3 寺子屋
剣神世界にも学校はある。寺子屋だ。
ただこちらの世界の場合、前世からの記憶があるため、それぞれ個人に合わせた学習方法となっている。
無垢で生まれた前世のない子供は段階的に学習していくが、それ以外の子供は最初に記憶試験を受ける。
5歳レベル⇒10歳レベル⇒15歳レベル⇒20歳レベルと受けていく。
私は5歳は満点、10歳は90点。15歳レベルは70点。20歳レベルは50点という成績だった。そのため、15歳レベルから学習することとなった。
20歳レベルは前世で言うところの大学だ。進学しなくても良い。全て5年単位で勉強する。
次に剣術レベルの試験がある。
これも同じように、 初級レベル⇒中級レベル⇒上級レベル⇒剣聖レベル
と受けていくが、こちらは知識よりは種族などの能力差が大きいようだ。
私は剣術については、まったく実力はなかったため初級レベルで落ちてしまった。剣術は、初級レベルから習うことになった。
学習施設の寺子屋での勉強は、朝9時に始まる。
午前中は黒板を前にして、先生から学問を教わる。
午後は、中級の先生から、剣の指南だ。
1年後に先生との試合があり、先生に勝つか引き分けると昇格するらしい。
剣の先生は、中級レベルの生徒が1ヶ月ごとに交代する。つまり、中級に上がった生徒が夏休みまで交代に1ヶ月教え、中級レベルの生徒は上級レベルの指南を同じように受ける仕組みとなっている。
上級レベルまで上がると剣聖から指導を受けることとなるが、剣聖は数が少なく、生徒の希望で首都の剣聖学院に入学する。
大体の子供は、20歳になるまでに上級レベルに昇格するため、この日本だけかもしれないがこの世界の大人は男女問わずかなり強い。
午後の指南は、1時から4時までだ。時間になると帰宅する。
毎日授業があるわけでなく、月水金と週3日だけである。
ただし、前世の記憶がない無垢の子供は火曜と木曜は終日学問を教わる。
それ以外の子供は、火曜と木曜は遊んでいいわけでなく、家業の手伝いをさせられる。土曜と日曜は休暇だ。何をしてもいい。
――◆□◆――
青葉が輝き太陽がまだ眩しい季節。
9月1日に行われる入学式でクロに会った。まだ小さいがクロだとすぐに分かった。
クロを見かけ、手を振ると猫族の脚力は高く、飛ぶように抱きついてきた。
「会いたかったニャ! ショウ」
「クロ! 今まで見かけなかったけど、どこにいたんだ?」
「うん。伊達藩に生まれたんだけど、先月江戸に引っ越してきたにゃ。」
「うちは泥棒稼業でさ。あまり目星いものがなくなったから、都会の江戸に来たにゃん」
泥棒は、この世界では立派な家業である。戦争になると、忍者のような泥棒稼業はとても有益だからだ。
ただ、何でもかんでも盗んで良いわけではなく、暗黙の3原則がある。
1つに、裕福な家庭から、1年に1つだけ盗むこと。
2つに、盗んだものは盗んで良い。
3つに、綺麗に盗むこと。
綺麗に盗むとは、散らかさない、汚さない、片付けるである。
相手に戦う意志がある場合、殺傷しても良いが、血糊などはきれいに掃除しなければならない。戦う意志がないものを殺傷したり寝込みを襲うことは、この世の規則でも禁じられている。
また戦う場合は、代表戦となり1対1で決闘を行う。
相手が死ぬか降参の意思を示すまで行われる。いかにも剣神世界らしい。
このようなこともあり、裕福な家庭では、玄関に盗んで良い品物を置いてあることが多い。
なお、盗んだ際には、その証となる「■●のクロ参上」のような証文を置いていかなければいけない。
「クロはどこの組になったの?」
「あたいはねぇ、梅組だよ。ショウは?」
「ぼくも梅組だよ。やったぁ」 ――なんかうれしい。
クロのこの世界での名前は、「服部 九鷺」である。
まぁ私の中では、クロはクロなのでクロとする。
「そちらはお父さんとお母さん?」 クロが私の父母を見かけ、挨拶する。
「うん。父上と母上だよ。うちは鍛冶師なんだ。」
「お手柔らかにお願いするよ。盗むなら大業物以外ならかまわないよ」
父は泥棒家業と知って苦笑いしていた。
「うちの父さんと母さんだよ。父は猫族でけっこう腕はたつんだにゃ。母はアマゾネス系の人族にゃ。だから、わてはハーフにゃ」
クロの父が得物を取り出し、私の父に頭を下げてきた。
「九鷺 がお世話になります。私の剣は正宗さんが作った脇差の良業物と、小剣の大業物で、いつも助けられています」
クロの母が微笑んで話しかけてきた。
「お宅の息子さんとは、前世からの知り合いみたいですね。これも何かの縁でしょう。どうぞよろしくお願いします」
たぶん念波で教えたのだろう。私のことを簡単に紹介したみたいだ。
