2 ケセランパサラン①
遊技場を遊びつくして満足した仲間と合流し、少し稼ごうということで富士の魔窟、樹海の中の洞窟に向かった。
富士の魔窟は数十箇所あるそうで、適当に歩いて日葵を先頭に感に任せて歩いて行った。
ギルドショップ内に地図が売っていたので1つ買って、地図を見ながら歩いているが、その地図にある魔窟とは全く見当違いの方向に歩いていく。9月とはいえ、幾重にも生い茂った常緑樹から差し込む太陽の日が暑く、シャツに汗がまとわりつく。
……まぁ日葵が嗅ぎ分けているのだから、何かあるとは思うが……
鬱蒼とした樹海の中をしばらく歩いていく。すると日葵が、
「他の洞窟、冒険者の匂いでいっぱいだったからさ、死臭がする方に歩いてきたんだ」
――死臭って、オイオイ
少し先を眺めると、地図にはない洞窟を見つけた。洞窟の入口には、崩れかけた古い鳥居があり、その周りには冒険者であったのだろう白くなった骸骨が何体か転がっていた。……この臭いをかぎ分けたのか!? すごいな。でも注意しないと・・・・・・
私はおっかなびっくりだが、乙女たちはあまり気にしないで洞窟の中に入っていく。洞窟に入るとこれまでの暑さとは打って変わって冷ッとしてくる。半そででは寒いくらいだ。洞窟は高さはあるのだが道が狭く、1人通れるくらいの幅しかない。
フォーメーションIで進んでいく。
洞窟で薄暗いため、クロを先頭に、中心部が私と紅々李、殿は美夜でその間をほかのメンバーで埋めている。フォーメーションIは、一直線の陣営だ。
少し奥に行くと、人が100人は入れるであろう広間を見つけた。広間の上から光が漏れ、雑草が生い茂り、苔が生えた小川がいたるところに流れている。
岩の上を飛びながらその小川を辿っていくと、滝壺があり細い滝が流れ落ちている。
その滝を受けるように巨大な水楢の木が生い茂っている。
巨大な樹木の葉は、水しぶきを受けてキラキラ輝いている。
その根元にはくり貫いたように祭壇があり、その水楢は祭壇を守るように覆いかぶさっていた。
きっと何かの神を祀っていたものと思われる。祭壇の周りの壁には、緑色のあざやかな苔がびっしりと生えている。
その祭壇を調べようと思い、手を触れたら、苔が変化し魔物が飛び出てきた。
「キャッ!」
紅々李が尻餅をつき悲鳴を上げる。
宙に浮き、ふわふわ飛んでいる。大小さまざまあるが、形は同じ球体だ。
周りが緑の羽毛のような毛で覆われている。
刀でつついてみると、毛が逆立ち直立した。しかもかなりの硬い。大きいものでは直径2mはあるだろう。刀や薙刀で切っても、ふわっと逃げていく。
そうこうしているうちに、その魔物に回りを囲まれてしまった。だんだんと間合いを詰めてくる。私は焦りとともに冷汗を流した。
――このままでは、全員串刺しになってしまう――
美夜が叫ぶ。
「フォーメーションO・・・ショウ、紅々李を中心に回りを囲め!」
私と紅々李を中心に、少しずつ右回りで回転しながら移動する。
「日葵、今だ! あの洞窟の方向に稲妻を放て!」と私が指示する。
「稲妻!」 眩い雷光とともに雷鳴が轟く。
稲妻は思っていたところとは違う所に落ちた。繰り返し日葵が叫ぶ!
「稲妻!」
稲妻が落ちたところにいた魔物は焼け落ちていく。
――かなり強力な技だ。が、思ったところに落ちないとは、・・・・・・もしかしてここにも落ちる?
日葵がまた繰り返し叫ぶ。日葵は苦しそうだ。
「稲妻!」
何度目かの日葵の『稲妻』が炸裂し、稲妻が巨大な水楢に落ちるその瞬間、祭壇が光り輝く。続けざまに稲妻を祭壇が反射し、洞窟の入り口に向かって稲妻が走った。
一直線にそこにいた魔物は焼け落ち、洞窟に向かって道が開けた。
「よし。今だ! あそこに洞窟の入口がある。あそこに逃げろ!」
ダダダダダッ――
私が先導を切って走り出す。……というか先に洞窟に逃げる。
美夜が殿だ。全員、洞窟に入ってそのまま少し奥に入る。
魔物も一緒に追いかけてきた。
それを見た美夜が、その魔物に向かって、手の先から「豪火!」を放った。
美夜の手の先、洞窟の中に火の渦が燃え広がる。
一網打尽。洞窟に入った魔物は焼け焦げになり……消えた。
――逃げ切れた? たぶん大丈夫だ――一安心する。……せっかくだ。魔核を持って帰らないと。美夜がさっき入ってきた洞窟の入り口を警戒している。
地面には、鋭い針が落ちていた。でも、魔核が見当たらない。
クロが天を仰ぐと洞窟の天井に張り付いている魔核を見つけた。
それをクロや蓮月が壁を利用して上へ飛び上がり、器用に袋に回収していく。クロと蓮月がフワッと地面に降りてきた。
随分身軽だなと思って、魔核を回収した袋を預かると浮くような感覚がある。魔核を入れた袋は、手を離すと上へ天井へと登っていく。
さらに20個くらいの数を回収し、リュックに入れると足が地面から離れてしまった。
どうやらこの魔核は、浮力を持っているようである。
――これを利用すれば、面白いものができるんじゃないか?
