5 幽霊屋敷②
「ねぇねぇ? どうやったの? 」
温泉宿に帰ってからも、梅村先生が聞いてくる。
こんな感じでやったら火が点いたということを説明したが、先生も真似してやってみても炎は点かないようだ。
「これは、ショウくん特有のスキルだね。おめでとうショウくん!」
「ありがとうございます。梅村先生。先生のお陰です」
「今日は疲れたし、さっそく温泉に入ってきます!」
お化け大会は、夕食後から始まるから、帰ってくるともう午後11時を過ぎている。
気合を何度も入れていたから、精神的にも疲れている。
温泉は気持ちがいい。他の男子生徒と雑談をしていると、隣の女子風呂からキャッキャッと声がしてきた。
「今日、翔君が地縛霊全部倒しちゃったんだって」
「すごいよね~」
「スキルも目覚めたみたいだよ」
「どんなスキルなんだろう?」
「先生の話だと、浄化できるみたい」
「それで、地縛霊をやっつけちゃったのね」
オレの噂だ……なんか恥ずかしくもあり、誇らしくもある。
でも、スキルってあまり他人に教えちゃいけないんじゃないのか? 先生!
あんまりたいしたスキルじゃないし、いいけど――
この剣神世界では、スキルはあくまで剣術の補助である。剣術を極めれば、魔法は必要としないといわれている。しかしながら、極められる人は極小数なのでスキルはかなり有効な攻撃手段だ。
「いいな、いいなぁ、この野郎!」
男子に頭を小突かれ、お湯をバシャバシャかけられた。こっちもバシャバシャかけてふざけあっていたら、男子たちが詰め寄ってくる。
「オレにも、スキルの出し方教えろよ」
「まぁいいけど」
湯船から出て、露天風呂の周りに落ちてた小枝を拾う。
「頭の中で自分のスキルをイメージして」
刀に見立てた小枝に唇をふれさせた。発火する。
「こんな感じさ」
男子も真似してやってみるが、何も起きない。……まぁ小枝だからな。
温泉から上って、脱衣場で腰に手を当て、牛乳を飲む。
「うん。美味い!」強くなるにはカルシウムを摂らなければいけない。
次に、今日は疲労感があるから、ポーションを飲む。
「うん。不味い!」――良薬口に苦し、私のお手製だ。
少し体力が戻ってきたような気がする。
部屋に戻ると、男子が木刀をもって刀に口をつけている。
「やっぱり、何も起きないや。」
諦めたようだ。もともとスキル持ってる人もいるし、そんなに簡単に複数発現しないでしょ。
翌日の夕食後、地縛霊は退治したし、今日もお化け大会ってあるんだろうか? と考えていたら、梅村先生が、
「今日もお化け大会しますよ~」と、いつになく張り切っている。たぶん、地縛霊がいなくなって、怖くなくなったんだろう。
今日は蓮月とペアだ。
幽霊屋敷までの道中何事もなく、蓮月と雑談しながら散歩する。
「今日はお化けが出てこなくて安心だね」
「蓮月ちゃんを守れないのが残念だな」
私は木刀を振りながら、自慢げに話した。
「そうだね。先生みたいに守って欲しかったなぁ」……えっ! 脈アリ?
「もし、お化けが出たら守ってあげるからね」
なんて会話を楽しんでいると、前の方から
「キャ~~~」 っと聞き覚えのある声が響いた。
幽霊屋敷に着いたら、なんと地縛霊が列を作って並んでいた。一番後ろに並んでいた地縛霊に恐る恐る聞いてみる。
「何で並んでいるんですか?」
地縛霊が答えた。
「この屋敷に入ると、浄化できるって噂で聞いてな。オラももうそろそろ生まれ変わりたいと思ってるだ。でもこの屋敷って、煩悩の数しか入れないんだよな。しかも主人が変わったらしくて、その主人を待ってるだ」
――あのドワーフ!――いいように責任転嫁されたようだ。
でも、ここの幽霊屋敷って、寺子屋の修行場だし、地縛霊もいないと困るよなぁ。――梅村先生に相談してみないと
梅村先生は、腰を抜かしていたが、相談すると
「せっかくいなくなったと思ったのに~ でもしょうがないわね。翔くんが今のところここの屋敷の主人みたいだから、翔くんが好きな地縛霊選べばいいんじゃないかな」
好きな地縛霊なんていないぞ……とツッコミをいれつつ、
何か分からんけど、地縛霊の面接を行うことにした。梅村先生も付き添いなので、渋々面接官を承諾した。
「エー地縛霊の皆さん。……私はぁ、この屋敷の主人だったドワーフの後任です。これから面接を行い、この屋敷に住める地縛霊を選んでいきたいと思います。 選ばれた地縛霊の方は、1年間この屋敷に住んでいただき、見事この屋敷に来た人を驚かした方には、1年後に成仏させてあげたいと思います」
地縛霊たちがざわつく。
「嘘だろ~お前みたいなボウズに出来るわけないだろ~」
まったく、世話が焼けるなと思いつつ、
「一人だけ成仏させてみせましょう」
私は木刀を抜いて、さっきの一番後ろにいた地縛霊を呼びよせた。
……浄化をイメージし、木刀に口づける。
……紫紺の炎が燃え上がり、その地縛霊を切った。
……地縛霊はスーッと消える。
「ありがとうごぜーますだ」……地縛霊の最後の声がする。
地縛霊はもちろんのこと、半信半疑だった生徒たちも驚嘆していた。
拍手が舞い上がり(地縛霊は拍手をしても、手が素通りして音は出ないが)、
「オレもオレも」と地縛霊が寄ってくる。
それを制し、面接内容を話す。
「面接は、ここにいる人(先生と生徒9人)を脅かしてもらいます。全員をビックリさせた方が合格です。この屋敷に来た順番に始め、合格者が108人になったら終了とします。
落選した方は、宿屋からこの屋敷に来る途中で脅かして欲しいと思います。一番評判が良かった方には特別賞として浄化したいと思います。よろしいですね」
(何が評判がいいのか分からないが、適当だ)
これで完璧だ。
先生と生徒は嫌がっていたが、今後のこともあり泣く泣く承諾してくれた。
これも修行の一環である。――なんてね。
屋敷の中に順番に地縛霊が入っていき、先生と生徒を脅かしていく。
悲鳴が轟いたり、笑い声がしたり、シーンとしたり様々だ。
なんとか108名が決まり、決まった地縛霊は自慢気にしている。
逆に落選した地縛霊は、恨めしそうな顔で元いた森に帰るものがいたり、付近の庭や池、柳などに移動していった。……その顔を見せれば合格だっただろうに
「これで、来年も安心だな」――って、毎年来ないといけないのかよ!!
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