5 天使の羽と悪魔の羽
「意思疎通の石」をうまく使えば、天使の羽がうまく動かせると考えた。
まず最初に、オーガの杖に埋め込まれていた宝石を、ひとつは胸当、もうひとつは天使の羽の中央に埋め込んでみる。胸当を装着し、天使の羽も装着する。
すると、天使の羽が自分のイメージしていた通り羽ばたいた。
そのまま羽ばたかせると身体が浮く。
……第一段階は成功だな。
次が問題だ。
藍の温泉で見つけた石が同じものとは限らないからだ。もったいないが、藍の温泉の結晶石を、真ん中から2つに割る。
それを同じように胸当と天使の羽に装着する。同じように、いやそれ以上に俊敏に反応する。
……良かった。これで人数分作れる。
天使の羽はもともとパーツがくっついているので、ダイヤを埋め込まなくてもいいようだ。
次は防火加工だ。これは難しい。羊毛と松脂は火が点き易い。
少し悩んだが、素材を変えるしかない。
ケセランパサランの針で作った塊を薄く引き延ばし、羽の代わりにする。
薄くのばすと半透明になるが、見た目がコウモリの羽のようだ。
それを装着してみると天使ではなく、どちらかというと悪魔の羽みたいだ。
恐る恐る美夜に聞いてみる。
「気に入らなければ、装着しなくてもいいぞ」
「何言ってるんだ。私だけのためにショウが作ってくれた1点ものじゃないか。気に入らない訳無いだろう。それに龍の羽も似たようなもんだぞ」と言って意外と気に入って受け取ってくれた。
実際装着して空を飛んでみると、天使の羽よりもスピードが出るようで、美夜も喜んでいる。
それを見ていたクロが
「わてもあっちのほうが合ってるにゃ」といってせがんでくる。
余分に作れるのはもう1個だけだったので、見た目もクロがあっているような気がしたため、クロにも作ってあげた。
美夜からはせっかく1点物だったのにと文句を言われたが、戦闘力アップのためだといって、我慢してもらった。
……まああんまり細かいことにこだわる美夜ではないからな。
つまり美夜とクロは天使と悪魔の羽を持つことになる。
でもクロが装着すると、猫耳に悪魔の羽とか、まるでサキュバスのようだ。
結局オーガが使っていた「意思疎通の石」は、2個あるが予備としてとっておくことにした。ダイヤも使わずに済んだが、研究用にとっておくことにする。
アトランティス出発までの時間は、それぞれ羽を装着し空を飛んで訓練をすることにした。飲み込みが早いのは、やはり美夜とクロ、そして瑠璃だ。我々はその後を付いていく感じだ。
風を受け、かなり高いところまで高度を上げていく。
そのまま急降下し、羽を広げ減速する。本当に鳥になった気分だ。
こちらの世界では鳥族の人間はいるのだが、飛行機もないので航空力学はない。自由に飛びまわるには、軽いだけではダメで、ある程度の重さが必要である。推進力となるジェット噴射やプロペラはないので、通常、重さや風だけが推進力となる。
羽ばたくことでも推進力は得られるが、羽ばたくことで魔力を使うようなので通常はグライダーのように飛ぶのだ。
それから飛んでみて気がついたが、上空はかなり寒い。鳥のように全身が羽毛で包まれていれば寒さは防げるのだろうが、我々は防寒具でも着ないといけないだろう。
3日間の練習で、羽を改良し、空も自由に飛べるようになった。この羽を使えば、移動がかなり楽になるだろう。
ついでといってはなんだが、羽をつけていないときは、遠隔操作の応用で、その羽に荷物だけを運ばせることができた。
多少魔力を使うのだが、疲れていて体力がない時は便利だ。
明日はいよいよアトランティスに向け出発だ。




