11 ダンジョン
(1) 洞窟の探索①
今日は、洞窟の探索だ。違う入口から入る。メンバーは前と同じ。
だが構成は、前衛は蓮月と瑠璃、中衛は美夜、後衛は私とクロでこの前と逆である。
寺子屋の稽古場ではスキルを使った練習は、昇段試験以外ではできない。魔窟では遠慮なく使っていいということであった。
前回は、美夜が「あまりスキルを使用しないで様子を見たい」ということだったので、皆使用しなかった。
そこまでスライムが強くなかったということもある。
今回は、スキルを使わないと我々のレベルでは倒せない相手も出てくる可能性があるという。遠慮なく使ってみようと思う。
バタバタッ
洞窟に入ってまもなく前回と同じく、蝙蝠が出てきた。みな落ち着いている。
10分くらい歩くと、蓮月が最初に気づく。何かが歩く音がすると……
魔物と遭遇した。魔物カニグラタンだ。なんとも美味しそうな名前だ。
カニグラタンの大きさは、体長が約1m、大きなハサミを2つ持っており、背中にグラタン用の鍋をかかえている。
ダダッ……
鋏を前にして、前進してきた!
痛ッ! 不意打ちに、後ろに転んでしまった。
横に歩くものだと思っていたから、少し油断してしまった。
前衛にいた瑠璃と蓮月がサッと刀を抜き応戦する。しかしカニグラタンの甲羅は固く、並みの刀では切ることができなかった。
クロがスキルを発動する。
「 漆黒! 」
カニグラタンは黒い闇に覆われ、視界がなくなったようで右往左往している。
私もスキル梅村先生の「反射」を刀に発動する。紅の炎が刀を包む。
瑠璃は、スキルは開眼したようだが、まだ使い方が分からないようだ。
私も刀で斬りかかる。……が切れない。カニグラタンはジタバタしているが、こちらも決め手に欠ける。
「刀は、振り落とすだけでなく、突くということもできるんだぜ。その方が一点に力が集中するのさ」
美夜が突きの構えをとりながら教えてくれる。
確かに。そのとおりカニグラタンを突いてみた。
カニグラタンの甲羅が壊れていく。みな挙って、カニグラタンを突く。
カニグラタンは、動きを止め倒れた。
皆、美味しいものには目がないようで、我先にと、美夜も混じってカニグラタンの関節に刀をいれ、足やハサミをもぎ取っていく。
私はかばんから密閉できる入れ物を取り出し、カニ味噌もしっかりゲットした。
(密閉できる入れ物……スライムの粘液質を回収しようともってきたものだ)
今日は美味しい食材も手に入れたし、カバンに入りきらないので早々に洞窟を出ることにした。
(2) 洞窟の探索②
昨日の反省も踏まえ、今日は皆、大きめのカバンとリュックを用意してきている。本当は今日は休みの日だが、皆、修行に燃えている。
今日は、我々の他に、他のメンバーの碧衣、紅々李、日葵と男子数名と梅村先生も混じっている。カニグラタンが出たという噂が広まったためだ。みんな目をギラギラさせている。
昨日と同じように、同じ洞窟の入口から奥に進む。しばらく進んでいくと、少し大きな鍾乳石のある広場に出た。
すると、カニグラタンが10匹くらいの集団で襲いかかってきた。みんな目を光らせ、それぞれの得物をとり、我先にと斬りかかる。
梅村先生と美夜は、頭を抱えた。
言い忘れていたが、単にお化けが怖いだけで梅村先生も上級である。
「ダメダメ、連携をとらないと……」
無我夢中で、そんな声は届かない。
カニグラタンは、器用にグラタン鍋を盾がわりに前に構え、鋏を盾の脇から出せるようにしている。そして円陣を組んだ。
カニグラタンの鍋もとい盾や鋏は、とても固く、刀や槍の突きでも跳ね返される。さすがに魔物だ。ただの蟹じゃない。戦い方を知っている。
カニグラタンは泡ぶくの様のものを、吹き飛ばしてきた!
