2 ケセランパサラン②
「水!」
と、瑠璃が叫び、手にあふれた水で顔を洗っていたら、その水がケセランパサランの針にかかった。
あれだけ硬かった針が、羽毛のように柔らかくなっている。……これは!?
我々はギルド会館の研究室を借りることにした。
魔核やアイテムを鑑定に全て出さなかったのには理由がある。鑑定に出すと、ギルド会館では買取か鍛冶屋による加工しかできないためだ。
ある程度時間をかけて調べるためには、それらを残し研究する必要があった。
針についていた粘着性の緑の液体は、針の先端から飛び出すようになっていた。その液体1滴をシリンジに吸い取り、研究室の実験用マウスに注射する。
マウスは数秒で動かなくなり、痙攣して死んでしまった。麻痺性の毒であると思われる。
『麻痺性の毒』……これは私の前世の知識が一番生かされるところだ。
そのまま武器として毒矢のように使ってもいいが・・・・・・
もう少し研究してみよう。
固くなっている針の根元を水で洗ったあと、針の中心に穴が先端まで通っているので、針の先端に瓶を置き針の根元から息を吹き込むと先端から毒成分を瓶に集めることができた。
毒成分を、数滴スポイトでとり、100倍、1000倍と薄めていく。
ヌードマウスの皮膚に、トオガラシ成分を塗るとヌードマウスが痛がって走り回る。そのヌードマウスに、1000倍に薄めた毒成分を塗ると、ヌードマウスは大人しくなった。痙攣して死んでしまうこともない。
次に私自身の皮膚にも、トウガラシ成分を塗り、同じ実験をする。痛みが引いていく。皮膚がおかしくなることもない。
――これは! 鎮痛薬として使えるぞ。
ケセランパサランの毒の原液は、「ケセランパサラン毒」とラベルに書いて、瓶に貼って、瓶を厳重な箱に入れてカバンに入れた。
針は水で軟化し、乾燥させると硬質化する。熱で炙ると強く固まり、水をかけても硬いままだ。針に残っている毒成分がないように入念に洗浄した。
ケセランパサランの魔核を勿体なかったが、実験のため飛ばないように袋の中に入れて押さえ砕いて粉状にした。粉状にしてもふわふわと浮き上がっていく。
粉状にした魔核と柔らかくなった羽毛状の針をスライムゼリーで混ぜ合わせ、数個の塊を作った。その塊も空中に浮かんでいるが、上に登っていくわけでもなく、目の前に静止してふわふわ浮かんでいる。
『これは面白いものができるぞ』
――♥♠♥――
鍛冶場にやってきた。立花家の家紋のある小十郎のところだ。
私は仲間の身を守るため、防具を作りたかったのだ。
特に大事な心臓を守る強固な「胸当て」だ。みんな大きさが違うので、胸当ての大きさを決めるため、しっかり触って大きさを決めていく。
――けっしてふしだらな気持ちからではない。
小十郎もやりたそうに見ていたが、それはダメだ。
。。。もう一度言う、けっしてふしだらな気持ちからではない。
小十郎はヨダレを垂らして見ている。工賃ははずんだ。小十郎には守秘義務があるはずだ
。。。さらにもう一度いう。けっしてふしだらな気持ちからではない。
乙女達は、防具を作るためとあって、もじもじしながら協力してくれた。
クロは別にいいよ~みたいにドンと胸を前につき出してきたが、他のメンバーは乙女の恥じらいもあって、「ショウだけだよ」とかいいながら採寸させてくれた。
――これが役得ってやつだな。
。。。何度も言う。けっしてふしだらな気持ちからではない。
やっぱり柔らかい。へ~微妙に違うんだな~大きさだけでなく硬さとか形とか。採寸し、だいたいの形を決める。
研究所で作ったケセランパサランの塊を一人ひとり交互に触りながら大きさ・形を正確に整えていく。
今後の成長も考え、少し大きめの胸の大きさにして、四隅に紐を通す穴を開けた後、焼き締めを行う。小十郎も炉の温度や時間を調節してくれる。
だいたい出来上がったところで、一度胸に当て大きさを確認する。
少しだけ余裕を持たせ、研磨し仕上げる。出来上がりだ。
ほかの部分も作りたかったが、材料の関係上、今回は胸当てだけだ。
できあがった胸当てを実際に女子達に装着してもらう。女子にはかなり好評で、黒く焼成された胸当てはまったく重さがなく、剣を振り回しても邪魔にならない。
これなら弓を引いても胸に当たらず、痛くないだろう。弓矢使いは今のところいないが――
小十郎にも「これは高く売れるぞ。」と褒めてもらった。小十郎にはこれからも世話になるであろう。自分用の胸当ての分だけとって、余った塊を全てあげたらすごく喜んでいた。
「やったぜ! これで1000万は儲けられる」
最後に自分の胸当てを作る。上半身裸となり、ケセランパサランの塊を胸に当て伸ばしていく。あとは焼き締めを行い出来上がりだ。実に簡単なものだった。
女子も自分自身でやればよかったんじゃないかと、思う者がいるかもしれない。
いや、違う!
女子の身体はデリケートなものなのだ!
細心部まで注意を払うのが男子たる勤めだと思う。
最後にもう一度だけ言う。。。けっしてふしだらな気持ちからではない!!




