3 魔窟 モン・スター・ミッシェル ②
今日はクロがやるようである。フォーメーションAから少し間を開けながら横に広がっていき、
「うちら、Lip Magic Generationsにゃ。 略して L・M・G にゃん」
といってピッとポーズをとる。私も腕を突き上げ、人差し指を上にあげ、決めポーズをとらされる。何でも1本指を上げるのは、俺らが一番だぞっていう主張らしい。
トリュフポークの顔がひくついている。
……ここで笑えばいいのに、と私は陰ながら思う。……笑われれば、この恥ずかしいポーズも辞めるのではないだろうか?
このポーズが戦闘開始の合図にでもなったかのように、フォアグラーはジョッキに注がれたビールを飲みながら、攻め込んでくる。ビールを飲んだためか、少しヨタヨタしている。
我々が得物で応戦すると、ビールジョッキを盾がわりに使い、器用に攻撃を避ける。さすがC級の魔物だ。
美夜がそれを酔拳と悟り、太極拳で応戦する。
クロは真似して酔拳で戦っている。なぜかチャイナ服に着替えていた。
……クロは着替えが早いなぁ
なんて思っているとフォアグラーは奥義とばかりに、ジョッキを両手いっぱいに広げコマのように回転しだした。
ビールらしき液体が飛んできて目に入ると痛い。私が太刀で防ぐとカカカカンとジョッキにぶつかった音がする。
攻めあぐねていると、薙刀を持った紅々李がフォアグラーの足をスパッと切る。フォアグラーはあらぬ方向に飛んでいき、自滅した。足が弱点のようである。
弱点が分かれば、あとは簡単だ。
紅々李の薙刀、日葵の槍、蓮月の蛇腹刀でサクサク倒していく。美夜とクロは修行とばかりに剣も持たずにフォアグラーを倒していった。
私と瑠璃は後ろで、魔核とドロップアイテム「フォアグラ」の回収だ。
ビールジョッキに残った液体も研究用に回収する。舐めてみたら、苦かった。
フォアグラーが10匹程倒されたのを見て、中列のキャビアンが出てきた。
盾と槍で普通の戦い方をしてくる。私は刀に反射をセットする。キャビアンもC級の魔物である。何をしてくるのか分からない。
キャビアンに切りかかると、盾で防ぐ。すると、盾から粒状の黒光りした何かが飛び出してきた。それを刀で反射すると、フォアグラーの方に飛んでいって、小爆発を起こした。どうやら爆薬が仕込まれているようだ。
槍もよく見ると、鋭い切っ先と刃の根元に返しが付いており、一度刺さると抜けない構造のようだ。盾と槍だけに注意していると、鋭い歯で噛み付いてくる。みんなも少し苦戦している。爆弾が煙幕のようになり攻撃を仕掛けにくい。
「痛!」
私が噛み付かれたのを見て、紅々李が素早くヒールしてくれる。傷口には念のためキズナオールを噴霧しておく。
盾と槍、小爆弾を躱し、身体に切りつけても堅い鮫肌が致命傷を与えない。だが、キャビアンの鮫肌は砥石のようになっていて、刃物は研がれより切れ味を増していく。クロがフォアグラーを大方退治してきたところで、こちらの戦列に加わった。クロが素早く「漆黒」を発動する。
私は紅々李と碧衣に「身体強化」の口づけをする。
キャビアンは周りが見えなくなり、その場でじっとしている。気配を感じるとその方向に槍を向けてくる。
身体強化された紅々李は、力を入れ薙刀を刺すと、鮫肌を突き抜いた。同じように碧衣は脇差で鮫肌を削っていく。鮫肌がむき出しになると、私の刀でも突き刺すことができた。
日葵と瑠璃は魔核とアイテムの回収だ。キャビアンのドロップアイテムは「缶詰のキャビア」これもドロップアイテムなのか分からないが、缶詰切り用の刃物と鮫肌も回収しておく。大体片付いてきたところで、いよいよこの軍隊のボス、トリュフポークが立ち上がった。…「いざ、決闘だ!」と美夜が目を光らせる。
