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【書籍化&コミカライズ】前略母上様 わたくしこの度異世界転生いたしまして、悪役令嬢になりました  作者: 沙夜
本編

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なんともないと放って置くのはよくありませんよ?7

「で?なぜおまえがあの部屋にいたんだ?」


「なぜと言われましても……。ランスロットお兄様にお願いして、ご一緒させて頂いたのです」


「まあ!お忙しいランスロット様のお手を煩わせるなんて!」


ところ変わりまして、ここは王宮の応接室。


さすがに外国のお客様、しかも怪我人が寝ている部屋で騒ぐ訳にはいかず、移動して参りました。


そしてリオネル殿下とミアさんが、うっとおしげな表情でわたくしの正面に座っているのです。


「それを言うなら、なぜリオネル殿下とそこの令嬢もあの部屋に?」


「おまえ達こそ招かれざる客だったと思うのだがな」


この部屋には、リオネル殿下とミアさん、ランスロットお兄様、リュカとわたくしの他に、フェリクス様とレオ様もいらっしゃいます。


なぜかといえば、リオネル殿下とミアさんが貴賓室に飛び込んできたすぐ後、賓客の前で揉めるわけにはいかないと、おふたりが止めに入ってきて下さったからです。


「いるんだよねぇ。自分の立場を分かっていない人。ところでブランシャール男爵令嬢?僕は君に名前を呼ぶ許可を与えてはいないのだけれど?」


……そして先程からランスロットお兄様の顔が大変恐いですわ。


笑顔なのに恐い、これ如何に。


「っていうか、どうしてあたしが魔法を使う前にあの使者は治ってるんですか?」


「そうだ!せっかくミアが治療魔法で皆に実力を見せつけ……いや、苦しんでいる者を救おうとわざわざ登城したのに!」


フェリクス殿下とレオ様を無視した挙げ句、お兄様のお怒りもさらりと流しましたわ。


普段温厚なランスロットお兄様ですが、このタイプは怒らせると恐いのですが……。


「ちっ、自分本位なクズどもが……」


そんなミアさんとリオネル殿下の言葉に、リュカがぼそりと何事か呟きましたが、わたくしには明瞭に聞こえませんでした。


舌打ちは聞こえましたけれど。


ですがその表情から、良くないこと……悪口かもしれません、を言ったのだろうという予想はできました。


でも、ちょっと待って下さい……?


おふたりの発言から、わたくしはあることに気付き、はっと顔を強張らせました。


「おい、どうした?あいつらの言葉にいちいち傷付くことはないぞ?」


やんややんやと盛り上がるリオネル殿下とミアさんに聞こえないように、隣のソファから身を乗り出したレオ様が、わたくしにそっと囁きかけてきました。


「違うのです、わたくし……」


とんでもないことをしてしまったと震えるわたくしを見て、レオ様が狼狽えます。


そして逆隣に座っていたランスロットお兄様が、わたくしの肩をぐいっと引き寄せました。


「――――第二王子殿下、大変申し訳ありませんが、僕達は疲れているのです。特に用がないのなら、ご退室頂けますか?」


凄みのある声でリオネル殿下とミアさんに告げれば、さすがのおふたりもたじろぎました。


「ま、まあおまえ達の顔を見て茶を飲んでも楽しくはないからな。ミア、別室で茶会をやり直そう」


「わ、分かりました。リオネル殿下、行きましょう」


そそくさと退室するふたりを、わたくし以外の皆様は白い眼で送り出しました。


わたくしはといえば、衝撃の事実に気付き、それどころではありません。


「セレナ嬢、本当に大丈夫なのか?震えているぞ」


お兄様に肩を抱かれてもなお震えるわたくしに、レオ様が心配してそうお声がけ下さいました。


「あのふたりのことは気にしない方が良いよ」


フェリクス殿下も控え目ながらもわたくしを気遣ってくれます。


ああ、でもだめです、このおふたりにはお話しできません。


「お気を遣わせてしまい申し訳ありません、レオ様、フェリクス殿下。少し疲れてしまっただけで……。その、お兄様にも相談に乗ってもらいますので、大丈夫です」


ショックのあまり声まで震えてしまい、レオ様が痛々しげな顔をされました。


けれど今はこう言うのが精一杯です。


「……分かった」


わたくしの意思を汲み取って下さったのか、レオ様はそう言ってフェリクス殿下と共に立ち上がりました。


「僕達は先に失礼するよ。セレナ嬢、兄上とゆっくり話して、落ち着いたら帰ると良い」


「ありがとうございます、フェリクス殿下。申し訳ありません」


追い出すような形になってしまったことを謝りつつも、感謝してお見送りします。


パタンと静かに閉じられた扉。


部屋に残ったのは、ランスロットお兄様とリュカとわたくし、三人だけ。


「お、お兄様、リュカ!大変ですの〜!!」


一気に肩の力を抜き、お兄様にがばりと縋りつきます。


「ど、どうしたんだいセレナ」


「なんか嫌な予感しかしないんですけど」


段々この展開に慣れてきたリュカの態度には釈然としないものがありますが、今はそれどころではありません。


「わたくし、ヒロインの活躍の場を奪い、その上婚約破棄に通じる機会を逃してしまったんですの!!」


「……うん?」


「あーこうなるって分かってました、うん」


どういうことなのかと戸惑うお兄様と、心配して損したと鼻で笑うリュカに向かって、わたくしは切々と事情を話したのです。

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