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101話

「天音ちゃん、進路は大学でいいのよね?」


「当たり前だろ。天音は大学に行って公務員になるんだから」


「今度学校で3者面談があるから確認しておきたくて」


「そんなの確認するまでもないだろう」


これが桐生家の通常運転だ。

私は両親が決めた選択肢を敷かれたレールの通りに歩んできた。

小さい時からの習い事もそうだ。自分の意志でやったものはない。

勝手に両親が申し込んだ場所に連れていかれていた。

何もわからない私がそれが当たり前だと思っていた。両親も私が頑張ると喜んでいたからそれでいいのだと自分の中で完結させていた。

しかし小学校、中学校と年齢が上がるにつれて自分が置かれている環境は当たり前ではないと思い知った。

放課後は「友達」と遊びに行ったり、自分の「夢」に向かって部活に取り組んだりと

私が知らないことを知ることになるが私がそれに気づいたときにはちょっと遅かったと思う。

友達を作ろうと思っても作り方がわからないし元々口下手なら方だからこちらから話しかけることもできない。

だからいつしか私はクールキャラの話しかけづらい女になっていた。

だから私は音楽に逃げた。


音楽をやっているときは親が敷いたレールから抜け出している気がした。

なぜなら音楽は唯一私が親に反発しているものだから。

親には

「天音の将来には関係ないからバンドなんて時間の無駄になることはしなくていい」


「天音ちゃんはあんな野蛮なことしないでいいのよ」

完全否定されている。

しかし弾けなかったところを弾けるようになったときの高揚感はたまらない。

それに今は一人だけで音楽をしているわけではない。

同級生の二人とバンドを組んだりもしているし、私の歌を聴いて泣いてくれた同級生もいる。

ただ音楽に逃げていたちょっと前の私と違って、今は音楽を向き合うことができているとは思う。


「将来の夢」


かといって音楽で生活していくほどの覚悟がないのは事実。

それの証拠として私はいまだに両親に音楽をしていることも話せていないし、freedomでも覆面をかぶって正体がわからないようにしている。

そんな覚悟のない自分が音楽で生活していくなんてできないと思う。

わかっている。私は親に敷かれたレールを歩んできたからこそ「自分」を持っていないんだと思う。

最近の冬くんをみていると本当に思い知る。

周りの目を気にせずに自分の好きとしっかり向き合っている姿は尊敬する。

親のせいにしているけど、それまで自分を変えてこなかった自分自身の責任である。

そんなのわかっている。

でもどうやって自信や覚悟は身につけていくのだろう。

誰か教えてくれないかな。。。。

最近はこんなことばかり考えてしまう。


「久しぶりに路上に出てみようかな」


今日は両親は仕事で夜遅くなるといっていた

ギターを背負って駅の近くまで歩く。

駅の近くではすでに数人の方が路上でライブをしている。

動画などであまりに人が集まって規制が入るのを見たことがあるが

あれは本当にすごい一部の人のライブで起こる現象で。

だいたいの路上ライブは数人から多くて数十人といった人たちが立ち止まって歌を聴いてくれる。

私は素顔を隠して活動しているから、今回も帽子と眼鏡を着用している。

松岡君と嶋野さんはこっちから自己紹介をするまで気づかなかったから多分気づかれることは少ないと思う。

まぁあの二人は他の人にあまり関心がないから参考にならないかもしれないけど。

ライブができそうなスペースをみつけるとそこに座りギターを準備する

路上で歌うときはロック調の曲よりもバラード調の曲を歌うようにしている。

あまりうるさくしたら申し訳ないので。

ここに来ながら何を歌おうかなと考えていて頭の中で考えたセトリで歌い始める


1曲目は「ミカヅキ」という曲にした。

酸欠少女さユりというアーティストの曲だ。

この人の路上ライブは2000人の人が集まったという化け物アーティストだ。

単純に私はこの人の曲が好きで練習した。

そしてミカヅキを歌う


歌い終わると目の前には数人の方が立ち止まってくれていた。

最初のころは誰も聴いてくれないんではないかという不安と

実際に聴いてくれた人に「下手」と思われたどうしようと考えならライブをしていた。

やっていくうちに自信もつき、今では人に立ち止まってもらうとテンションがあがる。


2曲目は「feel my soul」を選曲した。

最近アニメのエンディングでカバーされているのを聴いていたら

やっぱりいいと思って選曲した。


2曲目を歌い終わると数人が数十人になっていた。

ここで少し立ち止まってくれた人たちにお礼を言う。

話すことは今も得意ではないが、やはり私の歌を聴くために貴重な時間をつかってくれていると考えたらお礼の一言ぐらい言わないと失礼だなと思った。


「歌を聴いてくださりありがとうございます。まだまだ実力不足な部分はありますが一生懸命歌います。次で最後にしようと思うんですが何かリクエストがある人はいますか?」


これも動画でみた方がやっていたやつだ。

聴いてくださっている方に歌ったほしい曲を聴いて歌うと喜んでもらえる。

見渡すと手を挙げてくれている学生の方や携帯で曲名を調べている人もいる。

どの人を指名しようかなと右から左に視線を泳がせると一人の女性に目が留まった

その女性はスケッチブックに大きな字で

【川崎鷹也の君の為のキミノウタ】と書いていた。

私はその女性の文字が印象に残りこの曲を選択した。

女性の目をみて頷くと女性は私に微笑んでくれた

一度動画で音を確認して歌詞を携帯で検索してから歌い始める


君がこの世に生まれたこの奇跡は

僕が君と出会えたこの奇跡が

今も信じられれないこの奇跡が

君への想い溢れて仕方ないや




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