01
かつて、聖族と魔族が互いの存在をかけて大戦争が起きた。
人の尺では測れないほどの刻々にわたり戦争は続き、世界は混沌に巻き込まれ、やがて人間の住む世界にも魔族が攻めてきた。
きっかけは、今となっては戦に巻き込まれた世界の渦のように混沌深く埋もれてわかりようがない。
人間の騎士たちは世界を守ろうと勇敢にも戦い、聖女もそんな勇気ある者たちのために祈った。
聖族は聖女の祈りに応え、人間の世界を救うべく立ち上がる。
しかし、魔王率いる魔族の強い魔力に阻まれ、聖族が人間の世界に干渉することはほとんど叶わず、人間はあっけなく敗北した。
そのときの魔王の力は、文字通り世界を揺るがした。
敗北した人間の国は魔族の領土として管理下に置かれた。聖女の加護を得た人間はほんのひと握りである。
だが聖族は人間へ救いを与えるため聖女の祈りを通し、人間に加護を与え始めた。
◆ ◆ ◆
「残念ながら、アリア様には聖力がありません」
聖女の儀式。
幼い少女は、大勢の貴族の前で無能宣言をされた。
代々続く聖女の家系であるクラウディオ公爵家では、十歳となる娘に聖女の儀式を受けさせる。
儀式と言っても、巨大なクリスタルの前で祈るだけの簡単なものだった。
力の大小はあれど、儀式を受けた歴代の少女たちは皆、聖力があった。
双子の妹、イリア・クラウディオも儀式を行い、過去に前例のない強い聖力を示した。
まさに聖女だと囃し立て、さんざんお祭り騒ぎをした後、おまけのように姉、アリア・クラウディオの儀式は始まった。
そして声高々と声明された先程の司祭様によるお言葉。
彼女自身幼心にも傷ついたであろうし、そもそも大勢の前でそんな言い方はないと誰もが思っていた。
思うだけである。
神殿や周りの圧力に負けて擁護できないのではなく、ただ単純に思うだけなのであった。
その日から、アリアの人生は転落といっていい悲惨なものになった。
まさに下り坂を転がる玉だ。しかも終わりが見えない。
聖女として認められた妹は、その立場を利用し、贅沢三昧をし始めた。国民からの貢ぎ物も、最初はただ喜んでいたが、段々と自分の好きなものばかりを求めるようになった。
やがて傲慢なふるまいが板につくと、自分の都合の良いように聖女のお告げを吹聴するようになった。
気に入らないことがあれば病が流行ると脅しをかけて意のままにしようとする。
だが不思議なことに、国の誰一人として、彼女の言葉を信じて疑わなかった。
一方で、姉は聖女の雑務を陰で一人こなしていた。
部屋の掃除や身の回りの世話はもちろん、神殿や王宮から届く書簡や、求婚の手紙、重要書類にいたるまで。
そして時に疲れた聖女様のため、マッサージまで行っていた。
朝から晩まで休む暇など一時もなかった。
なのに、妹のイリアは聖女の仕事もそこそこに、暇だと言っては激務に追われるアリアを呼び出す。
理由は何でも良かった。
アクセサリーが部屋からなくなっただの、大事なパーティーの返事が遅いだのと難癖をつけては、躾と称して憂さ晴らしの暴力をふるう。
怪我をしても放置され、仕事に支障が出れば、それを理由に責められる。
病で熱に浮かされようとも、容赦なく仕事を押し付けられる。
理不尽なことに、具合が悪ければ悪いほど、怠けていないかと監視の目が強くなる。
休む日、どころか休ませてもらえる時間すらなかった。
そんな生きながらの地獄を過ごして、七年の月日が流れた。
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