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大感謝です! たくさん読んでくださり本当にありがとうございます!
アリアが姿を消して早一ヶ月が過ぎようとしていた。
聖国の聖女宮で、足の踏み場もないほどに書類とお菓子と宝石が積み上げられ、イリアは一番奥の机で身動きが取れなくなっていた。
さながら牢獄だ。
扉の外では、積み重なった書類でほぼ見えなくなっている神官たちの頭が揺れ動いて叫ぶ。
「聖女様! 祈りだけでも捧げてください!」
「お勤めはされないのですか?」
簡単なはずと高を括っていたイリアは、地味な書類決裁ひとつできず、苛立ちに手近なお菓子をやけ食いする。
「なんなのよ、これぇ……! 書類なんて、サインすればすむだけでしょお? どうしてこんなにあるのよー!」
悲鳴ともとれる金切声が宮全体に響く。
それが引き金となったか、外から「もういい、どけ!」と何やらざわつき始めた。
次の瞬間には、イリアの部屋は炎に包まれた。
「きゃぁああああ! か、火事!」
書類もお菓子も一瞬で灰となった。
イリアにも当然炎が襲い掛かるが、聖族の加護なのか光が彼女を護った。
「ふん、腐っても聖女か」
と、無作法な言葉が降ってくる。
キッと睨み上げるイリアの先に、王太子が立っていた。
「あ……王太子殿下!」
叫ぶなり、イリアは足元に縋りつく。
「怖かったですわ~! 炎がいきなり襲ってきて――」
「当然だ。俺がやったのだから」
「……え?」
青ざめる彼女を尻目に、王太子は懐から書状を取り出し、億劫そうに内容を確認する。
「聖女イリア。汝、魔族国家ヴィクティスが王妃殿下暗殺の罪により、千年の投獄の刑に処す」
言い方もぶっきらぼうだ。
イリアは、何が何やら、いつ暗殺など企んだか、そも、これは自分の事なのか理解がまったくできずにいた。
「な、何……? 私が? せ、千年?」
王太子も、少々理解をしかねたようすではあるが、
「まあ、普通人間は千年も生きられないな。だが、ヴィクティス国王陛下が、貴様に特別な牢獄を用意したと仰っていた。明日には移送開始だ」
「ちょっと、お、お待ちください! 私、王妃殿下の暗殺なんて身に覚えがありませんわ!」
「あるだろ。ヴィクティス国王妃殿下は、貴様の姉、アリア・クラウディオ公爵令嬢だからな」
「なっ……!?」
姉の名を聞いて、呆然とする。
——姉様が王妃殿下? しかも魔族の?
「貴様、実の姉を追放するように追い立てただけじゃなく、神官や国民を扇動して殺害を仕向けたんだってな」
——魔族、姉様が魔族……?
「おい、聞いているか? ちなみに、貴様の投獄については、ヴィクティス国王陛下の独断だ。王妃殿下には一切知らされていない」
王太子の言葉は一切聞こえていないようだ。イリアは、ぶつぶつと空に呟いた後、いきなり馬鹿笑いをした。
「あっははははははああはは! やっぱりですわ! 姉様は悪魔なのよ! 聖族の敵なのよ! 殺せなかったのねあの子たち。当然だわ、悪魔の王の花嫁だものー!」
「実の姉を魔族呼ばわりか……気でも触れたか。おい! こいつを拘束しろ!」
王太子の指示により、聖女イリアは罪人として牢獄へ送られた。
◆ ◆ ◆
「あの、王様……王様は普段、角をお隠しでありますよね?」
城の執務室。
王妃となったアリアは、リオディール国王の執務を傍で手伝いつつ、そっと訊ねた。
「そうだ」
「もしかして、尻尾もですか?」
「! そこまでばれていたのか?」
「陛下、私はあなた様がどんなお姿でもお慕いしております。どうか、私と二人の時は、心落ち着ける姿でいてくださいませね」
リオディールは、その言葉に、ふんわりした笑顔に心を鷲掴みにされた。
すっかり心を許し、本来の魔族の姿へと戻る。
ふさふさの尻尾に、四本の角。
大きな獣となった姿は、やはり濡羽色の艶やかな毛並みで、柔らかくアリアを包み込んだ。
アリアの表情がうっとりと毛並みにうずもれる。
「ふわっふわですね」
「君が望むなら、ずっとこのままでいようか?」
すると、アリアは慌てて顔を離す。
「い、いえ。私は、人の姿の陛下も好きです!」
「本当か?」
「はいっ」
リオディールは再び人の姿と成り、アリアをぎゅうっと抱きしめる。
「俺も、アリアがどんな姿でも愛している。もう離れない、毎日抱きしめてキスをして、それから――」
軽々と抱き上げ彼女に触れるほど顔を寄せる。
「そなたを近くで感じさせてくれ」
低く艶のある美声が、アリアを赤面爆発させた。
「は……はぃ……」
今日も執務は滞りなく片付き、ヴィクティス国の政官たちは、仲睦まじい国王夫妻を温かい目で見送った。
アリアの幸せな日々は、これからがはじまりである。
最後までお読みいただきありがとうございました!
今回、初めてこういった小説(ハッピーエンド、令嬢、ざまぁ、溺愛もの)を書かせていただきましたが、いかがでしたか?
短編ということで、かなり展開がサクサクコロコロしたと思います。
一言で構いません。「もっとイチャラブ読みたい」といただけると稚拙ながら次回作に心血注いで書かせていただきます!
そのためにもっと勉強してまいりたいと思います。
もちろん、今後のイチャラブの勉強の為にご意見や、ご要望もいただけますと嬉しいです。
これからも応援よろしくお願いします!m(_ _)m
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