8 お金の問題
「そういや俺、怪我治ってんのか?」
「ええ。右腕の凍結は元通りに戻しましたし、お腹の傷は今晩の間だけ安静にしていただければ問題はありません」
俺を治療してくれたらしい穏やかな青年にそう告げられ、大きく息を吐いた。
「そうか。ならもう動いて大丈夫だよな?」
「ええ、ただし傷の開かないように十分注意を払ってください」
「ああ、ありが…そういや、ここ治療院だし金払わなきゃ…あ」
その瞬間、俺は気付いてしまった。
ポケットの中に入っていたなけなしの金銭が、綺麗に無くなっていることに。
「うおおおお!!俺の全財産があああああ!!」
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやば
「ああ、そのことですが。治療費のお支払いはしなくて結構です」
「え?どうして?」
「それは……」
言えない理由があるのか、口ごもっていたタイミングで、重い足音が近づいて来る。
鋼鉄の鎧に身を包む、衛兵らしき強面の男だった。
「お前が、グレイ・ソルドレイか」
俺を見るなり、そう尋ねてきた。
「ああ、そうだけど」
もしかしなくても、路地裏に現れたアルファルドという男のことで、だろう。
あの後、あいつは結局どうなったのだろうか。
「申し遅れた。俺はセライア街の衛兵長、ガンドだ。お前を襲った人物について、聞きたいことがある。お前が遭遇した男の特徴は、全身に魔法反射効果を持つ衣類を身に着け、影魔法や隠密行動などを得意としている。それで間違いないか?」
現在12ポイントです!!
星5を1つ入れていただいただけでもめちゃくちゃ嬉しいです!!
ありがとうございます!!