6 「紅孩児」①
(1)紅孩児
次の日、ギルド会館で掲示板を見てみると、
F級の依頼で農作業1日1人につき500元、5Pの仕事があった。
E級には建設作業1日1人につき1000元、10Pの仕事が依頼されていた。
文字を読めるというのも大切だということが分かる。ポイントは少ないが、魔物を倒すリスクを考えれば、1元=15円くらいだから報酬はけっこういいように思う。
胡桃たちには、あまり実力がないF級やE級の人には、このような仕事もいいのではないかと勧めた。
あまり同じ場所で、同じ魔物を倒すのも、魔物の生産が追いつかない可能性がある。あの場所には、1週間に1回だけ行くように話した。鼠算ということもあり、火鼠も増殖速度は速いだろう。
今日はF級には農作業に就くようにしてもらった。DとE級の胡桃たち6人は、私たちに付いてくるよう話した。実際の戦い方を見学させるためである。
また昨日と同じように、馬車で移動する。馬車は10人乗りなので、胡桃たちには1番安い馬車を借りてもらって移動する。
また、スライム川を飛び越え(胡桃たちは泳ぎ)、襲ってきた火鼠は軽く刀で蹴散らし(胡桃たちは魔核と齧歯を拾い集め)、昨日の山頂入口までやってきた。
すると、昨日会った炎駒がやって来て、美夜に懐いている。背中に乗れとばかりに、尻尾を振っている。美夜もうれしそうに、炎駒の顔を撫で、背中に乗った。胡桃たちはおっかなびっくり見ている。
お昼前には、あの城壁前に着いた。もうすぐお昼だし、「焼豚」出てこないかなぁと待っていると魔物の「焼豚」約50匹と「焼鶏」約100匹が右と左から出てきて、回りを囲まれた。我々は、フォーメーションOの型となり、中心部に胡桃たち6人を置いた。
「フッフッフッ」 ……美夜たちは不気味に笑った。胡桃たちは舌なめずりするクロたちを見て恐れ戦いている。
ここの「焼鶏」は空を飛ぶ。空を飛びながら、炎の玉を吹いてくる。クロが前方の焼豚に「漆黒!」を発動する。蓮月は月光の矢で焼鶏を射抜く。
胡桃たちは、射抜かれて落ちてきた焼鶏に止めを刺し、魔核とドロップアイテム「ヤキトリ」を拾い集める。
焼鶏は蓮月だけで対応できそうだ。他の者は重量級の焼豚を相手にする。
疲れ始めた焼豚を次々倒していく。
20匹程倒したところで、焼豚たちは城壁に逃げ帰った。
胡桃たちは焼豚の魔核と「チャーシュー」を拾い集める。
この間、約30分の攻防であった。
城壁を右側に回り込んでいくと、門があった。かなり丈夫な黒い門だ。
簡単に壊れそうもない。今日は城壁の中まで入って、ボスを仕留めるつもりで来たのだが……
とりあえず腹ごしらえだな。
昨日と同じように、昼食の用意をする。今日は「チャーシュー」の他に「ヤキトリ」もある。昨日の「葉っぱ」は調べてみたら、青梗菜だった。
たぶん、ここのボスが作らせていたものだろう。食べ物で良かった。
お昼を作る手際を見て、胡桃たちは目を丸くしていた。
……水……火……いとも簡単に出している。まあ普通はできないことだ。
「ヤキトリ」は竹串で刺し、炭火で網の上で塩をかけて焼く。
「その網と炭どっから持ってきたぁ」とか突っ込みたくなるが、乙女達は美味しいものには目がない。こういう準備は怠らないのだ。
胡桃たちは食べる量や美味しさにも、目を丸くしていた。
普段は質素なものを食べていたのであろう。あんまり食が進まないようだ。
むしろ逆か? 我々の食べる量が多すぎるのか? でも乙女たちのプロポーションはいいけどね。
――□●△――
一通り食事を済ませたところで、城壁をどうやって破るか考えた。
美夜が炎駒に乗って城内に乗り込むのでは面白くない。たぶんそのままボスを殺ってしまう。
日葵に「稲妻」で城内に雷を打ち込んでみたらどうかと提案された。
確かに、それに驚いた焼豚たちが外に出てくるところを、中に入っていけばいいかもしれない。
ただ、闇雲に打ち込むと、我々のところに雷が落ちてくることも考えられる。
――前から考えていたのだが、それを実戦で試してみるか。
まず瑠璃に城壁の周りに「水壁!」を作らせる。
それを美夜に水壁を囲むように炎で包むよう指示する。
「円炎!」
水は水蒸気となり、城壁の上に黒い雲がもくもくと出来上がっていった。
その雲を狙って日葵に「稲妻!」と叫ばせた。見事に中心部に雷が落ちた。
城壁の内側に豪雨とともに雷が落ちる。
やった! 成功だ。
この雷雲を作ったのには意味がある。雷は雲のある場所で発生しやすい。また、単純に「稲妻!」というだけだと、無の状態から稲妻を作る必要があり、魔力をかなり使う。雷の元になる雷雲があれば、魔力は少なくて済むはずだ。一石二鳥だ。それに無の状態から作った雷はどこに落ちるか分からないからね。
それに気づいたのか、日葵は「稲妻」と軽く言うだけで、雷を落とし始めた。
「いなづまぁ~」 ピカッ ズドーン!
