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【書籍化&コミカライズ】前略母上様 わたくしこの度異世界転生いたしまして、悪役令嬢になりました  作者: 沙夜
本編

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なんともないと放って置くのはよくありませんよ?4

とりあえずこの話は日本でいうところの外務大臣的立場にいるお父様が責任者となり、ランスロットお兄様を中心として動くことになりました。


両陛下との話し合いを終えた後、わたくしはまずお粥の作り方を伝授しに、王宮の厨房へと向かいました。


わたくし達が話し合っている間に米料理の得意な料理人を探していたのだそうです。


さすがに王宮に勤める方々はお仕事が早いですわね。


「新しい米料理を教えて下さるとか!お嬢様、よろしくお願い致します!」


下町の頑固親父のような方にこんな小娘に教わることなどない!と言われたらどうしましょうと思っていたのですが、気のいいお兄さんで良かったです。


目をキラキラとさせて、教わる気満々なのが嬉しいですわね。


といってもそんなに手の込んだお粥を作るわけではないので、教える程のものではないのですが。


ではまず……と早速始めようとした時。


「大変です!キサラギ皇国の使者達がもうすぐ到着するとの知らせが来ました!」


「えっ?」


ランスロットお兄様の部下である文官からの突然の報告に、わたくしも料理人の方も目を丸くしました。


「どういうことですか?到着するのは明日だって話でしたよね」


「そ、それが……」


怪訝な顔のリュカに圧倒されながらも、報告に来てくれた方は簡単にことの成り行きをお話ししてくれました。


どうやら重傷者の怪我の具合が思わしくなく、迎えにと寄越したルクレール王国の馬車の移動速度を、彼らが温存していた魔力を余すことなく使ってかなり速めたそうです。


「それほど急いで向かっているのであれば、よほどの重傷なのでしょうね。大丈夫なのでしょうか?」


「詳細は分かりませんが、とりあえずお出迎えに一緒に来て頂けますか?」


焦る文官の後について外の馬車置き場まで急ぐと、キサラギ皇国の使者達を乗せた馬車が、遠くはありますが目に見える場所までやって来ていました。


どうやら間に合ったようですね。


すでに並んでいたお父様やお兄様の少しうしろに並び控えて、息を整えます。


魔法を使ったとのことですが、なるほどものすごい勢いで馬車が走っています。


ですが、中にいる重傷者の負担も大きいのでは……ああ、それも魔法でなんとかしているのかもしれませんね。


魔法とは本当に便利なものです。


こっそりとひとり納得していると、わたくし達が並ぶ百メートルほど手前で馬車はスピードを落とし、そのままゆっくりと止まりました。


こちらからいきなり開けては失礼ですので、中の方が開けて下さるのをじっと待ちます。


ごくりと息を呑むと、中からゆっくりと馬車の扉が開かれました。


そこから現れたのは、褐色の若い大柄な男性。


「キサラギ皇国、使者のハルと申します。此度の受け入れ、非常に感謝しております。失礼とは存じておりますが、まずはこちらの怪我人の治療を優先させて頂きたい!」


ハルと名乗った男性は、なんとか冷静さを保とうとしてはいましたが、冷や汗をかき、かなり焦った様子が窺えます。


大剣を担いでおり、鎧は着ておらず西洋の騎士服とも少し違いますが、動きやすい服と籠手を身に着けていることから察するに、彼は護衛なのでしょう。


そして重傷者は、恐らく彼の主人。


「ええ。私はランスロット・リュミエールと申します。今回の滞在、基本的には私が担当させていただきますのでお見知りおきを。部屋を用意しておりますので、まずは怪我人を運びましょう」


ランスロットお兄様が簡単に挨拶をし、移動して治療をと促します。


その対応にハルもほっとした様子でお願い致しますと答えました。


そして騎士達に手伝ってもらいながら、馬車の中からひとりの男性を背負って出てきました。


ハルの背でぐったりとしている男性も、褐色の肌。


荒い呼吸をしており、目はきつく閉じているため瞳の色は分かりません。


そしてその背から、大量の血が滲んでいるのが分かりました。


「これはひどい……!おい、必要なものを揃えて医者と魔術師をすぐに貴賓室に呼べ!急がせろ!」


さすがのランスロットお兄様も驚き、すぐにそう指示を出しました。


到着がかなり早まったため、医者も魔術師も準備が十分に整っていなかったのが辛いところですね。


「お兄様、わたくしも一緒によろしいですか?」


「……分かった。しかし女性には目を逸らしたくなるような傷かもしれない。無理はしないと約束してくれるかい?」


お兄様は一瞬迷いながらも、許可を出してくれました。


医学に心得があるわけではありませんが、ひょっとしたら現代日本の知識を活かしてなにかできることがあるかもしれません。


母上様の言葉が、脳裏に思い出されます。


『苦しんでいる者から目を背けては駄目よ。自分にできることを常に考えなさい』


はい、母上様。


わたくしに、できること。


この世界にはまだ菌の存在が知られていません。


少し見ただけでしたが、あの出血の様子は恐らく傷は裂傷。


しかも傷を負って数日が経過しているとのこと。


魔法でただ傷を塞ぐだけでは、中で化膿してしまう可能性があります。


前世ならば抗生物質を含む薬を使えば良かったのですが、この世界でそのような薬を見たことがありません。


それならば。


「わたくしに、考えがありますの」


日本語を駆使して魔法を使えば、或いは。

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