12 タイ魔王
「キャ~~~~~」
女子は悲鳴を上げ、逃げ出した。クロだけ変身し、黒豹の姿で戻ってくる。
へ~ 大きさも変えられるんだ。と感心していた。
当然、男子も丸裸である。鉄や綿の成分だけ溶かすのだろう、肌は溶けない。
しかしこの液体攻撃は、物理攻撃と精神(裸にするという)攻撃を併せ持った強力な技だ。お陰でこちらの戦力は、その他男子3人と私、そして黒豹になったクロだけだ。しかも、その他男子は、刀が錆び付いて使い物にならない。
私の刀は父に作ってもらった良業物で、簡単には錆びない。
私は、刀に「魔断」(魔力を切る力)を刀に発動する。
また、タイ魔王は口から液体を一直線に発射する。それを刀で切りつけると、その液体は弾かれるように両断され別れて蒸発した。
クロがさらに「漆黒!」をタイ魔王にしかける。クロはそのまま、黒豹の姿でタイ魔王に噛み付いた。タイ魔王はもんどり打ち、痛がっている。
そのまま畳み掛けるように、私は刀で切った。
タイ魔王は敗れた。
タイ魔王が倒れたその場には、タイ魔王の魔核と「真っ赤な鯛」が落ちていた。
魔核を袋に入れ、真っ赤な鯛を解体した。このタイ魔王も食べられるか分からなかったが、リュックに入れて温泉宿で調理してもらおう。
今日はこれで帰ろうと、後ろを向くと、梅村先生や女子が岩陰に隠れて、「こっち来ないで!」とか言っている。
こっちも○○丸出しで、刀の鞘で隠しているくらいだ。
クロは「何今更ぁ~」って感じで平然としている。
結局のところ、女子は今来た道を戻り、男子とクロは奥の道を進むことになった。
梅村先生の話だと、ここが最終地点で、奥の道は入口に向かうそうだ。
帰り道にも魔物 スライムが現れたが、サクサク倒し無事宿まで帰ることができた。
今日は大漁だ。……漁には行ってないけどね。
月夜も綺麗だし、今日は浜辺でキャンプを行うことになった。
温泉宿のおかみさんにタイ魔王を見せたら、「珍しいもん採ってきたね~」といわれ、調理方法を教えてくれた。
なんでも鍋にするのが一番簡単だとのことで、大きな鍋を借りて、浜辺で作ることになった。
カニグラタンの足は、炭で焼く。いい匂いを漂わせていると、マーメイドが仲間を連れてやってきた。
食べたそうな顔をしていたので
「この前はどうもありがとうございます。どうぞ一緒に食べませんか?」
マーメイドに声をかけ誘ったら、すごく喜んでいる。
「あっタイ魔王、退治してくれたんですね。ありがとうございます」
大魔王って、タイ魔王だったのか。――良かった、退治できて。
「私の仲間もいいですか?」
「もちろんです。どうぞ。」食材は食べきれないほど持ってきたので問題ない。
「そういえば、名前言ってませんでしたね。私はサリー、この二人は私の姉妹で、
マリーとメリーです」
「サリーは特殊な能力があって、人魚なのに飛ぶことができるんですよ」
マリーがお姉さん自慢をする。……空飛ぶ人魚ってすごいな。
飛魚のように飛ぶんだろうか?