泡ぶくは、地面に落ちると消えた。あまり殺傷力はないようである。
男子たちが斬りかかる。……みごとに頭からすっ転んだ。そのまま意識を失っている。
このままでは、男子はカニグラタンに食べられてしまうかもしれない。男子を食べたカニグラタンなんて、想像するだけで不味そうだ。
蓮月がスキルを発動した。
「月光の矢!」
蓮月が上空に手をかざすと、100本程度の光った矢が現れ、手の指示でその方向に飛んでいく。しかし、カニグラタンの甲羅や盾に阻まれ、致命傷には至らない。
日葵がスキルを発動する。
「稲妻!」
稲妻が円陣を組んでいるカニグラタンの中央に落ちた。カニグラタンと巻き添えを食った男子が痙攣している。
その隙を見逃さず、我々は滑らないように気を付け、槍や薙刀、刀で一斉にカニグラタンを突いた。
円陣は崩れ、カニグラタンは倒れていく。
そこへ、中央にいた指揮を執っていたであろうカニグラタンが、一番弱そうな瑠璃を目がけて、「鋏」を飛ばしてきた。きっと最後の攻撃だったのだろう。
鋏は一直線に瑠璃めがけて飛んでいく。
「おにいちゃん!」 私は傍にいたので
「グッ! 間に合わない」 と思って瑠璃に覆いかぶさる。
カキン!
碧衣があらかじめ飛んでくるのがわかったかのように刀で鋏を受け流す。碧衣がひとつの鋏を防いでくれた。
しかし、カニグラタンの鋏は2つある。
鋏がもう一つ飛んできた。
ズバッ!
美夜が魔物カニグラタンの鋏を刀で一閃した。
危なかった。
魔物は最後の最後に何をしてくるか分からない。いい教訓になった。
――◆◆◆――
早速、カニグラタンの解体だ。失神している男子はそのままにしておき、美味しそうな部分を我先にとかばんやリュックに詰めていく。
私は、美夜が食べやすく一閃してくれた鋏の部分をリュックにつめる。
もちろんカニ味噌も……と思っていたら女子がスプーンでタッパーに詰めていた。
遅かった(泣)――でも「お兄ちゃんの分だよ」って瑠璃がとっててくれた。
さすが、我が妹だ。
一通り、回収が終わったところで、紅々李がヒールをかけて男子を起こす。
皆何事もなかったように口笛を吹いたりして周りを見ているが、男子は呆気にとられ呆然としている。それでも、まだカニグラタンの足の細い部分が残っており、いそいそと回収していた。
私も混じって、甲羅の部分や鍋を持てる分だけ回収していく。蟹の甲羅にはキトンやキサチンを含むので、薬やグラスファイバーを作って丈夫な盾を作ることができるかもしれない。
魔物とはいえ、せっかく頂いた命だ。大事に使おう。
今日はすぐには解散せず、さらに奥に進んだ。奥にはカニグラタンの子供であろうか、小さなカニグラタンがたくさん隠れていた。さっきのカニグラタンは親であったのだろう。
我々は相談した。
「魔物であっても殺めてしまってはいけないものがある」
「無駄な殺生はしない」
「戦う意志のないものとは戦わない」
この結論に達し、その場を後にした。
けっして美味しいものは大きくなってから食べようなんて、卑しい精神からではない。
洞窟を曲がりくねり、横に抜ける道があったので、その方向に行く。
そこには、主であろう椅子に座った『タイ魔王』がいた。
誤字ではない。……大魔王ではなく、タイの顔した魔物、タイ魔王である。
タイ魔王が、何か怒ったように怒鳴っているが、何を言っているのか分からない。
でも顔を真っ赤にしているので、怒っているのだろう。
さっき、カニグラタン倒しすぎちゃったからかな? テーブルにグラタン鍋置いてあるし……
タイ魔王が問答無用に襲いかかってくる。タイ魔王は、フォークのような三本槍の武器を持っている。タイ魔王の腕は、ヒレではなく、我々と同じ腕が生えている。もう片方には、ステーキナイフのような刀を持っていた。
首にはナプキンをかけており、食事中だったようである。
そうだよな、食事邪魔されたら誰だって怒るよな。とはいえ、戦いを望まれたわけだし、戦わねばいけない。
皆、得物を出し構える。すると、タイ魔王は口から液体のようなものを吹き出した。
刀は錆つき、服が溶けていく。
「キャ~~~~」
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