ここにある魔核は、全て回収し、それぞれのリュックに入れてもらった。
地面を見ると、緑の液が粘着した針が落ちている。
これも何かに使えそうなので手袋をはめ、できるだけ回収した。
もと来た道を戻り、洞窟を出た。祭壇を離れたためか、これ以上追ってくる魔物はいない。
最初に見た骸骨を見ると、針で刺したような小さな穴が無数に空いていた。さっきの魔物に殺されたのであろう。たぶん地図に載っていなかったのは、ギルドまで帰還できたものがいなかったからだと思う。
我々はこの秘密の洞窟は伏せておくことにした。
祭壇もあるし、あの魔物はなんとなくあの祭壇を守るための魔物だったような気がしたからだ。
――◇◆◇――
ギルドに帰り、持っていた魔核の半分を鑑定してもらった。残り半分は、研究用だ。たいしたものでなければ、後で鑑定窓口に出せばいい。
しばらく鑑定に時間がかかったが、鑑定士が図鑑で調べ、ケセランパサラン亜種緑という珍魔獣の魔核であることがわかった。強さはD級だが、レアな魔物ということで大きい魔核はC級で取引されているらしい。
魔核ポイントは全部で3615ポイントついた。8人で割ると1人451ポイントである。
魔物の魔核のポイントは、
F級が1~9、
E級が10~19、
D級が20~99、
C級が100~499、
B級が500~2499、
A級が2500~9999、
S級が10000ポイント以上である。
上位級への昇格は、累積ポイントで決まり、
FからE級へは100ポイント以上、
D級は250ポイント以上、
C級は1000ポイント以上、
B級は1万ポイント以上、
A級は10万ポイント以上、
S級は100万ポイント以上で昇格する。
なお、C級以上は、2段階以下の魔物を倒しても、ポイントは加算されない。例えば、C級になるとE,Fクラスの魔物を倒してもポイントされない。
鑑定とともに提出したギルド会員証が戻ってきた。
級がDとなり、メモ欄には月日とポイント数が記入されている。
メモ欄 剣神歴5030年9月3日 451P 累計451P
我々は、入会初日でD級に昇格してしまった。
あれでも、強さD級なんだ。C級くらいはあるかと思っていたのに……
少しがっかりしながら、あの魔核と針をうまく使えないか考えていた。
ケセランパサランが出たという噂はギルド内で広まり、どこで見つけたのかと他の冒険者から問い詰められた。
「あっちの方の樹海で遭遇したけど、どのへんだったのか良くわかんないです」 そう言って、適当な方向を指差した。冒険者たちはこぞってそっちの方角に向かっていく。
ギルドでの買取価格は、魔物の級やポイントとは比例しない。希少性も加味されるためで、レア魔獣のケセランパサラン亜種緑は、大きい魔核で100万円、小さい魔核でも20万円した。合計で2000万円くらいになった。
どおりで冒険者の目が変わるわけだ。冒険者ってこんなに儲かるんだろうか?
でもあの魔獣、倒してもうまくやらないと魔核は空に飛んでいくんだよね~
みんなで1人200万円ずつで、余ったお金は共通経費用にする。
現金で持ち運ぶのは窃盗に合う可能性があるため、当面の現金だけを残し、総合窓口で貯金した。貯金すると貯金額が会員証の貯金通帳欄に印字される。
なお、ここの貯金は利子はつかない。しかも預ける経費として、1年3%の費用を取られる。貯金は、ギルド会館なら世界中どこでも降ろすことができ、ギルド会員証を見せることでキャッシュカードとしても利用できる。
会員証に記載されている貯金額以内ならギルド登録店(だいたいの店舗が登録されている)で利用できる。
登録店は会員証の番号とサインでギルドに請求する仕組みになっている。
もし、多くの店舗で利用し、請求額が貯金額を超えた場合は、ギルドで法外な利息を付けるので無理な買い物をする冒険者はまずいない。
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