「どうやって飛ぶんですか?」と聞いてみたところ実演してくれるらしい。
サリーは変身して人のようになり、箒を呼び寄せ、魔女のように股がって飛んでみせた。
「オォー」っと歓声が上がる。まるで箒に乗った魔法使いのようだ。
サリーはさらに魔法陣を描き、夜空に花火を打ち上げる。
拍手が舞い上がる。
「たまや~~」
そんなショーを見ていると、料理が出来たらしい。みんなで頬張って食べる。
カニ(グラタン)の足を食べるときはみな無口だ。
タイ(魔王)の味噌じたての鍋も美味しい。妹やマーメイドも夢中で食べている。
そして、締めは女将さんが作ってきてくれたタイ(魔王)釜飯だ。余った身をほぐして入れ、お頭を出しに使うのだそうだ。塩味で昆布が効いていてこれもすごくうまい。
料理を満喫した後は、キャンプファイヤーだ。大きな薪を組んだあと、松明で火を点ける。しだいに大きくなり、炎は天にも登る勢いだ。
皆で歌を歌ったり、火の回りを踊る。
キャンプファイヤーは単なる遊びではない。古くから「親睦」の儀式として使われている。火を中心に歌や踊りを披露することで、火の精霊が集まってきて友好関係を築き、温めてくれる。
火が燃え尽きるまで続けられる。火が燃え尽きたら、火の精霊に感謝し、後片付けを行い、浜辺をきれいにする。
それで、終了となる。
――★☪★――
マーメイドたちとも手を振ってお別れし、予め作っておいたテントに入って就寝だ。お風呂に入ってきたい人は、温泉宿に行って浴びてくる。
もちろん、男女別別だが、簡単に寝るわけがない。
女子はおしゃべり、男子はかるたや西洋のトランプをして遊んでいる。
妹がやってきて、一緒に寝たいという。ほかの男子に聞いたら、「いいんじゃない」と即答された。
期待していたわけじゃないが、女子が妹につられて乱入してきた。
みんな浴衣姿なので、なんか艶かしい。……胸はないんだけどね。
でも、太ももの間から見てはいけないものが、チラチラ見えてしまう。
妹が用をたしたいらしく、手を引っ張って外に連れていく。
「ちょっと、宿のトイレ行ってくる。」と伝え、私と妹は手をつないで、外に出た。
「私もトイレ~」と言って、美夜が一緒にやってくる。気が付くとクロも隣にいた。妹と手を繋いでいるが、2人に挟まれた格好だ。
浴衣の襟の間につい目がいってしまう。
「何見てるのぉ~」と美夜がつっこむ。お酒も飲んでいないのに顔が赤い。
「ショウくんのスキルって何種類あるの? これまで見た感じ、2種類はあるわよね?」
美夜が私の目を見ながら聞いてきた。
「う~ん。もしかしたら4種類くらいあるかもしれない」
”ブゥーー” 美夜が飲んでいた烏龍茶を吹き出す。
「嘘でしょ~。普通2種類あれば、十分よ。4種類って聞いたことがないわ」
「まぁショウなら、できるかもね~。ショウは私のだからあげないにゃん」
いつからクロのものになった? 昨日のキスからか?
「実は、ショウには小さい時から目をつけていたんだ。いずれ私のものにする」
「ダメにゃん。ショウは私の「ここ」と、ショウの「ここ」が触れ合った仲にゃん」
「それは人工呼吸でか。そんなの事故ではないか」
「ちがうにゃん。それ以外にも触れ合ったにゃん」
「えー 本当かショウ?」
「うん。……まぁね」
美夜は少し考えた後、
「うーん。ちょっと顔を借りるぞ」と美夜は両手で私の顔を押さえ、キスしてきた。
龍人族って大胆だ。また、頭の中で紅蓮色の炎が燃え上がる。
「これで、私のものだ」と美夜は勝ち誇ったように言う。
「うーん。油断したにゃん。ま、独占するつもりないし、2人の物ってことでいいかにゃん?」
「相分かった」
勝手に話が進んでいるような気がする。――俺の気持ちはいいのか?
まぁ2人がそれでいいのなら、いいのだが……
「だめ~~~」
それを間近で見ていた妹が制止する。まぁそりゃそうだよね。
「お兄ちゃんは私だけのもんだもん!」
2人は反論せず、あさっての方向を見ていた。
キャンプファイヤーの火の精霊は親睦を深めてくれたようだ。
後で分かったことだが、人族以外の獣族には発情期というものがあるそうだ。
そのような季節は特に大胆になるようで、若い獣族は、変身できるスキルを得られることもあり、好きな相手を見かけると所かまわず口づけしてくるらしい。
ただ、女性から求められれば男性は大概断らないが、男性から求められれば、好きな相手であればかまわなくとも、好きでもない場合は半殺しに合うらしいので、注意が必要だ。
なお、変身スキルはもともと遺伝子の中に組み込まれているもので、通常のスキルとは異なる。
――ということは、美夜も龍に変身できるってことか?




