交渉
1週間後ーー
「黒田くーん、調子どう……」
ひとりの警察官が交番に入ると、固まった。
「あ?」
「あー、機嫌悪そうだね……。また何かあったの……?」
「彼女がしばらく会わないって」
直紀の先輩は警察官に耳打ちした。
「何があった……?」
「たぶん、謹慎くらってるっす。俺と付き合ってるのバレて」
「あ〜そういうこと」
直紀は貧乏ゆすりしている。
「次行ったとき、ぜってー言ってやる……!謹慎解けって」
「頼むから警察沙汰はやめてくれよ」
「警察官に捕まる警察官がいるかよ」
直紀は大きな溜め息をついた。
(鈴香、待ってろよ)
直紀は深く息を吐いた。
数日後ーー
直紀は診察室に入った。
「ご案内しますねー」
視線だけ動かすと、院長を見つけた。
直紀は案内された席に座る。
「院長います?話があるんですけど」
「えっ、あっ、はい……」
少しして院長が歩み寄ってきた。
「こんにちはー。どうしました?」
「白崎さん、今日もいないんですね」
「えぇ、しばらく休みたいと申しておりまして」
直紀は院長をにらみつけた。
「謹慎といてくれます?」
「謹慎……?あーそれはちょっと……」
「じゃねーと、ここ通うのやめる」
院長は目を丸くした。
少し考えて、小さく溜め息をついた。
「患者ひとりでも惜しいんじゃねーの?」
「そうですね……わかりました。白崎さんの謹慎をときましょう」
「俺別れねーから」
「わかりました。目をつむりましょう」
直紀はほっと息を吐く。
「どーも」
「これからも当院をよろしくお願いします」
院長は去っていく。
少しして
「こんにちはー」
医師が歩み寄ってくる。
「院長に喧嘩売ってましたね」
医師は小声で言った。
「鈴香を守るためっす」
「そんなに好きなんですか?」
「まぁ、そうっすね」
直紀は少し顔を赤くした。
「それ聞いたら白崎さん、喜ぶと思いますよ」
「早く会いてーなぁ」
医師は目を細めた。
「え?」
鈴香は目を見開いた。
『謹慎ときます。
明日から出勤してください。』
『すみません
まだ別れてないです』
少しして院長からメッセージが来た。
『別れなくていいです。』
(どういうこと……?まぁ出勤していいなら出勤しようかな)
『わかりました』
鈴香は首を傾げた。
次の日ーー
院長が出勤してくる。
「あの、院長……」
「おはようございます。今日からまたお願いします」
「あっ、はい……」
鈴香は首を傾げた。
「おはよう。黒田さんが交渉してくれたんだよ」
「あっ、おはようございます!えっ……?」
「お礼言っときなよ?彼氏に」
医師は笑みを浮かべると、去っていく。
(直紀くんが……?何て言ったんだろう……)
鈴香は苦笑いした。




