第0章 天界 初1日
主な登場人物
主人公:ショウ
・殿様カエルのノブ
・黒猫のクロ
・アン
第0章 天界
金烏玉兎
茜色に染まった雲海に低い太陽と金色の月。
――そこは天界。
白く棚びく雲。遠くを眺めると雲の淵が金色に染まっている。
気が付くと、私はその雲の上に立っていた。
周りを見渡すと、今日亡くなった人だろうか、5000程の人間と動物が周りをキョロキョロしながら佇んでいる。
驚いたことに、猫や犬などの動物も雑多な人の言葉を発している。
喧騒渦巻く中、頭の中に響いた声があり、それぞれ誘導させられている。
「――ショウくん。……あなたはK組に並んでください」
私の名は「ショウ」という。苗字はなぜか記憶にない。
ショウという漢字もわからない。
周りの人や猫にも聞いてみたが、苗字は思い出せないらしい。
良かった。ボケたわけではなかったらしい。猫に苗字があるのかは微妙だが。
周りを見てみると、皆、妙に若い。20歳くらいだろうか。
自分はどうなんだろうと、手や身体を見てみると20代の頃の皮膚、体型なのに気がついた。
たぶん顔も若返ったんだと思う。
私は言われるままに、K組と表示されている空中に浮かぶ文字のところに並んだ。
K組は、みんなきれいに整列しているが、R~V組あたりはただ集まって寝転がっているのが多い。
たぶん集まりもしないのは、W~Z組なのだろう。棒のようなもので突かれて、集められていく。
移動していると、「ゲコッ」と声がした。
なんと、カエルを踏んでしまったようである。
「気を付けてケロ」とカエルに注意され、慌てて謝まる。
「申し訳ないでごわす」
なぜか、鹿児島弁になってしまった……だがしかし、九州出身ではない。たぶん。
カエルは、軽く会釈しB組の方に向かっていった。
へェ~あのカエル、見かけによらず偉いんだなぁと思いつつ、きっと『殿様カエル』に違いないと心に刻んだ。
クラスはA~Zまで26組あり、
Aの方が上位クラスらしく、A~E組までは椅子が用意されており、その他は立って並んでいる。
A組は特別クラスみたいだ。10人くらいしかいなかった。
しばらく雲の上を歩いていると、私の隣にはいつの間にかあの黒猫が一緒に歩いていた。
私は思わずその黒猫に「ありがとう」と言った。
「なんだ。 結局助けられなかったのかにゃ?」と黒猫が聞いてきた。
「なんかごめん。やっぱり君が助けてくれたの?」
「んにゃ そういう運命にゃ」
なんか、この黒猫を見るとなぜか胸が熱くなり、そしてとても申し訳ないような気がした。
皆がだいたい整列したところで、空中に浮かぶ矢印模様の方向に行くように誘導される。
しばらく歩いた先には、500人ほどが入れる階段状の教室があった。
「まるで大学の講義室みたいだな」なんて思っていると、教師風のメガネをかけた天使がやってきた。
なぜ、天使かって?――背中に白い羽と輝々とした輪を頭の上に浮かべている。
……見るからに天使である。
と、思っていたのに……
「天使見習いのアンで~す。今日から初7日まで皆さんの講師を務めます。よろしくお願いしますね」
なんと! 見習いだった!! 天使だと思っていたのに
――見習いもいるのか―― 見習いに教わる俺達って……まぁそんなもんか
「今日は、死んだばかりの皆さんにィ この世界のことをお話しまーす。
まず、一番偉いのが、創造神さまでーす。
創造神っていうと、この地球や世界を作った人だと思った人!」
椅子に座っているほとんどの者が挙手する。
「ブーゥ 違いマ~す。創造神さまは、この世を創っていく神で~す。おわかり?
その下におわす方が、数多の神々でース」
前に座っていた人が、手を挙げて質問した。
「数多のって、どのくらいいるんですか?」
「フフ。。。わかりませ~ん。いっぱいいるから、数多なのです。
でも、神議会に奉席される神は10人です。その神が、各地域の代表になりまーす。まぁ現世のサミットみたいな感じかな。
神の下には、大天使や天使そして天使見習いなどがいま―す。それから他にも研究生とか助手、なんちゃって天使とかいるけど、皆さんにはあまり関係ないので覚えなくてもいいで~ス。
ちなみに、天使はこの世界の唯一神である創造神の配下で3000人くらいいま~す。見習いは1万人くらいでーす」
また、前の人が質問した。
「悪魔とかはいないんですか?」
「いい質問ですね~。この世界では、神が強いので、ほとんど悪魔は出てきません。でもーぉ、ほかの世界では悪魔や魔物、ゾンビが出てくるところもあるみたいで-す。怖いですね~」
この世界では? 《《ほか》》の世界? と思っていたところで、
「今日はここでおしまいでーす。死んだばかりで疲れていると思いますが、皆さんは霊体なのでそのままの姿勢で寝ていただいて大丈夫でーす。ゆっくり寝てくださいね」
見習い天使が戸を開け出ていこうとしたところでこちらを振り向き、
「自分のお葬式に参加したい方もいると思いますから、授業が終わったら現世に戻ってもらってかまいませーん。
でも、霊体ですから分をわきまえてくださいね。覗き見とかダメですよー。
帰ってきたらそれもカウントされますから。
丑三つ時には天界に戻ってくるようにしてくださーい。
戻ってこないと地縛霊になっちゃいますよー 」
――地縛霊とかなりなくないな。
「皆さん死んだ場所分かりますか? ここに来ると前世の記憶が薄れていくんですね。 わからない人は案内係に聞いてくださーい。
それから、地上に戻ると自分の名前を思い出せると思いますが、また天界に戻ってくると忘れるので気にしないでくださいねー。
創造神様は、できるだけ前世の記憶を持たせないようにしたいみたいでーす。あんまり皆さんには関係ないことですねぇ」
――そういうことか。だから苗字を忘れてたんだ。 ん? カウントってなんだ?
「それでは、皆さんおやすみですゥ」
そう言って、見習い天使のアンは教室を出て行った。
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