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102話

「ありがとうございました。たまに路上で歌っているのでまた機会がありましたらお立ち寄りください」


川崎鷹也の歌を歌い終わり路上ライブを終わる。

ギターなどを片付けて帰ろうとして立ち上がると

先ほどスケッチブックに曲名を書いてくれた女性の方がまだ残っていた

普段は私から話しかけることは少ないが、せっかくスケッチブックに書いてまでリクエストしてくれた方だと思い話けてみた。


「今日はありがとうございました」


「。。。。。」


女性は笑顔で頷いてくれた


「今日のライブどうでしたか?」


「。。。。。。」


女性は首を少し傾げた

私はやっぱり会話をすることが下手で逆に困らせてしまったのだと思った

すると女性が自分の髪の毛を耳にかけて、耳の方を指さした。

最初私は何を伝えたいのかなと思ったが、その女性の耳にはイヤホンのようなものをつけていた。

女性はすぐに携帯を出して


【すいません。私は耳が聞こえなくて。先ほどは口が読めませんでした】


少しほっとした。

私の話が下手で返事をしてくれなかったのではなかった。

私は耳が聞こえない方とは初めてお会いした。

さっきは早口でわからなかったのかなと思い、先ほどよりも口をはっきり開けて話をしてみる


「こちらこそすいません。つい早口になってしまって」


今度は通じたらしく笑顔で頷いてくれた

女性はまた携帯を打ち出す。

話の間が少し開いてしまうが、元々会話のキャッチボールが得意ではない私のとってはこの間はまったく苦ではない。


【帰宅途中にあなたのライブをたくさんの人が聞いているのを見かけて立ち止まってました】


「ありがとうございます。私の歌はどうでしたか?」


【ごめんなさい。私はほとんど音が聞こえないので、あなたの歌は聞こえてはいないんですが、あなたの歌を聞いている人たちの顔を見れば素敵な歌だったのがわかります】


正直歌っているときは一生懸命で見てくれている人、一人一人の表情までは追うことができていない。

初めて面と向かって言ってもらえたのがとても嬉しかった


「初めてそんな風に言ってもらえました。すごく嬉しいです」


【本当のことを言っただけです。あなたのお名前は?】


普段は本名は言わないようにしている。しかし理由はわからないがこの方には本名を言ってもいいような気がした。私は自分の携帯を出して。


【私の名前は桐生天音です。他の人には本名は言っていないので内緒でお願いします】


【天音さん。素敵なお名前です。私の名前は斎藤乙羽といいます。天音さんの名前は秘密にしておきます」


鼻に指をあててニコッとしてくれた斎藤さんの顔はすごく素敵で可愛かった。

その笑顔にあてられたのか、普段の私なら絶対に言わないことを口にしていた


【斎藤さん連絡先を交換しませんか?】


斎藤さんは突然の提案に少し驚いていたがすぐに頷いてくれた


【もちろん】


そして私たちは連絡先を交換して、その日は一日連絡を取り合っていた。

私は面と向かって話すのは得意ではないが文章だと普段よりもうまく話せているような気がした


【天音ちゃんは何歳なの?】


【私は今年17歳です】


【え~~~。私と同じ年だ】


【そうなんですね。斎藤さんは大人びていたので大学生ぐらいだと思っていました】


【それを言うなら天音ちゃんの方が大人びているよ。私こそ大学生って思っていたからね】


【確かに私は高校2年生には見えないとよく言われます】


【でしょ。まぁ私もだけど】


普段はあまり人と連絡を取り合わない私だけど、斎藤さんとのラインは楽しかった


【私のことも乙羽って呼んで】


人の名前を呼ぶのは私にとってはかなりハードルが高い。

松岡くんも嶋野さんも特に名前呼びしないし、春乃さんは名前で呼んでと言っていたが。


【じゃぁ乙羽さんで】


【今日はいいでしょう】


それから少しラインをして今日は携帯を置いた。

連絡を取り合った感じでは、乙羽さんの性格は春乃さんぐらいの明るさのような気がした。

耳が聞こえないってどんな感じなんだろう。

そう思い、私はパソコンを開いて聴覚障害について調べた

3つの症状があることがネットで出てきた

・補聴器などを使用していも音声が判別できない・耳が聞こえない状態の人は「ろう者」

・聴力がある程度残っていて聞き取れる状態の人は「難聴者」

・生まれた時には聴者だったのに何らかの原因で聴力を失った人は「中途失聴者」

ネットにはいろいろな表現があったが、乙羽さんは補聴器を使っていて聞こえないといっていたので「ろう者」になるのかもしれない。

聞こえるのが当たり前で生きてきた私と聞こえない世界で生きている乙羽さんでは生きている世界が違うのだろう。

乙羽さんは私の歌を聴いている人の顔を見れば私の歌がよかったのがわかるといってくれたけど、私の歌は聞こえていないんだな。

なんかそう考えるとどうにかして届けれないかなと思った。


次にコミュニケーションの取り方を調べてみた

・手話

・指文字

・読話

・筆談

・身振り

などがあると書かれていた。

これも私が今まで触れてきたことがないものばかりだった。

唯一手話に関しては小学校の時にしたことがあるかもしれないが全く覚えていない。

多分乙羽さんが話すときにやっていたのは「読話」というやつだろう。

初めて知る世界だが、調べているうちに私は「乙羽さんの世界を知りたい」と思っていた。

それから寝るまでの間、私は手話や指文字や読話などについて調べていた。

次会った時に少しでも勉強していったら乙羽さん驚くかもしれないなと思っていた。



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