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【書籍化&コミカライズ】前略母上様 わたくしこの度異世界転生いたしまして、悪役令嬢になりました  作者: 沙夜
本編

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差し入れお菓子は、ヒロインの専売特許ですのよ?2

翌日、わたくしはジュリア様とエマ様と一緒にお昼をご一緒していました。


この学園には、学食……というには立派すぎる、高級レストランのような食堂があり、皆様そこでお昼を召し上がります。


ミア様はというと、今日もリオネル殿下と隣に並んで昼食をとられているようですわね。


あーん、とかいって食べさせ合ったりするのでしょうか。


それとも、『どれにする?』『決められないわ』『それなら両方頼んで半分こしよう』とかいうやり取りをするのでしょうか。


どちらにせよ、素敵ですわ!


「セレナ様……食べ終わりましたら、すぐに教室に戻りましょう?」


「それなら庭園に行きませんか?咲初めの薔薇が美しいらしいですよ!」


おふたりの仲睦まじい様子に、ジュリア様とエマ様が顔を顰め、それを見ないようにとわたくしに提案してくれました。


殿下方のことは気にしていないと何度も伝えておりますのに、相変わらずわたくしを気遣って下さいますのね。


そんなおふたりに感謝しつつ苦笑を漏らし、わたくしは離れた場所に座る殿下とミアさんをちらりと見ました。


丁度殿下が席を立ち、ミアさんと別れたところです。


「すみません、わたくし少々やることがありまして。すぐに済ませますので、少し待っていて頂けますか?」


「え?あ、はい……」


戸惑うおふたりを残し、わたくしはミアさんおひとりが座るテーブルへと近付きました。


そんなわたくしに気付いたミアさんは、怪訝な顔をしていらっしゃいます。


「……なんですか。またあたしに変なことしようとしてるんですか?騙されませんからね!」


また?騙す?


身に覚えがなくて首を傾げると、ミアさんがイラッとしたのが分かりました。


いけません、ヒロインらしからぬ表情ですわ!


「わ、わたくし殿下に、お菓子を作ろうと思いますの」


慌てたわたくしは、とりあえず当初の予定の台詞を口にしたのです。


「最近お忙しいと貴女もお聞きになったでしょう?愛しの婚約者からの手作りの差し入れで、癒やして差し上げるのですわ。邪魔しないで下さいませね!」


悪役令嬢らしい口調で言えましたし、上等の出来ですわ!


「殿下への……お菓子の差し入れ……」


それを聞いたミアさんはそう呟くと、ぱあっと表情を明るくさせました。


「そっか!お菓子作りイベント!」


いべんと?


「分かりました。邪魔なんてしません。ええ、あたしはあたしでやりますから!」


そしてとっても素敵な笑顔を浮かべて、それじゃ!と足早に去って行きました。


「とりあえず作戦成功ぽいですね?」


「そうですね、多分」


よく分からない単語が出てきましたが、リュカと頷き合います。


「なんです、あれ」


「まあ、食堂を走るなんてはしたない。それでセレナ様、どういうことですか?」


ミアさんが去ったのを見計らって、待っていて下さったエマ様とジュリア様がわたくしの元へ来てくれました。


そしてエマ様がおずおずと口を開きました。


「殿下へお菓子って……本気ですか?」


「ええ、もちろんですわ」


「セレナ様は、お菓子が作れるのですか?あの、こう言ってはなんですが、普通の貴族令嬢はお料理などしませんので……」


「少しだけですが、作った経験があるんです。確かに普通ではないかもしれませんが、素敵だと思いませんか?大切な人への、特別なプレゼントのようで」


ジュリア様の戸惑いも最もですが、少女漫画では定番ですのよ、ヒーローへの差し入れは!


「またそれを喜んでもらえたら、とても嬉しいですし、ふたりの絆も強くなると思うのです。それに、大切な人を思って作る時間も楽しいですよ」


前世でも母上様によく作りましたわ。


忙しい人でしたから、少しでも疲れを癒やしてあげたいと思ってお菓子作りを覚えたのです。


「大切な人……」


「絆……」


あら、ふたりのこの反応は。


「もしよろしければ、一緒に作りませんか?フェリクス殿下とライアン様に。できるだけ日持ちするお菓子を教えますので」


折角ですから、ひとりでやるよりは三人の方が楽しそうですもの!


それにあのおふたりなら、エマ様とジュリア様の手作りお菓子をとても喜んでくれると思います。


「わ、私やってみたいです。フェリクス殿下もお忙しい方ですから、私にもなにかできないかと思っていたところで……」


「あ、私もやりたいです!ライアン様に、作りたいです」


まあ、おふたりともとてもかわいらしい表情をしていますわ。


ふふ、先程のミアさんの素敵な笑顔といい、恋する乙女は本当に輝いていますわね。


「きっと喜んでくれますわ。こんなに健気でかわいらしい方が婚約者だなんて、きっとおふたりも自慢に思っていらっしゃいますわよ」


「ま、またセレナ様は!すぐにそういうことを言う……」


「は、恥ずかしいですわ……」


素直な気持ちを言葉にすれば、ふたりが真っ赤になってしまい、わたくしはそれにくすくすと笑うのでした。





* * *


そんなセレナ達の会話を、同じ食堂の中で静かに聞いていた一行がいた。


「――――皆様、聞きまして?」


「はい、この耳でしかと」


「エマ様もジュリア様も羨ましいですわ……」


うんうんと多くの令嬢が頷く。


「これは、わたくし達の出番ではなくて?」


「ヴィクトリア様、というと……?」


どういうことかと問えば、ヴィクトリアは一行に近寄るようにと指示し、こそこそ話を始めた。


「それは良いお考えですわ!」


「さすがヴィクトリア様です!」


そして令嬢達は立ち上がる。


「その名も“セレナ様の手作りお菓子を狙え☆〜真実の愛はレオ様に〜”作戦ですわ!皆様、参りますわよ!」


リュカが聞いたなら、ダサっ!!本気!?と叫ぶであろう名の作戦を胸に、それぞれの役割を成すために動き出したのだった。


* * *

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