6 アトランティス海峡 ①
さあ、アトランティスに向け出発だ。
天使や悪魔の羽を使って飛んでいけそうだが、アトランティスは初めてだし、いまいち方向が分からない。海の上で遭難したらどうしようもない。確実性をとって、船が一番いいだろう。
極秘裏の出発となるため、未明にケープタウンにあるギルド会館の裏側から蒸気船に乗り込み出発だ。
アトランティス海峡は、潮が早く波も高い。普通の小舟ではたどり着くことは難しいという。途中、海にいる魔物も出るようだ。
ギルド会館が所有するこの蒸気船は、元冒険者が操縦しており、船員も元冒険者だ。大抵の魔物であれば問題なく駆逐する。
真夜中の港を離れ、ケープタウンの灯が遠のいていく。蒸気新幹線とは違い、船のスピードは遅い。到着は早くても12時間後になるという。
――★☪★――
船員が乙女たちに声をかけてくる。
「おねえちゃん。アトランティス行ったことあるのかい?」
「いえ、初めてです。どんなところなんですか?」紅々李が答える。
「おねえちゃん達、この船に乗ってるってことはB級なんだろ? それなりに強いんだとは思うが、B級でもかなり大変なところだぞ。魔物のレベルが他の大陸とは違う」
どんな魔物が出るんだろう? 聞き耳を立てる。
「おれもB級戦士になって3年目かな。アトランティスに魔物狩りに出かけたんだ。見たこともない魔物ばっかりでな。攻略の仕方がわからねぇ。あんまり成果をあげずに帰ってきたな。1週間くらいで音を上げちまったんだが、あそこに行くと1か月定期便来ねえだろ。飢えを凌ぐのが大変だったよ」
結局、魔物は倒せなかったんだ。
「大変だったんですね。アトランティスにはギルド支部はないんですか?」
「あるけど、人がいねぇ。定期便が行くときにギルド職員が一緒に行って、支部を一時的に開くのさ。1日くらい開いて、また定期便に乗って帰ってくるんだ」
「見たところ、かなり若いだろ? 悪いことは言わねぇ。このまま定期便に乗って戻った方がいいぞ」と忠告してくれた。
「帰ったら、おれらと飲みに行かねぇか? 奢ってやるぞ」 と紅々李たちを誘ってくる。
美夜がキッと睨み、「ここまでだな。情報ありがとう、お・じ・さん」
「おじさんはないだろう。オレはまだ30半ばだぞ」
「うちら15才だからな。うちらから見たら十分おじさんだ」 と日葵が笑って応える。
「私なんてピチピチの10才よ」 瑠璃がウインクする。
おじさんが焦った顔になる。
「おまえら十代なのか? それでB級? ギルドの基準下がったのか?
それにしても引っ掛ける相手間違えたよ。さすがに未成年に声はかけられねぇ。ごめん、なかったことにしてくれ」 といって、ささっと奥に引っ込んでいった。
――★☪●――
明けの明星と南十字星が見える朝月夜。やがて、朝焼けになり太陽が昇ってくる。形の違う偃月が白く2つ残っている。今日も1日が始まるぞって感じだ。
港を出て3時間もすると、天気はいいのだが波が荒れてきた。
船底に何か当たる音がする。
……けっこう波にしては激しいな。大丈夫か、この船? ……と思っていたら、やはり魔物だった。
魔物が船に飛び上がってくる。
魔物の「飛び勝男」だ。手には秋刀を持っている。
飛び勝男10匹が甲板に上がって秋刀で切りつける。
船員は難なくそれを両手で挟み、秋刀(魚)をもぎ取っていく。
飛び勝男は尾ひれでキックしてきた。
船員たちは長めの刺身包丁を手に持ち、飛び勝男を軽くいなし、3枚におろしていく。さすが元冒険者だ。
それを見ていた我々乗客に、船員たちは手際よくフォークや箸を持たせテーブルに座らせた。
さらに皿に醤油やポン酢をついで、カツオと秋刀魚の刺身をテーブルの上にタタタタンと置いていく。
「さぁ今日の朝食だぁ。召し上がれ!」と船員は叫び、
あっけにとられて見ていた乗客は、その刺身を一枚、口に入れる。
う…美味い!
取れたての刺身はとても美味い。少しすると、秋刀魚の塩焼きやカツオのたたきが出てきた。そして締めにカツオの荒汁だ。
海の男の料理は大雑把だが、美味しい。今日は朝から満足のいく食事だった。
…… ん? 食事をする場面だっけ? まぁあんまり細かいことは気にしないでおこう。よくあることだ。
――~~艘~~――
大海原を行くことさらに3時間。




