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馴染みの剣鬼  作者: スタミナ0
三話『夜遠し』芽
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 その国は常に日の光を浴びる。

 影は無く、常に世界の中心と自負する。

 だから。

 暗闇や夜に由来する名を授けることだけは禁じられていた。それこそが国の沽券にも関わり、冒涜(ぼうとく)にも繋がる。

 ただし。

 稀に禁忌の名を有する者はいた。

 それは転じて国の災厄(さいやく)である。


 とある一家にて。

 広大な敷地の中に設けられた庭園で遊ぶ一人の子供がいた。生まれながら類を見ない美を持ち、その身が太陽であるがごとく目にした者を不思議と高揚(こうよう)させる。

 その少女は一族の愛すらも一身に()けた。

 誰にも妬まれず。

 誰にも(そし)られず。

 誰かに傷つけられもしなかった。

 なので。

 その少女は徒に他者を罰した。

 何をすれば、己は誰かに害されるか。その追究の果てに、彼女は一人の人間の首を()ねる。無罪の民を選んで、家族に罰するよう願った。

 すると。

 家族は、これを快諾(かいだく)した。

 間もなくして、罪人として処刑された。

 私怨(しえん)も無く、そもそも顔見知りですらない。

 冤罪なのは明白である。

 それでも家族は処刑を実行した。

「どうだ、殺したぞ」

「あなたの為よ、喜んで」

「さあ、あの笑顔を見せておくれ」

 口々に反応を求める。

 少女に喜ばれたいが(ため)だった。

 そして。

「この命、貴女様に捧げます」

 処刑された無辜(むこ)の民。

 彼さえも死に際に少女の喜びを願った。

 快く首を差し出し、物言わぬ肉塊(にくかい)となって転がる。

 ようやく。

 少女は周囲の異常を察した。

 日の下に照らされる国。

 何処よりも明るい故に、本来影にある人の醜悪さすら発露(はつろ)する。

 初めて。

「わたし、ここが嫌い」

 少女は憎しみに顔を歪めた。


 そのときから、日は沈み始めた。





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