2 魔神世界の長老
「キャッ」
気がつき目を開けると、紅々李が少し驚いたような顔をして頬を赤らめていた。私の周りには Lip Magic Generations の仲間がいた。
「チッ」 と舌打ちのような音が聞こえる。
私はフワフワの綿の上に寝せられていた。
「オッ。気がついたか。 ショウ(念波)」
と言ってきたのは、奥からコツコツと杖をついてやってきたエルフの長老だ。
魔神世界らしく、魔法使いのような深緑の被り物をしている。
「ワシが分かるか?(念波)」被り物をとってそのエルフは大きな鼻で耳の尖った皴のある顔を見せた。
「すみません。分かりません」……会ったことあったかな?
「ワシも分からん。アハハハハ(念波)」
「お前がこの世界にいたのは、5000年も前のことじゃからのう。
この世界樹が教えてくれたわ。お主とは相当仲が良かったらしいぞ(念波)」
「しかし、面白い仲間じゃのう。
ワシが暇だから「白雪王子」の話をしてやったら、お主に代わる代わるキスを始めての。 誰がお主を目覚めさせるか試しておったわ。ハハハ(念波)」
――わざとだろ、このエルフ。……白雪王子って人神世界でいうところの「白雪姫」の話か?
「お嬢さんたち、なんか物足りなさそうじゃのう。
お主、このわしが作った「毒りんご」食べてみるか?(念波)」
「いえ、結構です」 手を振り、速攻で断った。
そこへ美夜が、毒りんごを長老から取り上げ、無理やり私に食べさせようとする。
「さっきは不覚をとった。もう一度勝負だ! 」
「いやいや。また長い眠りにつきたくないから」
毒りんごを無理矢理、口に押し込もうとしている美夜に
(耳打ちをし、「後でゆっくりキスしよう」と)断りを入れ、
美夜は口惜しそうだったが、しぶしぶ諦めてくれた。
そういう危ない遊びはやめよう。また永い眠りとかつきたくないぞ。
――少し果汁が入ってきたけど、大丈夫かな?
「でもみんなでキスとか、瑠璃も入ってたのか?」と聞くと妹の瑠璃が首肯く。
「だって、人命救助だから、一緒にやらないとね」……ちょっと違う気がする。
「さて、余興はそこまでにして、本題に入ろうかの。ホッホッホッ(念波)」
オイオイ余興だったのかい。
「ショウ、お前さんこの世界に来て突然気を失ったが、それは人神の封印が解けてきたからじゃ。 完全にではないがな。
この世界は人神世界からは一番遠いからの。次第に記憶も戻ってくるじゃろ(念波)」
確かに、少し思い出してきたかな。魔神世界にいた覚えはある。
「そうそう、まずは自己紹介じゃな。ワシはネオじゃ。お主らのことは聞いておる。すぐにでも自己紹介してもらいたいところじゃが、ここは狭いからの。
たぶん他のエルフも見たいじゃろうから明日にでも披露してもらおう(念波)」
絶対、余興の一つと考えてる。
「まずは、お主の娘のことじゃ(念波)」
――うん。そのために来た。
「魔神に聞いてみたら、どうやら南アメリカにいるそうじゃ(念波)」
創造神の魔神と会話できるとか、やっぱりエルフってすごいんだな。
「ここも、アトランティスですか? 交通手段はありますか?」
「交通手段はあるにはあるがの。
ここの世界は他の世界のように科学が発達しておらん。
だいたいは魔術で移動するのじゃ。お主らにはまだその術はない(念波)」
ネオはロッキングチェアに腰掛け、揺らしながら教えてくれる。
「この世界は、人神から見ると地図を裏から見た感じじゃ。
簡単にいうと西と東が逆じゃ。つまり南アメリカは、東側にある(念波)」
「偏西風は西から東に吹いてるんですか?」
「そうじゃな。お主らは羽を持っておるようじゃから、その風に乗っていくのが一番手っ取り早いじゃろ(念波)」
「分かりました。翼を使って移動してみます」
「それから、蓮月と申したかの。
お主は月の精霊「アルテミス」を開眼しておるな。
だとすれば、魔物を除いて全ての植物を自由に操ることができる。
そして話もできよう。
向こうに行ったら、樹木や草花から情報を得ると良い(念波)」
蓮月は耳を立て驚いたように
「へ~面白そう! 向こうに行ったら話してみますね」と、愛嬌よく答えている。
「ありがとうございます。助かりますネオ様」
ホ~、すごいな蓮月。って、オレもさっきキスされたから、新たなスキルも使えるのかも? 後で試してみよう。
今日は6時間も階段を登ってきたし、普段鍛えているとはいえ、足腰がパンパンだ。
この目の前の果物をいただいたら、寝る事にしよう。
最後にネオが
「あっ、そこに置いてあるリンゴは毒はないから安心して食べるが良い(念波)」
――って、毒りんごじゃなかったのかよ!
そんな魔女の格好をしてりんごを持ってたら毒りんごにしか見えないだろ。
……お茶目なエルフの長老だ。




