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死後の世界ならリベンジしたい‼︎  作者: 蓮草悠紗
第1章『私は何者なのか』
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母の顔と幼馴染

 ――最近、同じ夢をみる。その中で私は男性で、となりには知らない綺麗な女の子がいる。

 その女の子は私に何かして欲しいのか泣きついて胸あたりをポカポカと叩いてくる。何かを叫びながら叩いてくるのだけど、その会話が一切思い出せない。

 私はなにもできないことを謝っていたのか……慰めていたのか、よくわからないけれど、その子の手を握って一緒に泣いていた。

 そんな夢を毎日見るのに、目が覚めるとその子と話していた内容や顔は忘れてしまう。


「また、あの夢……なんなの……」


 泉名愛(いずなあい)それが私の名前。共学ではなく女子校に通う普通の17歳の高校生だ。

 ただ、最近は後味の悪い夢の所為でよく眠れた気がしなくてやや寝不足気味である。


 ふと時計を見ると七時三十分を指している。今日は私の人生において一番のビッグイベントが控えているというのに、予定時間より少しオーバーしてしまっている。


「もうこんな時間! 急がなきゃ!!」


 慌てて飛び起き、バタバタと支度をして二階にある自室を飛び出すとドタドタと音を立てて階段を駆け下りる。その騒音で母がひょっこりとリビングから顔を出した。


「こら! そんなに慌てると階段から落ちるわよ!」


「急いでるんだもん!」


 母に注意されたものの、そのまま洗面台へ走り髪を梳かした後、朝ごはんに母が食べようと用意していたトーストを片手に「いってきます!」と家を飛びだす。


 しかしふと家の門に手をかけたところで、再び家の中に入った私は、「一枚トーストもらったからねー!」と母に一声かけた。

「ふふ、報告しにわざわざ戻って来たの? また焼くからいいのに〜」と再びリビングからひょっこり顔を出した母は「気をつけていってらっしゃい!」と笑った。その母の笑顔を見て少しホッとした。


 ――普段はこんなことしない。トーストを無断でもらったことをわざわざ報告したりしない。

 もうこの時からなにかが可笑しかったのかもしれない。なぜかこの時、私は母の顔をもう見れない気がしたのだ。


 私の母は専業主婦だが少し体が弱く、普段は体に無理のない程度で家のことをやってくれている。

 最近は、仲のいい主婦友達と手芸をしているそうでいつかブースを作って販売するのだと、毎日楽しいそうにしている。

 それに対し、父は海外出張が多く家に帰ってくることはあまりない。どんな人だったかももう覚えてない。ただ夫婦仲はいいようで母はいつも私に父の話をする。


 『忘れてない? パパはね、私たちのところにあなたが来てくれた時、すごく喜んでたのよ?』


 嬉々として話す母を疑おうと思ったことはないが、こうも放って置かれると父に対しての情は稀薄(きはく)になっていく。


 今更ながら、私が今日急いでいた理由は新学期開始日だからだ、新学期というと始業式があって少し早めに登校しなければならない。ただ理由は別にもう一つある。 

 新学期の始まり、この日は毎回学級委員でいつも登校日が不定期な彼女――一宮希乃(いちみやきの)とさりげなく一緒に登校できる(かもしれない)日なのだ。

 なぜ毎回不定期かと言うと、彼女は容姿端麗、頭脳明晰、非の打ち所がない所謂完璧人間という感じで、仕事がある時は少し早めに、何もない時は少し遅めに登校するのだが、彼女の中のスケジュールであり、周りがどんなに合わせようと思っても()()でしか一緒に登校することができないのである。

 そしてさらになぜ彼女と一緒に登校したいかと言うと、これがもう一つの理由。私は彼女に恋愛的な意味で好意を寄せているのだが、誰もいないこの時間に桜が散るこの瞬間に気持ちを告白したいのだ。


 一宮希乃は世界一可愛い少女といっても過言ではない。

 放課後になるとほぼ毎日、学校まで色々な事務所のスカウトマンが来ていたが、希乃本人は頑なに芸能活動やスカウトを断り、どこも玉砕。

 容姿に優れているからといってそれを奢ることはなく、誰にでも優しく、気が効く子で性格まで完璧なまさに神に愛された少女と言える人物だ。


 ――彼女は本当に私の・・・……


「やば、少し遅れちゃった。どうしよう……今日こそ告白するって……気持ちだけでも伝えようって思ってたのに……」


「おはよう愛ちゃん! 私になにを告白するの?」


 腕時計をちらりと見ていた私の後ろからひょこっと現れたのは左右に小さなお団子を作った可憐な少女だった。桜色のお団子から少し出ている髪を揺らし微笑みかける彼女こそ、世界一の美少女・一宮希乃である。


 ・・・……自慢の幼馴染。


「あ……別に……盗み聞きなんてタチ悪いじゃない……希乃」


 ここで私の悪い癖。好きな人に素直な対応ができないこと。希乃とは幼馴染なのに今まで一度もキチンと話したことはない。希乃から話しかけてくれるから続いた関係性といってもおかしくはない。

 むしろ、こんなにツンケンとした態度の私でも気にせず話しかけてくれる天使のような包容力を持つところが彼女の魅力の一つなのだ。


「まだ、登校までに早いよね? 愛ちゃんがこんな早く学校向かうなんて、初めて見たかも」


「えっと……」


 希乃の綺麗な桜色の髪が春風に揺らぐ。その姿が綺麗で思わず息を飲んだ。

 言うタイミングは今しかない! そう心に決めてやっと発した一声は……


「希乃……あのさ……!」


「でも……丁度良かったかもしれない」


 希乃の短い言葉に掻き消された。 含みを持たせたような希乃の言い方と少し焦ったような表情を見て私は自分の告白(こと)よりも先に希乃の話を聞かなければならないと感じ取った。



「私も聞いてほしいことがあったんだ。今日を、この日を、この時を私は貴方をずっと待ってたの……愛ちゃん……」

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