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暗雲


1週間後ーー


鈴香はふとカルテを見た。


黒田直紀


(わわ、直紀くん! 平常心、平常心!)


鈴香は深呼吸した。


「案内しといてくださーい!」


(ど、どうしよう……!)


他のスタッフがカルテを持って、待合室のドアを開けた。


ドッドッドッ


心臓が大きな音を立てている。

入ってきた直紀と目が合った。


「鈴……」

「こんにちはー」


彼の言葉を遮るように挨拶した。

直紀は通り過ぎていく。


(今名前呼ぼうとした……?)


ふと院長と目が合う。

不自然に目をそらしてしまった。


(わたし、隠し通せるのかな……?)


鈴香は直紀を見て、うつむいた。



「白崎さーん。終了してー」


鈴香は深く息を吐いて、直紀に近づいた。


「お疲れ様でしたー。本日はこれで終了です」

「白崎さん?」

「お荷物お忘れのないようにお願いします」


直紀は立ち上がった。


「白崎さん、大丈夫? 顔色悪い気がするけど」

「大丈夫です」

「ホントに? ムリしちゃダメだよ」

「あまり仕事場で絡まないで」


鈴香は小声で言った。


「でも……」

「早く帰って」

「……ホントにムリすんなよ」


直紀は彼女の頭をなでると、診察室を出た。


(ヤバい……本当に隠し通せる自信がない……)


鈴香は目を潤ませた。

階段に繋がるアコーディオンカーテンを開け、中に入ってカーテンを閉める。

階段に座って、お茶を飲んだ。


「白崎さん」


院長が声をかけてきた。


「……ごめん、何でもない」

「はい」


(怪しまれたかも。ヤバい)


鈴香は目を泳がせた。




数日後ーー


直紀は診察室に入ると、キョロキョロした。

鈴香は見当たらない。


「白崎さんは今日は休みですよ」


ビクッ


声がした方を見ると、院長が立っていた。

言葉に違和感があり、鋭い目で院長を見た。


「探してたみたいだから」

「探してませんよ」

「そうですか」


『患者さんと付き合っちゃダメだから』

『仕事場であまり絡まないで』


(胸騒ぎがする……。何もないといいけど……)


直紀は大きく息を吐いた。




『白崎さん、黒田直紀さんと付き合ってるの?』


院長から突然メッセージが来た。


『えっ』

『患者さんと親密な関係になってはいけないって知ってるよね?』

『はい……』


鈴香は目を泳がせた。

急に呼吸がしにくくなる。


『別れるまで自宅謹慎するか辞めるかどっちか選んでくれる?』


(どうしよう……バレた。どっちかって、そんな……


『……別れます。時間をください』

『はい』


(直紀くん……ごめん)


『しばらく会わない』


直紀にメッセージを送った。

少しして既読がついた。


『なんで?』

『何かあった?』


字がにじんでいく。


『ごめんなさい……』


息が少し苦しい。


『鈴香?』

『何があったの?』


(ごめん……)


鈴香は返事をせずにメッセージアプリを閉じた。


(今まで仕事頑張りすぎてたし、しばらく休もうかな)


鈴香はベッドで横になり、枕に顔を埋めたーー

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