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馴染みの剣鬼  作者: スタミナ0
五話「夕発ちの雷」前問
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 馬車での一連の会話。

 街に至るまでの経緯はつつが無く進む。

 その全てが『前回』と同一。

 タガネと荷馬車の男の同情、鉱物や地図を渡される会話の流れ。

 意識しなければ気付けない。

 まるで世界が繰り返している。

 そも正夢(まさゆめ)の可能性も考えられた。

 ただ。

 鮮烈だった『前回』の記憶が、すでに薄れつつある。

 この感覚は、夢の中で感じた既視感に似ている。もしかすると、夢を何度も追体験しているのだろうか。

 そのまま。

 タガネと別れ、港町に入った。

 再び見る商店街の町並み。

 新鮮味が無く、なのに色褪せて見えない風景が不安をあおる。歩む足先に力が入らず、夢遊病のように覚束ない足取りで進む。

 そして。

「あ……セリュック」

 好物が並んだ店に目が留まる。

 フィリアはそちらへ足を運ぶ。

 屈み込んで、一つを手に取った。それを店主がさとく見取って近づき、手をすり合わせながら勧めてくる。

 その勢いに圧されて。

 フィリアは苦笑混じりに勘定を済ます。

 そして、それを齧ろうとして。

「おい、そこの小娘」

「あ、はい」

 呼ばれて振り返った。

 聞いた覚えがあるので、反射的に答える。

 そして、声の主は夢の中から命を得て現れたかのように、けたけたと肩を揺らして笑っている白いコートの人だった。

 懐かしさと恐怖が()い混ぜになる。

 フィリアは笑顔を取り繕う。

「どうかしましたか?」

「あんた、ここに来るのは初めてか?」

「……いいえ、何度か」

 フィリアの言葉に。

 相手の動きが一瞬だけ止まった。

 しばし間を置いて、再び戯けた笑声混じりに懐から銀の首飾りを取り出す。

「西方島嶼連合の果実だな」

「好きなので」

「今日は祭りだって知ってるかい?」

「……ええ」

 白コートが東を指差す。

 フィリアは悪寒を感じて、それを悟られないように荷物を背負い直す()()でごまかした。

「実はな、あっちで食事会が開かれる」

「……そうなんですか」

「そこには島嶼連合の料理も出る」

「へえ」

「この首飾りは参加権の証明だ」

 フィリアは小首をかしげた。

「どうして、私に?」

「……初めて来た感じがしたんでな。そういう人間を見つけては、より色んな文化に触れて貰おうって趣旨があるからな」

「初めて、という感じに見えましたか」

「ああ」

 フィリアは首飾りを受け取る。

 白コートは満足げに頷いて、隣を過ぎて去っていく。

「東の高台、夕刻に開始だ」

「ありがとうございます」

 白コートの後ろ姿に振り返らず。

 手元の首飾りを見ながら返事をした。

 フィリアは飾られた琥珀の部分を矯めつ眇めつし、それをカバンの中にしまってから、街の南部に向けて歩む。

 記憶している道順に従う。

 もう地図は必要ない。

 一度も確認せずに道を巡る。

 やがて。

 壁にツタの這う廃れた教会に辿り着いた。

 その立ち居姿を見て。

「……ミストさん」

 ここで出会った魔法使いの少女の名を囁く。

 巻き込んでしまった。

 夢の最後にどうなったかは知らない。

 ただ。

 あの閃いた雷を背にした大きな黒い影。あの直後、影によって捕食されたのか、八つ裂きにされたのか。

 あそこで途切れた意識。

 それが死だけを想定させる。

 フィリアは崩れかけの扉を押して入る。

 ヘルベナ像だけが健在な内装。

 崩壊した壁面。

 間違い無い。

「繰り返し……」

 フィリアは不安に眉をひそめる。





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