と思ったら、逃げ出した。豚足いや鈍足だったので、逃げられないようにすぐに周囲を取り囲んだ。刀で切りつけるが、黒いダイヤと言われるだけあって、皮膚が硬い。並みの刀だったら折れていたかもしれない。
しかも、少しでも刀で傷が付くと、紅茶に似た強く高貴な香りが鼻をくすぐる。
――だめだ。これも精神攻撃の一種だ。この香りには逆らえなくなる。
美夜に炎で倒してもらうと楽なのだが、それでは価値がなくなる。
瑠璃の出番だ。
「瑠璃、水柱で攻撃だ!」
「分かったわ。「水柱!」」……トリュフポークが水の中でもがき苦しむ。
やはり、トリュフポークは、エラ呼吸器官はないようだ。
5分もすると動かなくなり、魔核とドロップアイテム「黒トリュフ」と「ロースハム」と「豚足」を残して蒸発してしまった。蒸発というより、水の中だったので多量の水泡となって消えた。
結局、トリュフポークの本来の攻撃方法は掴めなかったが、我らにそんな余裕はない。お腹がすいたのだ。まずは食欲を満たすのが重要である。
――◆□◆――
さぁ、お待ちかねの昼食タイムだ。
「缶詰のキャビア」を缶切り用の刃物で開ける。簡単にサクサク開いていく。
まるでこのために、この刃物があったみたいだ。
缶の蓋を開けると、中から黒い宝石と言われるキャビアが出てきた。皆で指を突っ込み、その宝石を口の中に入れてみる。
口の中で爆発するような美味しさだ。本当に爆発していたりして……まぁ痛くはないから大丈夫だな。
次は、釜戸に鍋を置き、木材に火を点け、水を沸かす。
その辺の畑でとってきた、馬鈴薯や玉ねぎ、人参を入れ、採りたてのマッシュルームを入れてシチューを作る。そこに黒トリュフを香り付けに少しだけ削って入れる。
*畑なんてどこにあったっけ? とは思わないでほしい。この世界にはどこにでも畑はあるのだ。
もう一品。ロースハムにフォアグラを乗せ、さらにキャビアを載せる。そこに黒トリュフだ。美夜に軽く火で炙ってもらって完成だ。
これがフランス料理かどうか、定かでないが、とても美味しく頂いた。
みんな満足したので、今日はこれで冒険を終了する。
ロープを伝って(ロープはまた美夜が回収し)、港に戻ると魔物と戦っている御者がいた。ほとんどの魔物は倒されており、手助けはいらないようだ。
ほとんどが海の魔物だった。戦い終わるのを待って、御者と一緒に船に乗り、サン・モロまで戻る。
帰路の途中、海から眺める夕日がとても綺麗だ。
日本海に沈む夕日や茜色の空も同じ色だったように思う。
サン・モロ市にはギルドパリ支部の支店があるので、支店で今日の収穫を鑑定してもらう。なお、支店は支部ほど大きくはなく、鑑別2箇所と買取窓口と総合窓口が兼用で1箇所のみである。他の施設はない。
合計:11500P(1人1437P) 369万円
トリュフは、少し削って使ってしまったので、安くなっている。なお、端数は研究用にとってある。
それにしても、陳腐な剣が5万円もするとは驚きだ。剣はなまくらでも剣なんだな。明日あそこを通ったら回収しておこう。
*ギルド会員証メモ欄 9月20日 1437P 累計3337P
★今日の成果内訳 合計:11500P(1人1437P) 369万円
マッシロルーム D級 魔核100個(1個35P、5千円) マッシュルーム 200個(200円/個) 計7000P 54万円
ゴブリン D級 魔核50個(1個45P、2千円) 陳腐な剣 2個(5万円/個)
計 2250P 20万円
フォアグラー C級 魔核20個(1個60P、1万円) フォアグラ 15kg(3万円/kg) 1200P 45万円
キャビアン C級 魔核10個(1個75P、5万円) 缶詰のキャビア 8個(20万円/個) 計750P 210万円
トリュフポーク B級 魔核1個(1個300P) トリュフ0.8kg(1kg50万円) 計300P 40万円




