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短編とかその他

心が折れた人

作者: リィズ・ブランディシュカ



 技術が発達した少し先の未来。


 ある日突然、一夜にして、世界から人々が消え去った。


 原因はなにか?


 人は本当に一人もいないのか。


 その人物は、答えを求めて歩き続けていた。


 しかし、足を向けた先に望んだそれは、影も形もない。






 行く当てもなく彷徨う。


 ゴールがどこか分からないまま。


 延々と足を動かして、モノクロになって世界を歩いていく。


 そこは人がいなくなった世界。


 孤独に生きる事を強いられた世界。


 唯一の人であるその人物は、自分以外の誰かを探して、世界中を歩き続けた。


 生きている内は訪れなかったであろう様々な場所へ、足を向ける。


 有名な観光地、ライフラインの整っていない辺境、未開に等しい土地、目もくらむようなビルが立ち並ぶ大都市。


 しかし、どこに行っても人はいなかった。


 だからそのうちに、足を止めてしまう。


 心が挫けて、諦めてしまう。


 もはや自分以外の人間は、この世界にいないのだと。


 そう結論付けてしまう。


 一夜にして、自分以外の者達が消え去った世界。


 その理由は分からないまま。


 自分が人間の屑だったからそうなったのだと、ただ自虐の精神にのまれながら。


 家庭をかえりみず、友人の言葉に耳をかさずに、仕事にばかりかまけていたのだからそうなったのだと、思いすらした。


 自分一人が、不思議な世界へ移動したのなら。


 救いがあると。


 その人物はやがて、足を止める。


 思い込みの理由は、しょせん思い込み。本当の理由は分からない。


 その人物が分からない所で、何かがあったのかもしれない。


 けれど、その人物は原因を自分の思う様に決める事にした。


 その方が楽だから。


 心が折れた人物は、誰もいない世界で一人きりで生き続ける。


 歩き続ければ誰かと出会えたかもしれないと思いつつも。


 探し続ければその原因が分かったかもしれないと思いつつも。





 その人物は科学者だった。


 世界を救う研究をするために、様々な研究をしていた。


 しかし、人が出す答えには限界があると思い、ある日機械に答えを求めた。


 機械は、その人物は知らぬ間に答えを出して、そしてそれを実行した。


 最大出力で行ったそれは、世界各地から瞬く間に人間だけを消し去って、力尽きた。


 真相を語るものは何もない。


 だから、その人物は、何も分からない。


 結局は、歩き続けていても、何も。




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