4 函館②
そして、頭を抱え、もがき苦しみだした。
たぶん、昔の悪い記憶が蘇ってきたのだろう。
(クロと日葵はどうなるか試してみたかったようである。確かに危険な技はこうやって試すのもいいかもしれない。)
そのまま苦しんだままにしておくのは可哀想なので、スパッと刀で切り捨てると、魔核になって霧散していく。
クロと日葵は銃を持ち上げ「かいかん!」と言っている。
残るはボスの函館マスだけだ。
函館マスは、呆気にとられ見ていたが、このままだと自分が殺られると思い、呪文を唱え始めた。
「生麦生米生卵 生麦生米生卵 生麦生米生卵」
えっ、これって?
すると、小樽マスの目の前に、麦飯ご飯に生卵がかかったドンブリが出てきた。
――へ~もしかして詠唱呪文って早口言葉なのか?
リオのときは外国語で気がつかなかったけど……でも、あのどんぶり飯でどうするんだろう? 面白そうだから少し様子を見るか。
小樽マスは、いきなりどんぶり飯を口にかっ込んだ。
――★★★――
「ハッハッハッ これで、エネルギー補充ができたわ」
……生麦と生米って消化に悪そうな気がするけど――
乙女達は、一気に緊張感が緩み、吹き出した。
「なにそれ~」
そこへ、函館マスが奥義を出してきた。
「函館山ローププレー!」
なぜ函館山がつくのか分からないが、無数の長いロープが現れた。
たぶん、函館の出身だったのだろう。
その無数のロープは我々目掛けて蛇のように襲って来る。
私はぐるぐる巻きにされてなるものかと、咄嗟に「反射!」を使った。
するとその1本のロープは跳ね返り、函館マスをぐるぐる巻きにしている。
周りを見ると、私以外の Lip Magic Generations がロープでぐるぐる巻きにされていた。
――危なかった。
あのドンブリで緊張感が緩んで油断したからな。
あのドンブリ飯は、精神攻撃の類だな。……気を付けないと。
全員がロープで縛られたら身動きがとれないところだった。
いつもの仕返しだと思い、じたばたしている仲間にキスをしてから、ロープで縛られている函館マスに止めを刺した。
函館マスは大きな黒真珠のように光った魔核となり、霧散した。
ロープはドロップアイテムだったようで残っている。
ハクビだけロープを切り、少しジッとクニクニしている仲間を見ている。
ロープに縛られている乙女もなんか艶かしい。
――う~ん。少しこのままにしておこうかな。
「お父様、趣味悪いですよ」
とハクビに諭され、ロープを切っていく。
美夜がぼそっと 「ロープに縛られるのも……」
なんて声が聞こえたが、聞こえなかったことにする。
ハクビが移動魔法陣を作り、1階から3階まである魔核やドロップアイテムを運び込む。
瑠璃が魔力を通し、ギルド札幌支店にそれらを移動させた。
調べてみるとこの塔には4階と5階があり、4階は客室、5階は展望室になっていた。
もう日も落ちている。
せっかくなので、その客室を使わせてもらうことにした。
夜食はもう十分に「いくらどん」を摂っているので、必要ない。
もう寝るだけだったが、人神世界の函館の風景を思い出し、函館山に皆で行ってみることにした。
――★★★――
ロープウェイはないので、函館山まで飛んできたが、あたりは暗く、函館の夜景も見えない。
当然だ。
街灯も電飾もないのだから。
美夜が「華燭!」というと函館の街全体が、篝火で照らされる。
何とも幻想的な風景だ。
暫くその風景を堪能したあと、五稜郭まで戻ってきた。
五稜郭まで戻ってきても、周りは篝火で明るく照らされていた。
――まさか、街が燃えてるなんてことはないよな?
……人が住んでるわけじゃないし、気にするまでもないか。
そのまま寝ることにした。明日は、襟裳に行こう。




