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【書籍化&コミカライズ】前略母上様 わたくしこの度異世界転生いたしまして、悪役令嬢になりました  作者: 沙夜
本編

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女性のお買い物は時間がかかるものなのですわ1

あれから、いくつか悪役令嬢としてのシナリオを立ててはみたものの、ことごとく失敗もしくは予想外の結果となっていました。


しかしわたくしが考えたストーリーはとても面白いと、毎回エマ様とジュリア様から書き上がったら見せて下さいとねだられています。


まるで小説の続きを楽しみに待つかのように。


わたくしは小説家を目指しているわけではないのですが……。


その他の近況をお話しいたしますと、最近お菓子作りを通して仲良くなったご令嬢達が増え、わたくしの周りは以前よりも賑やかになっています。


皆様容姿は元より、内面もとてもかわいらしい方ばかりで、わたくしと一緒に作るお菓子を婚約者がとても喜んでくれるのだと、頬を染めてご報告して下さいます。


最初はリオネル殿下との関係を気にして、そういった話題を遠慮して下さっていたのですが、わたくしが殿下に興味がないと分かると、色々と教えて下さるようになりました。


というか、わたくしがお願いしたのですけれど。


恋とはどういうものなのか、皆様の経験を聞きたくて。


遠慮なく惚気話をするご令嬢達は、とてもキラキラしていて、かわいらしいです。


親同士が決めた婚約、もちろん中には割り切った関係だという方もいらっしゃいますけれど。


しかし、手作りのお菓子をプレゼントすることで、相手との関係が良くなったと喜ぶ方も多いです。


なんであれ、相手を思い遣る気持ちは大切なものですわね。


「ですがセレナ様。わたくしリオネル殿下は、セレナ様との関係をはっきりするべきだと思っておりますのよ」


放課後、そんなご令嬢達と共にカフェテラスで女子会を行っておりますと、ヴィクトリア・ベランジェ侯爵令嬢がだん、とテーブルを叩きました。


くっきりとした目鼻立ち、いかにも高貴なご令嬢という風貌の彼女は、気が強いと思われがちですが、曲がったことが嫌いでとても真面目な方です。


「う〜ん、王宮が決めた婚約ですので、こればかりは……」


まさか悪役令嬢を演じて婚約破棄、平民になろうと考えているなど、言えやしません。


こう言って誤魔化すしかありませんわ。


ミアさんとご一緒したお菓子作りの後、わたくしが殿下に興味がないことに加え、お菓子を作るミアさんの様子から、心から殿下を想っているようだとご令嬢達の中で話題になりました。


それでも浮気は良くないと皆様思いつつも、道ならない恋に苦しむミアさんへの同情心を持つ方も少なくありません。


彼女の全てを非難することはできないと思ったのでしょうね。


それならばいっそ、わたくしとの婚約をなかったことにすれば良いのではと考える方もいらっしゃるのです。


「そうですよね。王宮と公爵家との繋がりとか、殿下の出生のこととか、政治的なこともありますから、わたくしも分かってはいます。ですが、これでは誰も幸せになれません……」


ヴィクトリア様もままならないことだと、良く分かっていらっしゃるのですよね。


それでも、わたくし達の気持ちを考えて、そう言って下さったのでしょう。


「ありがとうございます、ヴィクトリア様。わたくし、頑張りますわ」


だから、わたくしは悪役令嬢になるのです。


わたくしが王家に入ることは良くないことだと王宮に認められて、向こうから婚約破棄されれば、全てが丸く収まるのですから!


そんな内心を隠してにっこりと微笑めば、ヴィクトリア様が目を潤ませました。


「セレナ様、なんて健気な……。わたくし、もしこのままセレナ様がリオネル殿下の妃となられても、ずっと陰ながら応援させて頂きますわ……!」


まずいですわ、これは『殿下からの寵愛を得られずとも、これからも国のために頑張りますわ』の意味に取られてしまったようです。


焦るわたくしの本心を知っているエマ様、ジュリア様、リュカは、うんうんと頷きながら生温かい目でヴィクトリア様を見ています。


確かにお優しいヴィクトリア様がとてもかわいらしいですが、わたくしものすごくいたたまれませんのよ!


加えてにやにやするリュカを恨めしそうに睨んだのですが、ちっとも助けてくれませんでしたわ。





「それにしても、最近交友関係が広くなりましたね」


「ええ。実は私、ヴィクトリア様のことちょっと苦手だったんですけど、ちゃんとお話してみるとすごく良い方なんだなぁって思いました。見た目だけで判断してはいけませんね」


お友達が増え、ジュリア様とエマ様もすっかり皆様と仲良くなり、嬉しそうです。


「でも、ちょっぴり寂しさもあるんです。最近セレナ様、すごく人気者で……。三人で過ごすのも、私にとっては大切な時間でしたから」


「ジュリア様……!」


まあ、なんてかわいらしいことを言って下さるのでしょう!


わたくしも大勢で過ごすのは楽しいですが、こうした三人だけの時間もとても好きですわ。


「わたくしにとっては、おふたりは特別です。だって、初めてできたお友達ですもの」 


この世界が鮮やかに色付いたのは、紛れもなくおふたりのおかげです。


おふたりのおかげで、今のわたくしがいるのです。


「もう、ふたりとも恥ずかしいこと言わないで下さいよ!あ、そうだ。明後日は学園もお休みですし、もし良かったら三人で出掛けませんか?お忍びで市井に!」


「それ良いですね、エマ様!ね、セレナ様も。ぜひ行きましょう?」


「まあ、楽しそうですね。お父様とお母様に相談してみますわ。明日お返事いたしますわね」


こうしてわたくし達は、三人で初めてのお買い物へと出掛ける約束をしたのです。

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