが触っているギターは50万ぐらいするやつだよ」
5.50万????と心の中で大音量で叫んでいると
「じゃぁせっかくなの」
「ほほほ。君はメンタルが強いね」
そうだよね。50万のギターって言われたら普通引いてしまうよね。
流石は嶋野愛。普通とは一味違う。
おじさんはギターを棚から卸、愛に持たせてみる
「思っていたより重い」
「そうでしょう。少し鳴らしてみて」
少し弦を指で弾いてみると
音が響く
愛も俺も予想よりも大きな音が出て驚いた
「そのギターいい音が出ますね」
音に驚いていると
後ろから桐生さんが話けかけてくる
「桐生さんこのギターどう?50万するらしいよ」
「50万????」
そうだよね。それが普通の反応なんだよ
なんか普段からさくらさんという愛の言動に慣れすぎている人とか鏡さんみたいに愛のすること全部肯定する人が近くにいるからこれが普通と思ってしまっているけど、今日桐生さんをみていて自分の感性は間違っていなかったんだなと再確認できた。
「かっこいいよね」
「確かにかっこいい」
「お嬢ちゃんも弾いてみるかい?」
「いいんですか?」
桐生さんの目が少し輝いたように見えた
そういって愛から50万のギターを受け取り構える
「何か弾いてほしい曲ある?」
「文化祭の時に歌っていたミセカイの「アオイハル」は」
あの歌いいよね。
俺も文化祭で桐生さんが歌っているの聴いてからミセカイの他の曲も聴くようになった
「いいね」
「じゃぁ弾きます」
そういって桐生さんが50万のギターで弾いたミセカイのアオイハルは文化祭の時のバンド演奏とは全く違っていて聞き惚れてしまうような感じだった。
桐生さんがアオイハルを軽く歌いながら一番を弾き終わると
「このギターすごくいいですね」
「私が弾いた音と全然違った」
「これは驚いた。お嬢ちゃん演奏がすごく上手だね。それに歌も上手い。何かやっているのかい?」
「たまにバンドで歌ったり路上ライブをしているぐらいです」
「ほうほう。それならいつか僕が主催するライブにもでてもらおうかな」
「主催?」
「楽器屋が主催してライブをするなんて珍しい話ではないよ。ここには音楽をしている子たちがたくさん集まるから、そういった子たちに演奏する場所を与えてあげるのも楽器屋の仕事だと思っている。それに隣のライブハウスの持ち主は私だからね」
「そうなんですか?」
確かにここに来る前に隣にライブハウスがあったけど。
「まぁそうゆうことだからいつか出てくれると嬉しいな」
「機会があれば」
そのあともおじさんと桐生さんはギターだったり音楽について少し話していた
俺と愛も一通り店内の楽器を見ていると、ふと窓から一人の女性がこちらをみているのに気が付いた
すごくこっちをみているような気がするけど気のせいかな。
なんでこっちみているのかなと女性をみていると、バッグからスケッチブックを取り出した。
【あそこで話しているのは桐生さんですか】
なんでスケッチブック?とは思ったけど、一応その女性に向かって頷いた
すると女性はニコッと微笑んだ
「みっちゃん何しているの?」
その瞬間後ろから突然愛から話しかけられた
愛も桐生さんもいつの間にか後ろにいるのやめてほしい。
しかも愛の顔が少し怖いような気がする
「いや、窓その女性がスケッチブックで、そこで話しているのは桐生さんって質問してきたから頷いたら微笑んだって感じ。俺もよくわからない」
「そっか。桐生さん!!!」
おじさんと話し込んでしまっていた桐生さんは急に愛に名前を呼ばれて少し驚きながら振り向いた
「どうした嶋野さん?」
「窓の外にいる女性桐生さんの知り合い?」
そういわれて桐生さんが窓の方をみる
「斎藤さん???」
どうやら桐生さんの知り合いみたいだ