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玉砕


鈴香が「ごめんなさい、帰りたい」と言うので、しぶしぶ帰ることになった。


(マジ最悪! デートぶち壊されたあげく警察官ってバレた)


帰りの車の中は静けさが続いている。

どちらも一言も話さない。


「……ごめん。怖がらせて」

「いえ」

「その……警察官って言ってなくてごめん」

「いえ……」


(直紀くんが警察官……!? 警察官のイメージと違うから、何か……頭が追いつかない……)

(絶対次ねぇじゃん。終わった、これはマジで終わった。最悪しか言えねぇわ……)


「……あのさ、元カノとは今全然かかわってないから。やり取りもしてないし」


(違う。そういうことを言いたいんじゃなくて……)


「そうですか」


(敬語に戻ってるし。悪い方向にいってる……)


鈴香の家の近くで直紀は車を停めた。


「今日デートに誘ったのは、暇つぶしとかなんとなく遊びたかったとかじゃないから。俺……」


ガチャ


鈴香は助手席のドアを開けた。


「待って! 真剣に鈴香と仲良くなりたかったんだ……! 彼女になってほしくて……!」

「……今日はありがとうございました。では」


鈴香は車を降りて、ドアを閉めた。


「……クソ!」


直紀はハンドルをたたいた。



鈴香は家の中に入った。


「あら、もう帰ってきたの?」

「うん。友達急用ができちゃったみたいで」

「そっか」


鈴香は自分の部屋に入った。


「……グスッ、グスッ……」


鈴香はしゃがみ込んだ。


(終わった……こんな形で終わっちゃうなんて……。久しぶりの恋だったのに、サイアク……!)


鈴香は顔を両手で覆ったーー




数日後ーー


「こんにちは〜。黒田巡査長いますか?」

「黒田が何か……?」


直紀が奥から出てきた。


「黒田巡査長、この前のことだけど、釈放されるみたい」

「……そうっすか」


直紀は不貞腐れた表情でイスに座った。


「あれ? 機嫌悪い?」

「あのクソ女のおかげでデート中止になったんで。玉砕っすよ」

「え? 別れちゃったの!?」

「別れたも何もまだ付き合ってなかったし」


直紀は大きな溜め息をついた。


「あ〜それは、何と言っていいやら……」

「なんで、あの女ムショにぶち込んでくれなかったんすか……!」


直紀は机を下から蹴った。


「黒田くん……」

「初めての、本気の恋だったんすよ。なのに……」


直紀はこぶしをギリっと握り、机をたたく。

警察官は直紀の頭をぽんぽんと優しくたたいた。



「はぁ〜……」


鈴香は大きな溜め息をついた。


「大きな溜め息」

「あっ、ごめんなさい」

「何かあった?」

「実は……この前デートした人に冷たくしちゃって、絶対終わった……」


すると、見た目がギャルのスタッフが足早に歩み寄ってくる。


「白崎さん、彼氏できたら言ってっていったじゃん!」

「彼氏じゃないです! ちょっと気になってた人だったんですけど……」

「どんまい! 次いこ!」


鈴香はうつむく。


「ホントにその人とダメになったの?」

「え?」

「もう1回頑張ってみたら?」

「……」


鈴香は小さくうなずいた。


「何かあったら今度こそ言ってね!」

「なんで、あんたそんなに白崎さんの恋愛気になるの」

「そりゃあ気になるよ! あんまそういうの聞いたことないから」

「ほっときなさいよ」


鈴香は小さく溜め息をついた。

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