2 フランス②
最初は5倍くらいの値段が付いていたそうだが、クロが難癖をつけ値切ったこともあり、正規価格の半分から同等の値段に落ち着いたようだ。それでも、8人分で約500万円の出費だ。そのままの値段で買っていたら2500万円にはなっていたのであろう。とても買える値段ではない。
まあだいたいは値切るのが当たり前で、値札の半分くらいになるのだそうだ。その他、フランスパンや果物の葡萄やミラベル、お菓子を購入し、モン・スター・ミッシェルまでの道中、摘んでいくことにした。
――★★★――
パリからル・マンを抜け、レンヌを経由しサン・マロに至ると近郊の小島にモン・サン・ミッシェルが聳える。モン・スター・ミッシェルは更に海を渡った奥の小島に聳え立つ。モン・スター・ミッシェルはかつて、罪人が投獄されていた牢屋である。魔物が住むにはよさそうな場所だ。
ヨーロッパ風のレンガの建物やお城を眺めながら、ル・マンまでは順調な旅であったが、レンヌに抜けるところで商人が盗賊に襲われていた。盗賊は、山賊、泥棒も含めこの剣神世界では業として認められている。
ただし、世界共通の暗黙の三原則がある。
1つに、裕福な家庭から、1年に1つだけ盗むこと。
2つに、盗んだものは盗んで良い。
3つに、綺麗に盗むこと。
商人が襲われていても、裕福そうだったので無視する。
――だいたいは、冒険者とか用心棒がいるからね、こちらがお節介を焼くほどじゃない。と、思って通り過ぎようとしたら、無抵抗の女性を殺そうとしているではないか!
それだけは止めようとその争いの中に入ってしまった。
「おい、やめろよ」 刀をその女性と盗賊の中にいれ、
「戦う意思がないものを殺めるのは、この国の盗賊には許されるのかい?」と盗賊に聞く。
女性は首を振り、盗賊は女性を睨んだまま黙っている。
盗賊は10人くらいいたが、座って見ていた頭に傷のある盗賊頭が出てきて、
「こいつら、市場の帰りみたいでな、めぼしいもん持ってなかったからさ。この商人の中じゃ一番の美人さんを貰っていくことにしたのさ。オッ、にいちゃんの後ろにいるネエちゃんもなかなかじゃないか。おたくらから1人くれれば、見逃してやるぞ」
そのお頭は、私を剣を突き立て野太い声で脅してきた。
だが、うちの乙女達は何がおかしいのかゲラゲラ笑っている。
「オイ。そこの一番ちっちゃいの! な~に笑ってやがる。こっち来い」
瑠璃が呼ばれた。
「なに? 私が呼ばれたの? 私が一番綺麗ってことね」
「盗賊のおじさん。 私に勝ったら、盗賊になってあげてもいいよ」
盗賊頭が瑠璃に剣を向けて
「違げぇよ。一番笑ってんのがてめえだ。それに盗賊じゃなく、奴隷にして売るんだ!」
「ギャハハハハハ。売るんだって~ おにいちゃん戦っていい?」
「まぁお前がいいなら」他のみんなもウズウズしている。
「じゃ、まとめてでもいいけど、一騎打ちだよ。そっちは誰が出るの?」
盗賊頭が指名したのは、体躯のいい2m近い身長の男だ。ハンマーを持っている。
――まあ瑠璃なら、オレより強いし大丈夫だろう。いざとなれば――
「殺すなよ。特に顔は傷つけるな」 盗賊頭が子分に命令している。
「よし、やれ!」 と戦いの合図だ。
男は、ハンマーの頭の部分を手に持ち、柄の棒で叩きつけてきた。
瑠璃は、スッと下がり、「水柱!」と叫ぶ。
「なに! 水使いだと」 お頭が後ずさりする。
男は、水柱の中に閉じ込められ息ができない。
もがいて外に出ようとするが、瑠璃がそのまま水柱を男を中心に移動させる。
お頭が慌てたように、瑠璃に大刀で切りかかってきた。
「オイ! 無粋なことするなよ」
即座に美夜がスッと動き、お頭の喉元に火炎槍をあてるとお頭の顎髭が燃え上がった。
「熱っち!」
何もできない水の中の男は、水柱の中を上へ泳ぎだした。
「すごいもんだなぁ。よく息が続く」と感心してみていると、水柱はどんどん上へ高くなり、男は100mは上へ登っていっただろうか・・・・・・
瑠璃は、キュッと拳を握り、水柱を消し去る。
男はそのまま落下した。
「ぎゃふん」
我が乙女たちは、お腹を抱えて、苦しそうに笑い転げている。
「聞いた? ぎゃふんだって・・・し、死ぬ! 助けて キャハハハハハハッ」
「そんな漫画がみたいな声初めてだよ~。だ、ダメ。キャハハハハハハッ」
私も、危なく笑ってしまうところだった。
男は気を失っている。……盗賊たちは青冷めていた。
「し、失礼しました~」気絶した男を引きずって帰るようだ。
そんな余興もひと段落し、モン・スター・ミッシェルへの旅を続けることにする。
商人の女性(商人長だったらしい)から、
「今何もないのでお礼できませんが、もし良かったらここに来てください。私はこの先のサン・マロに住んでます」といって名刺をくれた。
名刺には「Eva Green」と紋章、住所が書いてある。
――魔窟の帰りにでもよってみるかな。
途中お昼をはさみ、午後4時くらいに港に到着した。一悶着あったし、すこし時間がかかってしまった。
モン・サン・ミッシェル(本物)はこの港からほど近い小島の上に建っている。潮が引くと歩いて行けるそうだ。ひとまず、宿に行き荷物を預けてきた。少しサン・マロの街でも散歩しよう。
サン・マロを皆でゆっくり散歩して、港の方に行くとモン・サン・ミッシェルが見えてきた。
ちょうど夕日に照らされ、モン・サン・ミッシェルがシルエットとなり、淡い藍色の海が波のリップをオレンジ色に輝かせていた。




