3 魔窟 モン・スター・ミッシェル①
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「 見渡せば 花も紅葉も なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮 」
藤原定家 (新古今和歌集より)
スピンクス解釈:
見渡すと、春の美しい桜も、秋の紅葉も この地にはない。 遥か彼方、海辺にひっそりとある苫ぶきの小屋から見る秋の夕暮れの空は、どこにいようとも変わらない。
魔窟モン・スター・ミッシェルはサン・マロ港から約1時間かけて船で渡らなければいけない。魔窟は回りを崖でおおわれており、登るだけでも厳しいようだ。
ただ、冒険者が集まるので、船がつけられるように整備されている。日中波が静かであれば1時間に1本、船が立ち寄るらしい。
私たちは、都合よく馬車の御者が船も運転できるということだったので、小舟を貸し切り魔窟モン・スター・ミッシェルまで渡った。
魔窟モン・スター・ミッシェルは遠くから見ると、モン・サン・ミッシェルと外観がそっくりである。しかし、大きさが違った。島の大きさが3倍あり、建物の大きさも3倍である。
御者には船を港につけてもらい、浜にあった小屋で休んでいてもらうことにした。
御者も元冒険者で、浜に来る大抵の魔物は退治できるというので心強い。
――~~舩~~――
浜からすこし行くと、崖がある。まずはこの崖を攻略しなければならない。
美夜が指笛をピーッと吹くと、炎駒が空から現れた。
美夜にサン・モロ市場で買ったロープを渡し、崖の上の木に括りつけてロープを降ろしてもらう。
蓮月や碧衣、日葵、クロは獣族なので、それぞれうさぎ、狐、狼、黒豹に変身し、崖をピョンピョン跳ねて登っていく。
そういえば、蓮月や碧衣、日葵の獣姿初めて見たな。かわいい。
ただ、どこかのアニメのように服がイリュージョンしていつのまにか着ているなんてことはなく、獣になると獣人に戻った時、裸になってしまうのであまり人前ではやらないらしい。今回は、変身していそいそと服をリュックに入れ、崖の上で元に戻ってからすばやく着るそうだ。
獣のままだと魔物と勘違いされることもあり、通常は獣人で過ごすことが多い。獣族以外の紅々李、瑠璃、私は吊り下げられたロープを持ち、上へ登っていく。
紅々李のパンツが見えてしまうので、もちろん、私が最初に登る。
全て登りきったら、他の冒険者にここのルートは使って欲しくないので、ロープは外してリュックに入れておく。
意地悪からではなく、冒険者の暗黙のルールがあり、
・近くの狩場に冒険者を見つけたら邪魔しないこと。
・その冒険者の狩場を犯さないこと。
・人工物を使ったら、できるだけ元の状態に復元すること。
になっている。
ただ、冒険者が危険な状態にある場合は、助けても良いことになっている。
逆に言うと、助けなくても良い。冒険者なのだからある程度、命の危険性はあることを知っておかなければいけない。
もし仮に冒険者が鉢合わせしてしまったら、話し合いである。狩りをお互いにする意思がある場合は、共同戦線をはるか、それぞれ単独行動を行うのが普通だが、その狩場を他の冒険者に渡したくないような場合は、くじやジャンケンで済めばいい方で、代表選の一騎打ちが一般的である。なお、生死は問わない。
美夜は、少し様子を見てくると言って、炎駒に乗って上空から偵察を始めた。
少し先に行くと、魔物スライムに出くわした。スライムはどこにでもいるなぁと思いつつ、襲ってくるわけではなかったが、薬の材料に欲しかったので、3匹ほど狩っておく。
草をかき分け、少し奥に入るとゴブリンとマッシロルームが襲ってきた。
ゴブリンは手に小型の剣を持っていて、20匹ほどの集団で行動しているようだ。
マッシロルームはキノコ型魔物で、白い粉を吐き、辺りを真っ白に染める魔物だ。
白い粉には催眠作用があり、吸い込むと意識が朦朧とし、寝てしまうと図鑑に書いてあった。
我々は、忍者がするような首に巻きつけていたスカーフ状のマスクを顔の鼻の上まで引き上げる。マスクはフィルター加工がしてあり、微粒な物質を通さない。
さぁ戦いだ。
空から美夜が木の枝を飛ぶように降りてくる。いつものフォーメーションAだ。
ゴブリンにはあの挨拶はしないらしい。(良かったぁ)
最初にゴブリンと戦う。ゴブリンは小型で動きは素早いが、剣の腕前はさほどでなく、日本だったら初級から中級クラスというところか。
容易く剣をいなし、倒していく。ただ、ゴブリンは数が多い。
最初20匹くらいだと思っていたが、近くに巣穴があったらしく、次から次にと出てくる。だいたい50匹くらい倒しただろうか、じっと見ていたマッシロルームがゴブリンが減ってきたところで、白い息を吐いた。
ゴブリンがパタパタと倒れて……というより寝ていく。
寝ているゴブリンにマッシロルームがへばりつき、ゴブリンが白くなっていく。
やがて、マッシロルームがゴブリンから生えてきて、ゴブリンが干からびてきた。
なるほど、これがマッシロルームの攻撃方法なんだ。
何の知識もないまま戦っていたら、あそこに寝ているのは俺たちだったかもしれない。……マッシロルームの栄養分にはなりたくないな。
ただマッシロルームは、それ以上の攻撃は仕掛けてこない。マッシロルームを縦斬りすると、魔核とドロップアイテム「マッシュルーム」が転がっていく。
倒したゴブリンとマッシロルームの魔核とアイテムを回収する。なお、ゴブリンのドロップアイテムは「陳腐な剣」で、実験用に10本ほどだけ回収して捨ててきた。
――△⊿⊿――
その場所から、空から美夜が偵察してきたので、美夜の案内で先に進む。
しばらく行くと、太陽がちょうど真上に来る頃、遺跡であろうか石造りの建物と階段が見えてきた。
その手前には、芝生のような低い草で覆われている広場がある。その広場に足を踏み入れると、……魔物が現れた。
世界三大珍味魔獣と言われるフォアグラー、キャビアン、トリュフポーク(豚)が一同に会している。特にこの中のフォアグラーはここでしか狩ることができない。この魔窟に来た1つの目的でもある。
ちょうどお昼時だし、もってこいの食材いや魔物だ。みんなよだれを流している。それを見た魔物たちは少し慄いていた。
前列にフォアグラー20匹、中列にキャビアンが10匹、一番後ろにトリュフポーク1匹が鎮座している。
図鑑によるとフォアグラーの容姿は、アヒルやガチョウのような姿だが羽の前に腕があり、ビールジョッキを両腕に持って、なぜかグラサンしている。
キャビアンは缶詰のような盾と缶詰を切るための刃物がついた槍を持ち、鮫のような凶暴な顔で鋭い歯があり、肌は鮫肌で硬そうだ。足や腕があるので、鮫というよりトカゲに近い印象だ。
トリュフポークは、豚のようなトリュフではない。トリュフのような形をした豚の魔物だ。ただ、滅多にでない魔物で、その全容は明かされていない。
このような隊列を組むということは、ある程度知識がある魔物であろう。
・・・と考えていたら、
出た! 出てしまった!!