「い」ズドーン!
「な」ズドーン!
「づ」ズドーン!
「ま」ズドーン!
あれ? もしかしてイメージするだけで落ちる?
日葵は簡単に稲妻が落とせるものだから、座って仲間とおしゃべりしだした。
「なんか、頭で考えるだけで『稲妻』ってできるみたい」
「それっ」 ズドーン!
「そういえば、ショウがね」……「ほいっ」 ズドーン!
「私たち、チャイナ服着てるでしょ」……「はい」 ズドーン!
「チラチラ、太ももとかあそこ見てるんだよ~」……「フフ」 ズドーン!
紅々李が付け足す。
「そうそう、みんなのパンツ見てたよ」
オイオイ、何をおしゃべりしてる。確かに気になって見てたけど。……しょうがないじゃないか男の子なんだから
「Hだよね~」……「H」 ズドーン!
――ぐさッ! おれの心にも響いたぞ。
クロが「そんなに見たいにゃ? ほれ」とパンツを見せてくれる。
いやいやそういうふうに見せられると、お色気というかチラリズムが。。。
「あははは」とみんな笑ってる。
「ん」 ズドーン!……もしかして無詠唱でも落とせたりして?
胡桃が笑っているのを見て
「みんな楽しそうに戦ってるんですね。戦いって辛いものとばかり思ってました」と微笑んでいる。
今日は特に楽しそうだけどね。……少し雲が薄くなってきたな。
「瑠璃、美夜、雨雲を作ってくれ」と言って、水壁と円炎で雷雲の出来上がりだ。
「みんなにやってもらうことがある。ちょっとキスするぞ」
「キャー! ショウのH」と逃げるふり?をする彼女たちを捕まえ、稲妻をイメージし、額や手、首筋、背中にキスをした。
「みんなも、『稲妻』唱えてくれ」
クロが「稲妻!」というとズドーンと雷が落ちた。
紅々李や碧衣達も続く。
ずどーん。ズドーン。ずどーん。ズドーン…………
みんな面白がって詠唱していく。 ズドーン。ずどーん。ズドーン……
「ようし、今度はみんなで揃って言ってみよう。」
「はい」
「いなずまぁ!」 チュドドドドドドーーーーン
おおーっ すごい威力だ。これが集中砲火ってやつだな。……たぶん、我々の火力では最大火力だと思う。もう1回やってみよう。
「そ~れっ」……「いなづまぁ(ショウの妻)」 チュドドドドドドーーーーン
何か変な雑音があったような……やっぱりすごい。
私の魔力がどんどん減っていくのが分かる。
でも、全員にスキル伝達するとこんなに減るんだ。。。もつのは10分くらいだな。
少し、魔力でも補充するか。
魔力グミを口にした。……10%くらい回復する。
(市販の魔力補充薬をグミにしたものだからな。こんなもんだろう。)
「体力か魔力を回復したいものはいるか?」
日葵が「魔力ほしい」といったので、魔力グミをあげた。
胡桃がおずおずと「体力ください」といったので体力グミをあげた。
口をグニグニしている。・・・少し驚いたような顔をして、
「これ、面白い食感ですね~初めてです。なんか体力が漲ってきました!」と驚いたように胡桃がいってきた。さらに、
「それにしても皆さん、すごいスキル持ちなんですね。全員が雷落とせるとかそんなチーム見たことないですよ」