アマゾネス系か~ミニのボディコンだし、スタイル抜群だな。クロもこんな感じになるのかな。
末恐ろし~
入学式で担任の先生の紹介があった。
私の梅組の担任は、「梅村 紅玉」先生だ。紅玉と書いて、「ルビィ」と読む。たぶん前世は、西洋人だったんだろう。
1時間くらいで入学式は終わり、紅玉先生が、梅組の列に来て
「それでは皆さん、一緒について来てください」
と教室に案内された。12人の5歳の児童が先生の後を付いていく。
木造の引き戸を開けて中に入ると、10歳と15歳の学生が椅子に座って待っていた。
梅組は、前世でいうところの高等科だ。高校レベルの勉強をする。
年齢は5歳から15歳くらいまでだが、分け隔てなく教える。
ただ、身長差があるので、背が低い学生は前の方になり、私やクロも一番前の席になった。机は2人1組で、クロは私の隣の席になった。
「それでは、授業を始めます。授業を始める前に、選択科目を1つ選んでください。選んだら、配った用紙に名前を書いて、選択科目に○をつけて先生まで持ってきてください」
必須科目は、自然科学、医薬学、魔術である。
選択科目は語学(日本語と外国語)、理数学、魔物学があった。
選択科目には、それぞれ簡単にどのような学問か説明が書いてある。
それを見て、私は魔物学を選択し、先生に提出した。
剣術は実戦形式で教えるようで、流派なども実践を通して選択するようだ。
お昼には給食が出た。カレーライスとスープをクロと一緒に食べた。
家のカレーも美味しいが、寺子屋のみんなで食べるカレーもとても美味しい。
クロは猫舌で、熱いものは苦手なようだが、「辛いのは別にゃ」とか言ってフーフー言いながら食べている。
梅組には100人程の生徒がいて、クロを交えて近くの生徒と雑談をした。
話をするのは、やはり年齢が近い生徒が多く、だいたいグループができている。
「お父さん何してるの?」とか「前世は何?」とか、たわいのない会話である。
クロ以外の名前は、蓮月、美夜、碧衣、紅々李、日葵、以上が女性、他男性5人だ。
――男性はあまり興味はない――
各々の簡単な特徴は(男性は除く)
●蓮月:ピンクの髪で色がとても白い兎族。頭の上にある長い耳がかわいい。眼がルビー色でキラキラしている。少し天然。9月13日生 5歳
●美夜:紅色の長い髪で、白い眩い肌をし、キリっとした目で種族としてかなり珍しい龍族。常に水晶の数珠を腕にしている。1月11日生 5歳
●碧衣:碧い髪で、金色の大きな目の白い肌をした狐族。聡明で堅実。3月3日生 5歳
●紅々李:濡鴉色の髪にサファイアブルーの目をした美形で婉然な人族。10月10日生 5歳
●日葵:銀色の髪で、ブロンドの眼の快活なおしゃべりの犬族。7月7日生 5歳
●クロ(九鷺):黒のソパージュのかかった髪で、黒眼の少しおどけた感じのする猫族。6月6日生 5歳
姿かたちは、人族と同じである。
違いは獣耳であったり、尻尾があるくらいで、耳は髪に隠したり、尻尾も服を着れば隠せるようで、あまり人族と変わりない。
人族との決定的な違いは、それぞれの獣になることができることと寿命だ。
例えば、猫族はネコ科の動物になることができるようで、虎や豹にもなることができる。狐族と狸族は特殊で人間にも変化できる。
ただし、どの種族も一定の条件を満たさないと変化できない。
人族は変化できないが、すべての種族と子供を作ることができる。
(通常は、種族間だけ。ハーフはその種族と人間だけ)
寿命や妊娠期間は、種族によって異なる。
気がついただろうか? ……全て5歳である。
試験で落第をしない限り、5歳間隔で上のレベルに上がっていく。
普通に上がっていけば、このクラスの5歳児は、10歳で20歳レベルになり、
20歳レベルに進学しても15歳で卒業だ。
――◆□◆――
火曜日と木曜日は家業のお手伝いをする。
父は刀剣鍛冶師なので、刀剣作りをするわけだが、いきなり刀剣は作らせてはもらえない。まずは、作業場の掃除や水くみなど雑用を行う。そして作業工程などを盗み見る。
母は、刀剣を作るでもなく、一日中家事を行うでもない。
(家事は家族全員が共同で行うことになっている)
何をするかというと、特殊技能(教師、医師、薬師等)のある女性以外は、産前産後の5年間を除き、狩猟に出かける。
魔物を退治することもあるが、森の中で増えすぎた動物を間引きするのが目的だ。もちろん捕った獲物は、できるだけ食用に回し皮や骨なども無駄なく使う。
そんなこともあり、この世界のだいたいの女性は男性より大概強かったりする。
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