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馴染みの剣鬼  作者: スタミナ0
五話『義憤の花』冬
830/1102

──After『シュリー』⑤



 シュリーは赤子を抱いていた。

 名は――アストレア。

 名付けの由来は、帝国の土地に古くから伝わるルイペイ古代語の書物、そのの中にあった星月夜の女神アストライアから得た物である。

 名付けは、カルノヤだった。

 本人に自覚は無い。

 古い文献も渉猟しているカルノヤに、もし妹が生まれるならばと問うたとき、その名を口にして皇后が気に入った末の命名である。

 そして。

 今宵から赤子は皇后と離れて暮らす。

 その決定が帝王から下された。

「よろしく頼むわ、セヌ」

『しかと承った』

 護衛に任されたのは帝国最高戦力。

 その一角を担う魔皇のセヌだった。

 旧くからの知人とあって、他の者よりも口が堅く、信の置ける者だと皇后が確信しての人選だ。

 そして。

「頼むわ、シュリー」

「…………メイ」

「やっと様を付けずに呼んでくれたわね。でも、今言うのは卑怯よ」

「…………」

「お願い、シュリー。――私の親友」

 親友。

 その言葉を使うのも、また卑怯だ。

 シュリーはそんな言葉を飲んで頷いた。

 子供は、生まれながら帝国に破滅をもたらし、世界に大打撃を与える存在だと予言を受けた。生まれながら忌まれた子、親を知らず辺境で暮らさなくてはならない。

 まるで――孤独だ。

 かつての自分のようだった。

 シュリーは思わず同情の念を抱いた。

 まるで、いつかの自分である。

 小さな違いこそあれど、今の彼女は親の愛情を知らない。

 それが、いかに苦しい人生だったか。

 シュリーはよく知っている。

 せめて。

 恩人の子だけにでもその苦労はさせたくない。

「この子は、必ず幸せに」

 恩人としての命令だけではない。

 この子――アストレアにも心血を注ぎ、愛を知って穏やかな生を送ってほしいと、シュリーは胸に誓った。





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