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リュミエール公爵家はこんな家族でしたのね4

「で、なんか良い感じに纏まったところで、ひとつ良いですか?お嬢の婚約者、第二王子についてはどうします?」


忘れていましたが、リュカもポールもいたのでしたわ。


ぱっとそちらを振り向くと、ポールは泣きながらうんうんと満足気に頷いてわたくしたちを温かい目で見ていました。


まあポールなら信頼できる執事ですし、大丈夫ですわね。


「旦那様やランスロット様、エリオット様からおど……命令されてお嬢に危険のないようには守っていますけど。お嬢からはなにもしないでと言われるし、正直だんだんキツくなってきたんですよね、あの第二王子と男爵令嬢(バカップル)の対応」


あら?


リュカったら、命令されてって言い直しましたけれど、なにを言おうとしたのでしょう?


そしてかの方々のお名前に、部屋の温度が急激に下がったような気が……。


そこで当初の予定だった、悪役令嬢の件について思い出し、おずおずと口を開きました。


「そのことですが、お父様、お母様、お兄様。わたくし、リオネル殿下のことは、何とも思っていませんの」


「「「は?」」」


「まあ。好意を持ってはいないということかしら?それは、記憶が戻ったから?」


呆気にとられる男性陣の様子を見ると、わたくしが殿下を少なからず想っているのだろうと考えていたのでしょうね。


「いいえ。その前からですわ。公爵家に迷惑をかけたくないですし、わたくしもできるだけ仲良くしたいと思い、努力してきたのですが……。結果は、不甲斐ないもので申し訳無いことですわ」


お母様の疑問にしゅんとしてそう答えると、エリオットお兄様が、ダン!と机を叩きました。


「申し訳無いことなどない!そもそもこの婚約は、王宮からの強い申し出を仕方なくリュミエール公爵家が聞き入れただけだ!それなのに、あの第二王子(クソガキ)どもは……!」


ぶるぶると震えるお兄様は、大変怒っているようです。


「いいえ、わたくしもいけなかったのですわ。上手くお話もできないし、ミアさんのように可憐な笑顔で癒やして差し上げることもできませんでしたから」


わたくしのために怒って下さるのはとても嬉しいですが、かの方々の互いを想う気持ちを踏みにじってはいけません。


「ですから、わたくし“悪役令嬢”になろうと決めたのですわ!」


「「「「“悪役”令嬢??」」」」


あちゃーとリュカが頭を抱えたのが見えましたが、わたくしは意を決して、皆に殿下とミアさんを応援したいのだと伝えました。


悪役を演じ、わたくしとの婚約を破棄したいと殿下が思うのも致し方ないと、周囲の方々に思ってもらおうということも。


「その間公爵家には迷惑をかけますが、どうぞ全てが終わりましたら、勘当して平民にしてやって下さいませ。皆様のお心を知った今、共に暮らせなくなるのは寂しく思いますが、時々便りを出すくらいはお許し頂けますか?」


「――――っ、なんでお前が!」


「まあまあエリオット。話はよく分かったよセレナ。もう一度聞くけれど、君はリオネル殿下のことを本当になんとも思っていないんだね?」


かっとなったエリオットお兄様を抑えて、ランスロットお兄様がわたくしに確認しました。


そうですと答えれば、ふうんと何事かを考えるように、お兄様は宙を見上げます。


そうして少しすると、にっこりとわたくしに向かって微笑みました。


「“悪役令嬢”ね。面白いじゃないか、それ」


「「ランスロット!?」」


お父様とエリオットお兄様が冗談だろう!?と激高しそうになるのを、まあまあと制しました。


「でも、そうだねぇ。完璧な悪役になりたいなら、才色兼備、文武両道であってほしいよね」


「!さすがランスロットお兄様ですわ!そうなんです、やはり完璧な悪役令嬢を倒してこそ、主役たちの恋が際立つというものですわよね!」


なに言ってんだこいつらと言う目で、リュカがわたくしとお兄様を見ている気がしましたが、今は無視です。


「じゃあこれからたくさん勉強しないとね。君は座学はかなりの好成績だけれど、マナーやダンス、立ち振る舞いや交渉術なども最高レベルを目指してほしいね」


ランスロットお兄様の目がきらりと光った気がしました。


そしてお母様も、何かを思い付いたようにそれは良いわねと賛同してくれました。


「はい!わたくし、これからかの方々の恋を成就させるために美しく散る、完璧な悪役令嬢を目指して精進致しますわ!」


「あ、第二王子と男爵令嬢(バカップル)のことはどうでも良いんだけど」


「はい?ランスロットお兄様、なにかおっしゃいました?」


ぼそりとした呟きの内容が分からず聞き返したのですが、何でもないよと曖昧に微笑まれてしまいました。


「さて、セレナはそろそろ自室で休むと良いよ。学園でも色々あったみたいだし、記憶を取り戻して精神的にも疲れているだろうからね」


まあ、ランスロットお兄様は本当にお優しいのですね。


表面は優しくてその実心の中は黒い……ええと、腹黒というんでしたかしら、それだと思っていましたが、かわいい妹にはこんなに慈悲深い眼差しを送ってくださるんですのね。


「ありがとうございます。確かに、無意識に気を張っていた部分もあるようで、皆に話して安心したら、少し眠くなってきましたわ。お言葉に甘えて、夕食まで休ませて頂きます」


「そうね。私達はもう少し、その“悪役令嬢”について相談しているから、あなたは気にせずお休みなさい」


お母様もランスロットお兄様の逆隣に座って、優しく頭を撫でながら気遣って下さいました。


勇気を出して、全て打ち明けて本当に良かったです。


「では、また夕食時に。お父様、お母様、お兄様方。本当に、ありがとうございます」


精一杯の感謝の気持ちを込めて退席の挨拶を取り、わたくしはリュカと共に、自室へと向かいます。


母上様。わたくし、新しい世界でも頑張っていけそうですわ。


だって、わたくしには支えてくれる家族がいる。


それがこんなにも頼もしくて、温かい気持ちになるものなのだなと感慨深く思いながら、廊下を歩いて行くのでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど、王家からのお願いだったのか(笑) しかも、本人は実は、王子を好きなわけじゃない(笑) まぁ、大変(笑)
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