18 卒業旅行
しばらくして、時は過ぎ、
皆、着々と準備を済ませ、寺子屋最後の夏休みがやってきた。ちなみにこの世界では卒業式はない。最後の夏休みは、皆で卒業旅行に行くことにした。梅村先生も同行している。
まず、京都に行くことにした。蒸気新幹線の中で、皆に私が作った得物を渡した。全てに私の血液を練りこんでいる。各自に渡した得物は次のとおりだ。
碧衣: 脇差とキセル型の吹き矢
蓮月: 蛇のように伸びる蛇腹刀
日葵: 丈夫な槍
クロ: 短刀と手裏剣
紅々李: しなやかな薙刀
美夜: 太刀
瑠璃: 脇差
みんな思い思いに喜んでいる。苦労して作った甲斐がある。
梅村先生にも、私がカニグラタンの魔核で初めて作った太刀をあげた。
卒業生から貰う記念の刀だと言って喜んでもらえた。
京都駅につき、まず馬車で稲荷大社に向かった。京都に来たのには訳がある。
娘のヨウビに彼女《《たち》》を紹介するためだ。
例に倣って参拝する。
「クロさんお久しぶりです」
神使はお参りに来た人と、話すことができる。
通常は神の御言葉を伝えるためだが……
「にゃ? その声はどっかで聞いたことがあるにゃ」
「父上のショウの娘、白狐のヨウビです」
「すっごい久しぶりだにゃ」
「猫むすめさんの時には、お世話になりました」
「よく民家に忍び込んで、一緒に魚食べてきたにゃ」
「そうですね~ また父の世話を焼いてくれてるんですね」
「このことは黙ってるにゃ。まだ、知られたくないにゃ」
「分かりました。まだ2人だけの秘密としておきますね」
なお、この会話は、ショウも含めほかの人には聞こえていない。
「お父上、こんにちは」
「おはよう。ヨウビ。今日はカップラーメンを持ってきたぞ」
お湯を注ぎ、3分待つ。・・・それをお供えとして神棚にあげる。
「熱いから気をつけろよ。」
「うん。じゃ早速食べるね」 スッとカップラーメンが消える。
それを見ていた周りの仲間が驚く。
「神棚にラーメンあげるとか罰当たりだな~って思ってたら、ラーメン消えたぞ。どんな魔法使ったんだ?」 と日葵が聞く。
「ここの神様はおれの娘なんだ」
「え~っ いつの間に子作りしたの? 悪い虫がつかないように見張ってたのに」
「前の前世の時だよ。オレ以前は狐だった時があるんだ。その時の子供」
「先越されたかと思ったよ~」 皆が安堵の表情を浮かべる。
ヨウビから念波がとどく。
「ご馳走様でした。美味しかったです。やはり日本のラーメンは美味しいですね~」
「ところで父上、こんなに彼女さんいらしたんですか?」
「う、うん。なんか成り行きでね」
「だから、気をつけないと……こちらの世界の女子は、肉食系が多いんですよ」
「皆さんのスキルも貰っているようだし、油断も隙も無いですね~」
「なんか、ぐるぐる巻きにされて、強制的にね……」
「父上、気付いていましたか? 父上の『Lip Magic』は貰うだけじゃないんですよ。与えることもできるんです」
「えっ!? ほんとに! 気が付かなかった。なんか条件とかあるのか?」
「あります。まず、父上が好意を寄せている方でないといけません。
それから、付与できるのは1人につき1つで、時間制限があります」
「時間制限ってどのくらい?」
「今の父上の魔力だと約1時間ですが、複数人に付与すると、等分されます。例えば、2人にスキルを与えると1人30分になります。それに与えたスキルの魔力は父上から供給されますので、父上の魔力が多いといっても、魔力切れを起こす危険性が高まります」
「ありがとう。大発見だよ。今度、試してみる」
でもどうやって発現させるんだろう?
ヨウビが気持ちを読んだようで、
「発動は、相手の唇以外の場所に、お父上の唇で触れることです。相手の唇と触れると、その相手方のスキルを真似できるようになりましたが、それ以外の部分に触れると、父上がイメージしたスキルを一時的に授けることができます」
なるほど、額とか首筋、手あたりがいいのかな。
「髪でもいいのか?」
「いいえ、皮膚の部分でないといけません。でも、粘膜の部分は、敏感すぎて暴走してしまいます」
粘膜の部分って……変な想像をしてしまう。
「お父様、如何わしい想像は辞めてくださいね」
「ごめん、ごめん。ついね」
礼をいって、稲荷大社を後にした。
皆にヨウビに教えられたことを話す。
いたく感心していた。たぶん、私のことよりできた娘のことだろう。
私からスキルが貰えるということは、バリエーションがそれだけ増えるということだ。戦況に合わせて使っていかなければいけない。しかも、魔力は無限大ではない。
このスキルはいろいろ試してみなければいけないが、できるだけピンチの時に使用することにしよう。
その後、東大寺、安芸の宮島、出雲大社、大宰府天満宮などを巡って江戸に帰ってきた。
さぁいよいよ、海外に向けて出発だ。
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