準備
次の日ー
「おっ、連絡先交換したのか!」
直紀は少し恥ずかしそうにうなずいた。
「で? デートは?」
「え……?」
「え?じゃねぇよ。デ、ー、ト!」
直紀は目を逸らした。
「してねぇのかよ! おいおい、肉食直紀クンはどこいったんだよ〜」
友達は直紀の肩をたたく。
「デート、今予約しろ!」
「は!? 何言ってんだよ!」
「スマホ貸せ!」
友達は直紀のジーパンのポケットからスマホを出した。
「わかったよ! すればいいんだろ」
直紀はスマホを取り返す。
『あのさ……今度時間ある?』
『俺とデートしませんか? 嫌だったら全然いいんだけど』
「送った。これでいいか?」
「当たって砕けろ〜」
「砕けちゃダメだろ。言っておくけど、俺ガチ恋なんだからな」
友達はまばたきした。
「一途だなぁ、直紀クン。かっこいい〜」
「うっせー。ちゃかすな」
「直紀クン大好き」
「いい加減にしろって」
直紀は小さな溜め息をついた。
「あっ、そうそう。ドライブ中変な音楽流すなよ。すげぇロックなヤツとか、洋楽ロックとか」
直紀は驚いた顔で友達を見た。
「ヤベ! そうだった!」
「砕けたくなきゃ、ベンキョーしろよ?」
「おう」
友達はうなずいた。
午後になりーー
『女性に人気のバンドランキング』
直紀はスマホを見ながら、CD屋を出た。
(これでドライブ中は大丈夫だな)
「あれ? 直紀じゃーん」
金髪でロングの女が近づいてきた。
友達も一緒だ。
「こんなとこで何してんの?」
「アルバム買ったんだよ」
「誰の?」
女は袋の中をのぞく。
「lucknumberじゃーん! わかってんね〜」
「まぁな」
「直紀、デート成功させたいんだってよ」
友達はにやついた。
女は目を丸くする。
「何? 新しい彼女できたの?」
「まだ彼女じゃねぇけどな」
「あたしを振って新しい女〜? どんな子なの?」
「地味子だって」
友達は女に耳打ちした。
「えー! ありえなぁい! どうしたの!?」
「いいだろ、別に」
「あたしにしなよ〜。いっぱいイチャイチャさせてあげるから」
女は直紀の右手に絡みつく。
「触んなよ」
直紀は女を引き剥がす。
「そういうのやめたんだよ。お前とは絶対より戻さねぇ」
「つまんないじゃん。イチャイチャしないんだったら付き合う意味なくない?」
「うるせぇ! ほっとけよ。もうお前みたいな下品な女とは付き合わねぇ」
直紀は女をにらみつけ去っていく。
「……何よ。クソつまんない男になっちゃって」
「まぁ、いいんじゃねぇの? あいつがそれでいいなら」
「相手どんな女なの? 調べてよ」
「は……? 怖ぇこと言うなよ」
女は友達の胸ぐらをつかんだ。
「いいから調べろ」
「……やってはみるよ」
女は大きな溜め息をついた。
『返事遅くなってごめんなさい!
わたしで良ければ……』
驚きでスマホを落としそうになった。
『都合いいとき言って』
『はい。都合のいい日送りますね』
直紀はガッツポーズした。
(ドライブ中の音楽はあれできっと大丈夫。あとはどこ行くかだな)
あの子がどこに行くのが好きなのか、少し考えたがわからない。
動物園、水族館、遊園地、ショッピングモール……
(賭けに出るしかない……!)
直紀は小さくうなずいた。